不動産の売買契約で取引が解除となる場合の例|クーリングオフ・手付解除から契約不適合責任まで宅建士が解説

不動産契約解除 不動産

重要事項説明を受け、契約内容についてお互いが納得した後は契約になります。

不動産の取引が成立した場合は、基本的に解除できる例は限られていますので、契約書への署名捺印は必ず内容を確認することが大切です。

不動産の売買契約が締結された後は、お互いに生じた義務を実行に移すこととなり、簡単には契約を解除することはできなくなります。しかし、状況によっては契約を解除できるケースもあります。

この記事では、代表的な解除方法とその注意点を紹介します。

 

この記事から分かること

  • 不動産売買契約は、締結後は原則として簡単に解除できないこと
  • クーリングオフで契約解除できる条件と、適用されないケース
  • 手付金の放棄・倍返しによる解除の仕組み
  • 危険負担・契約違反・契約不適合責任による解除の考え方
  • 住宅ローン特約による白紙解除で注意すべきポイント

 

クーリングオフによる契約解除

クーリングオフとは、告知を受けてから8日以内であれば、消費者側からの一方的な意思表示のみで契約を解除できる制度です(宅地建物取引業法37条の2)。

 

不動産業者が自宅に突然訪問してきたり、契約を急かされたりして、よく考える時間もないまま契約してしまうことを防ぐため、頭を冷やす(クーリングオフ)期間を設け、その期間内であれば契約を解除できることにしています。

 

クーリングオフが適用される主なケース

売主が宅地建物取引業者で、業者の事務所以外の場所(買主の自宅・勤務先への訪問、喫茶店など)で申込みや契約をした場合に適用されます。

 

クーリングオフが適用されないケース

以下のいずれかに当てはまる場合は、クーリングオフによる解除はできません。

  • 不動産会社の事務所で申込み・契約をした場合
  • 買主自身の希望で、買主の自宅や勤務先で契約した場合
  • 告知を受けた日から8日を経過した場合
  • 買主が物件の引渡しを受け、かつ代金の全額を支払った場合

 

クーリングオフによる契約解除をした場合、仲介会社に支払った手数料や、すでに支払った手付金などの金銭は全額返還されます。

 

手付金の放棄による解除

買主は、手付金を放棄することで契約を解除できます。売主側から解除する場合は、受け取った手付金の倍額を買主に支払うことで解除できます(手付解除)。

たとえば手付金が300万円であれば、買主は300万円を放棄し、売主は600万円を支払うことで、それぞれ契約を解除できます。

 

売主が個人の場合、買主は手付解除期日までに手付金を放棄すれば解除できます。

売主が宅地建物取引業者の場合も、相手方が契約の履行に着手するまでは、買主は手付金を放棄して解除できます。

 

なお、売買代金のために住宅ローンの申込みをしたこと自体は、「履行の着手」にはあたらないとされています。

そのため、買主が住宅ローンの申込みをしただけの段階では、売主は手付の倍額を提供することで契約を解除することが可能です。

 

危険負担による解除

危険負担とは、売買契約の締結後に天災や火災などによって建物が滅失・毀損し、引渡しができなくなった場合に、その損害を売主と買主のどちらが負担するかという問題です。

 

2020年の民法改正により、不動産の危険負担の考え方は債権者主義から債務者主義に変わりました。

改正前の民法では、買主は建物が滅失・毀損しても代金を支払う義務がありましたが、改正後は、引渡し前に建物が滅失・毀損して契約の履行が不可能になった場合、買主は代金の支払いを拒むことができ、契約を解除することも可能です。

 

実務上は、売買契約書に「建物が毀損して契約の履行が不可能となったときは、書面により相手方に対して契約を解除できる」旨の特約が記載されるのが一般的です。

 

売主の契約違反による解除

契約が成立した後は、売主と買主の双方に義務が生じます。

この義務を履行しない場合は債務不履行となり、その不履行が重大な場合には、契約違反として契約を解除できます。

ただし、不履行の程度が軽微な場合は、損害賠償を求めることはできても、契約の解除までは認められないことがあります。

 

たとえば売主が催告に応じても建物を引き渡さない場合、買主は契約を解除して違約金を請求できます。

契約書には、一般的に売買代金の一定割合(たとえば20%程度)を違約金の予定額とする記載があり、その場合、実際の損害額にかかわらず契約書に記載された金額が違約金となります。

 

契約不適合責任による解除(旧瑕疵担保責任)

2020年の民法改正により、それまでの瑕疵担保責任は契約不適合責任に変わりました。

契約した物件が、契約内容に適合しない状態(重大な欠陥があるなど)である場合、買主は売主に対して次のような請求ができます。

  • 修補などの追完請求
  • 代金減額請求
  • 損害賠償請求
  • 契約の解除

 

このうち契約の解除については、契約した不動産が住宅を建てられない土地であったり、違反建築物で建て替えが必要であったりするなど、契約の目的を達成できない重大な不適合がある場合に限って認められます。

修理により是正が可能な場合は、契約の解除までは認められないことがありますが、追完請求や損害賠償請求は可能です。

 

ローン特約による解除

買主が売買代金の支払いに住宅ローンを利用する場合、契約締結後速やかに融資の申込み手続きを行うことが求められます。

 

一般的な売買契約書には、「融資承認期日までに融資の全部または一部について承認が得られないときは、契約解除期日までであれば契約を解除できる」というローン特約が付いています。

ローン特約による解除は、いわゆる白紙解除(違約金なしの解除)ですが、解除期日を過ぎるとこの特約による解除はできなくなる点に注意が必要です。

また、買主が故意に融資の承認を得られないようにしていた場合も、ローン特約による解除はできません。

 

なお、住宅ローンの手続きは不動産会社が買主に代わって行うことが一般的ですが、本来は買主自身が契約後速やかに手続きを行うことが求められています。

不動産会社によっては、ローンあっせんに関する手数料を別途請求する場合もあるため、契約前に手数料の有無や金額を確認しておくと安心です。

中には50万円以上のローン紹介料を請求する業者もいるようです。

 

合意による解除

売主と買主の話し合いによって契約を解除することです。

どのような条件で解除するかは、当事者間で決めまることになります。

 

解除の原因が仲介会社になければ、仲介手数料が発生するのが普通です。

 

契約解除方法の比較

解除方法 主な条件 注意点
クーリングオフ 事務所等以外での契約、告知から8日以内 引渡し・全額支払い済みの場合は不可
手付解除 相手方が履行に着手する前 買主は手付放棄、売主は倍額支払い
危険負担 引渡し前の滅失・毀損(天災など) 特約の記載内容を要確認
契約違反による解除 重大な債務不履行 軽微な不履行では解除不可のことも
契約不適合責任 契約内容に適合しない重大な不適合 修補可能な場合は解除不可のことも
ローン特約 融資承認期日までに承認不可 解除期日を過ぎると解除不可
合意解除 当事者間の合意 仲介手数料は発生することが多い

 

そのほか、契約自体が取り消しになるケース

以上の「解除」とは別に、契約自体が最初から無効・取消しの対象となるケースもあります。

錯誤、詐欺、強迫、制限行為能力者による契約などが該当します。

これらに該当する疑いがある場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

 

まとめ

不動産の売買契約は、締結後は簡単に解除できないことが原則です。

しかし、クーリングオフ、手付解除、危険負担、契約違反、契約不適合責任、ローン特約、合意解除など、状況に応じた解除方法が用意されています。

それぞれ条件や期限が異なるため、契約前に内容をよく確認し、不明な点があれば宅地建物取引士など専門家に相談することが大切です。

 

 

免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の契約内容について法的な助言を行うものではありません。本記事の内容は2026年時点の法令に基づいています。

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