不動産関連

不動産賃貸借の個人の連帯保証人には上限の定めが必要

投稿日:2022年3月8日 更新日:

不動産の賃貸借契約では、賃借人(借りる人)の債務を連帯して保証するという保証契約が結ばれます。

この保証契約は根保証契約といわれる契約で、契約によって賃借人の債務を保証人は保証しなければならなくなります。

この根保証契約のうち、保証人が会社等でないものを個人根保証契約といいます。

個人の根保証契約が保護へ

部屋の賃貸借の保証の契約は根保証契約になります。

賃貸人と賃借人が結ぶ借家の賃貸借契約から発生する賃借人の一切の債務について、保証人が責任を負うのが根保証契約です。

通常の保証契約では、保証人が保証する債務は特定されていますが、根保証契約は将来発生する金額が決まってません。

 

兄弟姉妹や甥が部屋を借りる際に保証人になる、といったことはよくある話ですが、こういった場合では保証人になるのに見返りを求めません(対価がない)。

また、保証人も保証額といっても「家賃の数か月程度だろう」と過小に評価している人が多いこともトラブルの一因でした。

もし、禁煙のアパートで弟が寝タバコにより失火してしまい、アパートが全焼してしまったとしたら、何千万、何億という保証をしなければならなくなります。

他にも父親の保証人になった場合に、父親が家賃を滞納して数か月後に管理会社の連絡で訪れたら、孤独死しており、滞納家賃や原状回復費用で数百万円の保証をしなくなったなんてこともあるかもしれません。

こういったトラブルが多かったことから、個人の根保証契約について2020年に改正がされました。

 

個人根保証契約では極度額の定めが必要

極度額というのは、保証する上限額をいいます。

上の例に挙げたように、契約の段階では、家賃の滞納があるとは分かりませんし、将来いくらまで滞納するかもわかりません。

極度額の定めがなければ、「滞納しても家賃(10万円)の3か月分程度だろう」と思っていたら、裁判や原状回復で20ヶ月かかって200万円以上請求されるなんてこともありえます。

 

このように賃借人の保証人になっても主債務の金額が未定だと、いつ多額の債務を負わされるか分かりません。

民法改正前は、個人の保証人が保証する範囲の上限がありませんでしたが、改正後は保証の上限(極度額)を定めていない個人根保証契約は契約が無効になります。

また、「家賃24か月分」といった記載では金額が確定していない(増減がありえる)のでだめ(無効になる)で、10万円の10か月なら100万円、24か月なら240万円と具体的に書く必要があります。

100万円でも240万円でも上限額を定めておけば、それを超える債務が発生しても、個人根保証人の保証の範囲は上限額までになります。

 

国土交通省の極度額による参考資料によれば、10万円の家賃(8~12万)の場合の損額は30万円未満が43.3%、70万円未満が74.6%、中央値は36.6万円、平均値は50.5万円、最高額は418.6万円となってます。

弁護士の先生いわく、家賃が発生してから訴訟し、強制執行による退去を考えると2年以上が理想だが、実際にはそれ未満になるだろう、状況によって考えていくしかないとのこと。

 

 

それと極度額の定めは書面または電磁的記録でしなければなりません。

 

個人根保証契約は極度額の定めがないと無効ですが、法人については今まで通り極度額を定めなくても契約は有効です。

 

個人根保証契約の元本確定自由

いつまでも保証人が保証しなくていいよう、元本確定についても規定されています。

 

個人根保証契約の元本確定自由

1.債権者が保証人の財産について、強制執行または担保権の実行を申し立てたとき

2.保証人が破産手続き開始の決定を受けたとき

3.主たる債務者または保証人が死亡したとき

賃借人が死亡したら、その時点で元本が確定し、その後に債務が発生しても保証しなくてよいことになります。

また、保証人が死亡した時も元本が確定し、その後に発生した賃借人の主債務について保証しなくてよくなります。つまり、保証人の相続人は死亡後の主債務の責任を負わないことになります。

 

保証人への情報提供義務

保証人は、主債務についての支払い状況について情報の提供を求めることができます。

たとえば、兄弟の賃貸借契約の保証人になった場合、兄弟が家賃の支払いを滞納してないか等、賃料の支払い状況を尋ねることができます。

 

民法第465条の10(契約締結時の情報提供義務)

1.主たる債務者は、事業のために負担する債務についての保証を委託するときは、委託を受ける者(法人を除く。)に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。

  1. 財産及び収支の状況
  2. 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
  3. 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容

2.主たる債務者が前項各号に掲げる事項に関して情報を提供せず、又は事実と異なる情報を提供したために委託を受けた者がその事項について誤認をし、それによって保証契約の申込み又はその承諾の意思表示をした場合において、主たる債務者がその事項に関して情報を提供せず又は事実と異なる情報を提供したことを債権者が知り又は知ることができたときは、保証人は、保証契約を取り消すことができる。

3.前二項の規定は、保証をする者が法人である場合には、適用しない。

 

賃借人が家賃を滞納した場合に、滞納家賃については毎月の家賃に上乗せして分割して支払えばよいとし、そのかわり再び家賃を滞納したら一括して家賃を支払い、遅延利息も支払うといった合意をすることがあります。

その後賃借人が再び滞納してしまったときは、期限の利益を喪失した場合における情報の提供義務にあたるので、賃借人は2か月以内に保証人への通知が必要となります。

主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報の提供義務

1.主たる債務者(借主)が期限の利益を有する場合において、主たる債務者がその利益を喪失したときは、債権者(貸主)は、保証人(法人を除く。)に対し、主たる債務者(借主)がその利益を喪失したことを知った時から2箇月以内に、その旨を通知しなければならない。

2.前項の期間内に同項の通知をしなかったときは、債権者(貸主)は、保証人に対し、主たる債務者が期限の利益を喪失した時から同項の通知を現にするまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く。)に係る保証債務の履行を請求することができない。

3.前二項の規定は、保証人が法人である場合には、適用しない。

 

まとめ

・個人根保証契約では、上限額を設けなければならず、書面(または電磁的記録)でする。

・主債務者または保証人が死亡すると元本が確定する。

・保証人は、家賃の支払い状況に関する情報提供を求めることができる。

 

上限額の定めが必要になったことから、たとえ連帯保証人がいても家賃保証会社の利用が必須になったといえます。

更新後の契約については、新たに保証契約を結ぶのでない限り、保証人の保証契約は更新後も及ぶとされています。

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