不動産の取引では、各種様々なお金がかかります。
不動産の契約前に普通は申込をしますが、契約前にもお金が必要となることがあります。
例えば、手付金、預り金、申込金といったものを、申し込みの際に不動産会社から要求されることがあります。
手付金とは
手付金は、契約を締結する際に、当事者間で引き渡し、受け取る金銭のことをいいます。
手付金には、解約手付、証約手付、違約手付の3種類がありますが、不動産取引では当事者で特別な取り決めをしなければ解約手付になります。
賃貸では、部屋を確保するために支払う金銭といった意味で授受されることがあります。
実際は契約前の金銭のやり取りなので、手付金というよりも預り金や申込金といった性質があります。
売買だと契約時に買主から売主に渡す金銭が手付金ですが、この場合には買主が支払った手付金を放棄して契約の解約をすることができます。
売主から契約を解約する場合は、買主が支払った手付金の倍額を渡すことでできます。つまり買主から受け取った手付金を返したうえで、それと同額の金銭を引き渡すということです。
売買の手付金は金額が決まっているわけではないため、売主がその金額で納得するかどうかです。
物件価格の10%といったものから、30万円といった少額の場合もあります。売主が納得すればいいので、10万円というものもありました。
民法557条1項には、「買主が売主に手付を交付した時は、相手方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。」とあります。
そこで住宅ローンの融資の申し込みが、履行の着手にあたるかどうかですが、判例等では代金支払いのために融資を受けることは、履行の準備段階にとどまり、履行の着手には当たらないとされています。
賃貸の場合も契約時に手付金を授受して、契約から引き渡しまでの間に手付解約をすることはできるみたいです。しかし、賃貸契約で手付金のやり取りは一般的には行われてません。
預り金と申込金
既に述べたように、申込金とは契約を結ぶ意思があるということを示すために支払う金銭です。
手付金と違うのは、手付金は契約時の金銭のやり取りですが、申込金は契約前の申込み時の金銭のやり取りです。
契約前の金銭のやり取りなので、契約のような拘束力がなく、申し込みを解約したときは不動産会社に支払った申込金は返還されます。
預り金は申込金とほとんど同じような意味で使われています。
文字通り預けるだけなので、後に返還される金銭です。
しかし中には、契約金の一部を支払っておく前払いのような意味で使われることもあります。
地域や担当者によっては、敷金や保証金を指していることもあるようなので、預り金を要求された時は不動産会社にどんな性質のものなのかを確認したほうがいいでしょう。
申込みした物件がそのまま契約した場合は、申込金が仲介手数料に充当されるのが一般的です。
契約が成立したら仲介会社に仲介手数料を支払うので、スムーズに申込金を充当するなら、結果オーライといったところでしょうか。
申込金をめぐるトラブル
申込金、預り金をめぐるトラブルは多いです。
何らかの事情によって申し込みを解約した場合は、支払った申込金は返還されるのが普通ですが、不動産会社の中には、解約する場合は申込金を返還しない、返還に応じないといった会社があります。
申込金は、申し込みの順番を確保するための証拠金に過ぎないので、契約が成立しなければ申込人に返還されなければならない金銭です。
宅地建物取引業法施行規則では、不動産仲介会社に対して、申込金や預かり金の返還を拒否してはならないことが規定されています。
申込金や預り金といった金銭を預かった不動産会社は、これらの金銭の返還を拒むことは許されず、また、申込人が支払った申込金、預り金の返還を受けられるのは当然です。
預り金・申込金をめぐるトラブルが頻発しているので、申込金や預り金を支払う場合は、預かり証書などを必ず受け取り、どういった性質のものかを確認してトラブル防止に努めることが大切です。
手付金・申込金・預り金のまとめ
手付金とは、契約時に当事者間で授受される金銭です。
相手側が契約の履行に着手する前であれば、手付金を放棄して解約することができます。
住宅ローンの申し込みは履行の着手にあたらないと解されています。買主の債務不履行を理由に契約を解除する場合は、売主は手付金を返還する必要があります。
申込金は、契約を結ぶ意思を示すため、物件を抑えるために支払う金銭です。内金ということもあります。
申し込みの順位を確保するための証拠金といった性質があります。
預り金は、文字通り預けるだけなので、契約後は返還が予定されている金銭です。
申込金と預り金はほとんど同じ意味で使われてます。