国民年金や厚生年金といった公的年金制度では、どのような場合に支給されるかが法律で決められてます。
高齢者になると受け取れる老齢年金は多くの人がご存じと思いますが、公的年金は老齢年金だけではありません。
割と知られてるのは老齢、障害、死亡を原因とするの3つの年金ですが、これらの年金は国民年金にも厚生年金にもあります。
人によっては、自分の障害年金の受給権がありながら、親の死亡で遺族基礎年金の受給権もある人がいます。
このように複数の年金の受給権がある場合に、全ての年金を受け取れるかという問題があります。
一人一年金の原則とは
年金制度では、一人一年金の原則というものがあります。
年金には、国民年金と厚生年金とがありますが、1人が選択して受け取ることができる公的年金は、1つだけというのが一人一年金の決まりです。
しかし、実際には多くの年金受給者が国民年金と厚生年金を受け取っています。
国民年金は1階、厚生年金は2階の意味とは
国民年金は原則として全ての国民が対象で、厚生年金は会社員が対象の公的年金とされています。
多い誤解としてあるのが、厚生年金に加入していると国民年金の被保険者ではないというものです。
国民年金はすべての国民が対象なので、厚生年金に加入している人であっても国民年金の被保険者になります。
厚生年金に加入している人は、必然的に国民年金にも加入しているということです。
国民年金が1階部分といわれるのは、全ての国民が対象となっているからで、厚生年金が2階部分といわれるのは加入している人だけが年金の上積みがあるからです。
つまり、国民年金にしか加入してなければ国民年金のみの被保険者ですが、厚生年金に加入している人は、国民年金と厚生年金の両方の被保険者になります。
国民年金と厚生年金には、老齢、障害、死亡を原因とする年金がそれぞれあります。他にも給付はありますが、この3つが原則的な年金です。
国民年金(1階部分)
・老齢基礎年金
・障害基礎年金
・遺族基礎年金
厚生年金(上乗せ2階部分)
・老齢厚生年金
・障害厚生年金
・遺族厚生年金
複数年金の受給権がある場合は選択
年金制度では、一人一年金の原則によって、老齢、障害、遺族といった支給事由の異なる年金は同時に受け取ることができません。
なので、障害基礎年金のほかに遺族基礎年金の受給権が生じた場合はどちらかを選択することになります。
しかし、実際には多くの年金受給者が国民年金と厚生年金を受給しているといいました。
実は一人一年金の原則は、支給事由の異なる年金を受け取れないのであって、支給事由が同じであれば同時に受け取ることができます。
支給事由が同じ年金の例を挙げると、老齢であれば老齢基礎年金と老齢厚生年金、障害であれば障害基礎年金と障害厚生年金、死亡であれば遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。
仮に20歳から60歳まで自営業の人と会社員の人がいたとして、月収も同じ50万円くらいとしたら老齢年金の金額はどうなるでしょう。
自営業の人の場合は、国民年金だけなので年金は約78万円です。これはベースであって物価や手取り賃金によって上下します。
会社員の人は、国民年金にプラスして厚生年金があるので、合計で210万円くらいでしょうか。
他にも複数の年金が受けられる場合がある
複数の年金を受け取る場合を併給といいますが、65歳以上の場合に併給することが可能となる場合があります。
例として「老齢基礎年金と遺族厚生年金」「障害基礎年金と遺族厚生年金」「障害基礎年金と老齢厚生年金」といったものは併給が可能となっています。
また、65歳以降の妻は、自分の老齢厚生年金と遺族厚生年金とが併給可能となります。
ただしこの場合は、自分の老齢厚生年金が優先され、遺族厚生年金よりも少ない老齢厚生年金の場合に差額が支給されるという仕組みがとられています。
遺族厚生年金は老齢厚生年金の3/4
遺族厚生年金は、夫が受け取っていた老齢厚生年金の3/4になります。
分かりやすく例を挙げてみましょう。
夫の老齢厚生年金100万円
妻の老齢厚生年金25万円、老齢基礎年金75万円
夫が死亡して妻に遺族厚生年金の受給権が発生すると、夫の老齢厚生年金の3/4の75万円が受け取れることになります。
妻には老齢厚生年金が25万円受け取れますので、妻が本来受け取れる年金が優先されます。
なので、妻には、老齢基礎年金が75万円と老齢厚生年金が25万円、それにプラスして差額(75万-25万=50万)の50万円が遺族厚生年金として給付されます。
結果は、老齢基礎年金75万円+老齢厚生年金25万円+遺族厚生年金50万円=150万円となりました。
事例では、妻の老齢厚生年金の方が少ない場合でしたが、これが妻の老齢厚生年金の方が遺族厚生年金よりも多い場合は、遺族厚生年金が支給されません。
さらに妻が65歳以上だと
妻が65歳以上だと、さらに遺族厚生年金の2/3と妻の老齢厚生年金の1/2を足した額と比較して多いほうが給付されます。
上の例の場合は、遺族厚生年金3/4+妻の老齢厚生年金の方が大きいので上の例ということになります。
1人1年金の原則についてのまとめ
・公的年金は、すべての国民が対象の国民年金と会社員が対象の厚生年金とがある。
・公的年金は原則一人一年金なので、複数の受給権がある場合は選択することになる。
・支給事由が同じの場合は、国民年金と厚生年金が支給される。
・65歳以上だと併給できる場合がある。
・妻が65歳以上の遺族厚生年金は複雑。
年金は国民にとって非常に重要なのに、あえて分かりにくくしてるのと思うほど複雑です。