賃貸vs分譲マンションは物件次第で答えが逆転する|1級FP・マンション管理士が教えるリスクあるマンション

不動産

賃貸と分譲マンション、どちらが得かは物件の管理状態でも大きく変わることがあります。

修繕積立金の値上げ、2026年に処分が出た大規模修繕工事の談合事件、管理不全のリスクを踏まえ、1級ファイナンシャル・プランニング技能士・マンション管理士がマンションの見極め方を解説します。

 

【この記事から分かること】
・「賃貸と分譲マンションの生涯コスト比較」があてにならない理由
・賃貸を選んだほうがよい人の特徴
・修繕積立金が想定以上に上がる3つの原因
・管理状態の悪いマンションを買うと、賃貸より不利になる理由
・購入前に確認したい、健全なマンションの見極めポイント

 

持ち家は「一戸建て」と「マンション」で別物と見るべき

「賃貸か持ち家か」という議論では、一戸建てとマンションがひとまとめにされがちです。

ところが、この2つは性質が大きく異なります。

 

一戸建ては、建物も土地も自分だけのものなので、いつ、どこを、いくらで修繕するかを自分で決められます。

その代わり、修繕の費用は自分で計画的に準備しなければなりません。

 

一方、分譲マンションは「区分所有」という形で、1つの建物を多くの所有者で共有しています。

自分の住戸(専有部分)は自分のものですが、外壁や屋上、廊下、エレベーターなどの共用部分は、所有者全員の共有です。

共用部分の管理や修繕は、所有者全員でつくる管理組合が決め、費用は管理費と修繕積立金として全員で負担します。

つまり、分譲マンションを買うということは、建物の管理と修繕を他の所有者と共同で行う組織に加わることでもあります。

自分ひとりの判断では、修繕積立金の額も、工事の内容も決められません。

今回は、この区分所有マンションならではのリスクに絞って、賃貸と比較していきます。

 

「生涯コスト比較」があてにならない理由

「賃貸と分譲マンション、どちらが得か」を比べる記事の多くは、「家賃×50年」と「住宅ローン+管理費・修繕積立金」の総額を並べて結論を出しています。

しかし、この比較は前提を少し変えるだけで、結果が簡単に逆転します。

 

家賃も金利も、どちらも動く

物価が上がる局面では、家賃も上がる可能性があります。

マンションを購入すれば、ローンを組んだ時点で住居費の大部分が固定されるため、インフレに強いといえます。

 

一方で、変動金利で住宅ローンを組んでいる場合は、金利の上昇によって返済額が増えます。

2026年9月時点で、フラット35の金利は3.46%と、変動金利との差は過去最大の水準に広がっています。

どちらの金利タイプを選ぶかで、購入後の住居費は大きく変わります。

 

別の記事で、6,500万円のマンションを例に30年間のシミュレーションを行いました(「持ち家vs賃貸」30年シミュレーション|6,500万円マンションで検証、購入者が知らない3つのコスト)。

その結果でも、変動金利で購入した場合と、フラット35で購入して資産価値が大きく下がった場合とでは、結論が逆になっています。

 

比較から抜け落ちがちなのが管理の質

もう一つ、総額比較では見えないのが管理の質です。

同じ価格のマンションでも、管理組合がしっかり機能し、修繕計画が適切な物件と、そうでない物件とでは、将来の維持費も売却価格もまったく違ってきます。

 

分譲マンションが賃貸より有利になるのは、「資産価値が保たれ、維持費が計画どおりに推移する物件」を選べた場合だけです。

 

賃貸を選んだほうがよい人

自宅

賃貸の最大のメリットは、状況が変わったときに身軽に動けることです。

収入が減れば家賃の安い部屋へ、家族が増えれば広い部屋へ住み替えられます。

建物の老朽化や近隣トラブルも、引っ越しで解決できます。管理組合の運営に関わる必要もありません。

 

次のような方は、無理に購入を急がず、賃貸を選ぶほうが合理的なことが多いでしょう。

・転勤や異動の可能性が高い
・独立や起業の直後で、収入が安定していない
・結婚や出産など、数年以内に家族構成が変わる可能性がある
・頭金や諸費用を払うと、手元資金がほとんど残らない
・資産形成を始めたばかりで、まずは預貯金や投資を優先したい

 

賃貸で暮らしながら資産を積み上げ、状況が落ち着いてから購入を検討するのも、十分に合理的な選択です。

 

ただし、賃貸のまま老後を迎える場合は、高齢になると入居審査が厳しくなる点に注意が必要です。

65歳以上で部屋探しをした人の約3人に1人が、年齢を理由に断られた経験があるという調査もあります。

 

分譲マンションの落とし穴|修繕積立金が想定以上に上がる3つの原因

分譲マンションを購入すると、住宅ローンのほかに管理費と修繕積立金を払い続けることになります。

販売時の資金計画では「管理費・修繕積立金で月3万円」などと示されることが多いものの、この金額がずっと続くとは限りません。

 

原因1:最初から値上げが組み込まれている

新築マンションの多くは、当初の修繕積立金を低く抑え、段階的に引き上げる「段階増額積立方式」を採用しています。

国土交通省の調査では、段階増額積立方式を採用したマンションの長期修繕計画で、計画当初から平均で約3.6倍に引き上げられる計画になっていました。

 

当初月1万円の修繕積立金が、20年後には3万円を超える、ということも珍しくありません。

購入時の金額だけで資金計画を立てると、ローンの返済が進んでも住居費が下がらない、という事態になりかねません。

 

原因2:工事費の高騰

建築資材の値上がりや人手不足で、大規模修繕工事の費用は上昇しています。

長期修繕計画を作成した時点の工事費で積み立てていても、実際の工事のときには費用が足りず、修繕積立金の値上げや一時金の徴収、借入れで不足分を補うケースが増えています。

 

原因3:工事の発注をめぐる不正

大規模修繕工事では、管理組合が設計コンサルタントに依頼して工事内容を決め、複数の施工会社から見積もりを取る「設計監理方式」が広く使われています。

本来、コンサルタントは管理組合の立場で工事費の妥当性をチェックする役割を担います。

ところが、このコンサルタントが施工会社から裏で報酬を受け取り、特定の会社が受注できるように誘導する不正が問題になってきました。

国土交通省も2017年に、こうした不適切なコンサルタントへの注意を呼びかける通知を出しています。

 

2026年9月には、公正取引委員会が、関東地方のマンションの大規模修繕工事をめぐる受注調整(談合)で、設計コンサルタントと施工会社の計40社を超える事業者に排除措置命令などを出したと報じられました。

課徴金は総額約16億円にのぼります。

事前に受注する会社を決め、他の会社は形だけの見積もりを出していたとされます。

 

談合によって工事費が割高になれば、その負担は修繕積立金を払っている区分所有者全員に跳ね返ります。

一戸建てであれば自分で業者を選び直せますが、区分所有マンションでは、管理組合の発注の仕組みそのものがしっかりしていないと、個人では防ぎようがありません。

 

管理状態の悪いマンションは、賃貸より不利になることも

修繕積立金が不足したり、管理組合がうまく機能していなかったりするマンションでは、次のような問題が起こりやすくなります。

・大規模修繕の時期に、1戸あたり数十万〜100万円以上の一時金を求められる
・必要な修繕が先送りされ、外壁や配管などの劣化が進む
・管理費や修繕積立金の滞納が増え、さらに資金が不足する
・理事のなり手がおらず、管理会社に任せきりになる
・管理状態の悪さが買い手に敬遠され、売りたいときに売れない、貸したいときに貸せない

 

賃貸であれば、建物に問題があれば引っ越せば済みます。

しかし、分譲マンションではそうはいきません。

住宅ローンを払いながら、増え続ける維持費を負担し、売るに売れない状態に陥ると、賃貸よりも不利な状況になることもあります。

 

「マンションは資産になる」というのは、資産価値が保たれる物件を選んだ場合に限った話です。

管理状態の悪いマンションを買うくらいなら、賃貸を続けるほうがよいかもしれません。

 

結論|健全なマンションを選べるなら、購入は有力

賃貸と分譲マンションのどちらが得かという問いに、一律の答えはありません。

 

ただ、次のことがポイントになるといえます。

・管理状態の悪いマンションを買うくらいなら、賃貸のほうがよい
・資産価値が保たれ、維持費が計画的に推移する「健全なマンション」を選べるなら、インフレに強く、老後の住まいも確保できる分譲マンションは有力な選択肢になる

 

分譲マンションは、賃貸と比べて設備や仕様が充実していることも多く、住み心地の面でもメリットがあります。

本当に大切なのは「賃貸か購入か」ではなく、「購入するならどのマンションを選ぶか」かもしれません。

 

購入前に確認したい7つのポイント

確認する資料 見るべきポイント
長期修繕計画書 収入欄で修繕積立金の値上げ予定を確認。一時金や借入金が計上されていないか
長期修繕計画書 計画期間が30年以上あり、直近5年以内に見直されているか
重要事項調査報告書 修繕積立金の残高と、管理費・修繕積立金の滞納額
総会の議事録(過去2〜3年分) 値上げ案が否決されていないか、トラブルが議題になっていないか
総会の議事録 大規模修繕工事の業者選定の経緯が説明されているか
管理計画認定の有無 自治体から管理計画の認定を受けているか
管理規約・使用細則 2026年4月施行の改正区分所有法に合わせて見直しが進んでいるか

管理計画認定制度は、修繕積立金の水準や長期修繕計画の内容などが一定の基準を満たすマンションを、自治体が認定する制度です。

認定を受けているマンションは、管理組合が適切に運営されている一つの目安になります。

 

長期修繕計画書や総会の議事録は、ページ数が多く、専門用語も少なくありません。

購入を検討している物件があれば、契約の前に、管理の専門家の意見を聞いておくと安心です。

 

 

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の物件の購入や賃貸契約を勧めるものではありません。

 

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