サブリース契約をめぐって、2011年にレオパレスが訴えられ、今年の5月にはスマートデイズが破産して社会問題化しました。
同じような問題が繰り返されるのは、サブリースが構造的に業者有利になりやすいからです。
この記事から分かること
- サブリースで貸主・借主が誰になるのか
- 借地借家法32条による家賃減額請求の仕組み
- なぜオーナーからの解約は難しいのか
- 契約前に理解しておきたい構造上のリスク
まず、誰が貸主で誰が借主か

サブリースというのは、サブリース業者が不動産物件を一括で借り上げ、業者は投資家に対して定額の家賃を支払うという仕組みです。
サブリースの構造を理解する出発点は、「立場の確認」です。
ここが直感に反するため、多くの誤解が生まれます。
サブリース契約では、投資家が貸主となり、サブリース業者が借主になります。
普通の賃貸借と違うのは、サブリースの場合は借主がさらに転貸を行うという点です。
普通の賃貸であれば、投資家と入居者が賃貸借契約を結びますが、サブリースでは入居者と業者が転貸借契約を結びます。
投資物件の管理や募集もサブリース業者が行います。
- オーナー(投資家)= 貸主 物件をサブリース業者に貸す
- サブリース業者 = 借主 物件を借りて、入居者にまた貸し(転貸)する
お金を払う業者のほうが「借主」という点が、後で効いてきます。
サブリース契約が急拡大した背景
サブリース契約が人気を集めたのは、一定の賃料保証と管理の手間がかからないという点です。
不動産投資を行う場合、投資を継続させ、成功するためには、家賃収入が重要になります。
空き家が多くなるにつれて家賃収入は減るので、空き家の期間が長かったり、空き家率が高い場合は、投資活動を続けていくことが困難になってしまいます。
そういった場合に、空き家のリスク回避を目的としてサブリース契約を結びます。
サブリース契約を結べば、家賃収入が本来の80%~90%になるかもしれませんが、空室があっても家賃収入を得ることができます。
この家賃保証が人気となり、サブリース契約は急拡大しました。
なぜ「保証家賃」が減額されるのか|借地借家法32条

サブリース契約を結べば、家賃収入は満額の80%~90%と減ってしまいますが、リスクは回避できまることになります。
ただし、空室率が高かったり、家賃額が近隣建物と比較して高い場合は、家賃保証額が減額されることもあります。
借地借家法では、経済的事情の変動や近隣建物の家賃と比較して不相当の場合などは家賃の増減を請求できるようになっています。
借地借家法32条(賃料増減請求権)
経済事情の変動や、近隣の家賃と比べて不相当になったときは、当事者は将来に向かって家賃の増減を請求できる。
「家賃を減額しない」と特約で定めても、借主(業者)からの減額請求はこの法律で認められるとされています(2003年の最高裁判例でも、借主が事業者でも保護されると示されました)。
重要なのは、「家賃保証」とは家賃を支払うこと自体の約束であって、その「額」を永久に保証するものではない、という点です。
たとえ契約途中であっても、家賃の保証額を見直されて減額されることがあります。
契約中は家賃を減額できないと定めても、借地借家法によりサブリース業者は減額を請求できます。
先日見たニュースでもサブリース物件の所有者が出演していましたが、「サブリース契約を締結したときはホッとしたが、家賃減額通知がこうも頻繁に行われては業者に対して不信感と怒りしかない。」と発言していました。
こういった話は、テレビやニュースでたびたび取り上げられているので、ご存知の人も多いと思います。
借地借家法で保護の対象となるのは業者?

借地借家法は、もともと立場の弱い借主(通常は入居者)を守るための法律です。
ところがサブリースでは、借主が業者、つまり、弱者保護のための法律が、結果として業者を守る形になります。
これがサブリースの最大のねじれです。
この法律のもとでは、いったん物件を貸すと、貸主から契約を解除するのは容易ではありません。
貸主からの解約には「正当事由」が必要で、これが認められることはほとんどありません。
あまりに貸主が不利なため、期間を区切れる「定期借家制度」が後から作られたほどです。
裏を返せば、通常の借地借家法がいかに貸主に厳しいかがわかります。
先日も、家賃保証額の引き下げに応じなかったため、サブリース契約を途中で解約された郊外のオーナーさんが出てましたが、悲惨そのものでした。
家賃減額をしたばかりなのに、サブリース業者の担当者が来て一方的に「家賃の減額に応じなかったので、解約になりますけどいいんですか。」などと言われたそうです。
サブリース契約の「非対称」|解約の難しさ

サブリース契約を投資家側から解約しようと思っても、現状では難しいと言わざるをえません。
反対にサブリース業者側からの解約はそれほど難しくないようにできています。
不動産の賃貸借では、借地借家法が適用されると言いましたが、この法律では正当事由がないと貸主からの解約が認められていません。
契約を解約する権利は、サブリース業者側にのみ認められることが多く、サブリース契約は基本的に業者が有利になっています。
正当事由にあたるのは、建物が古くなって価値がなくなった場合などですが、仮に建物が古くなったとしても、業者がそう簡単には応じるとは限りません。
業者が解約に応じる場合であっても、違約金が必要となるのがほとんどです。
賃料の6か月分といった違約金がかかることが多いため、解約できる場合であっても躊躇してしまう投資家が多いです。
維持費や修繕費は投資家が負担

サブリース契約では、投資物件の管理や募集についてはサブリース業者が行ってくれますが、原状回復費用や維持費、修繕費は投資家が負担します。
入居者が退去した後は、原状回復をしてから次の入居者を募集するのが一般的です。
また、共用部分の維持費もかかります。
さらには、建物は経年劣化していくため、資産価値の維持には長期的な修繕計画が必要です。
これらの費用は、決して安くはありませんが、賃貸経営では必要な費用です。
そして、これらの費用は投資家が負担することになります。
といっても収支が健全なら問題ありません。問題となってるのは健全でないからです。
ローンでレバレッジがかかっている場合、収支の悪化は一気に効いてきます。
今回のまとめ
- サブリースではオーナーが貸主、業者が借主になる
- 借地借家法32条により、業者は家賃の減額を請求できる(特約があっても)
- 借地借家法は借主(業者)を保護するため、オーナーからの解約は難しい
- 解約には非対称があり、業者からは比較的容易、オーナーからは困難
- 維持費・修繕費はオーナー負担で、収支が崩れると一気に苦しくなる
サブリース契約自体は適法で、空室リスクを抑え、管理の手間を減らせるメリットもあります。
ただ、こうした法律上の構造を知らないまま契約すると、「話が違う」と感じるリスクが高くなります。
なお、2021年に全面施行されたサブリース新法(賃貸住宅管理業法)では、誇大広告や不当勧誘が禁止され、契約前の重要事項説明も義務化されました。
契約を検討する際は、家賃が減額され得ることを前提に、減額の条件や解約条件をよく確認し、自分で収支を検証したうえで判断することが大切です。
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