現在の日本の法律では65歳以上の人を高齢者というので、日本人の4人に1人以上が高齢者です。
人口に占める高齢者の割合率を高齢化率とか高齢率といいますが、高齢者が7%以上の場合は「高齢化社会」といわれ、14%以上では「高齢社会」になります。
つまり日本は高齢化率が25%以上なので、超々高齢社会といえます。
現在の日本は、超高齢社会という世界に類を見ない状況になっています。
日本の高齢率が25%を超えたのは平成25年ですが、今後も日本の高齢率は上昇していくと試算されており、今から40年後の2060年には日本の高齢率は40%までいくといわれています。
高齢率の上昇と人口減少の原因は、合計特殊出生率の減少といわれますが、私は政府による政策の失敗が大きいと思います。
世界的には人口が爆発的に増加してるのに、2060年の日本は人口が8000万人近くにまで減少するようです。スペインのように移民に支配される都市が出てくる可能性も高いでしょう。
不動産業界でも士業の業界でも相続に力を入れる業者が増えてます。
不動産業者なら土地建物の相続、士業なら遺言や相続対策、FPや保険なら税金対策や節税対策といったようにです。
4人に1人以上が高齢者という日本では、相続が身近に起きます。
となると、相続人も相続に無関心では思いがけない不幸に見舞われる可能性があります。
相続はプラスの財産ばかりとは限らない
相続といえば、多くの人は財産が増えることを思い浮かべると思います。
では、亡くなった人(被相続人といいます)が、資産よりも借金が多かったり、資産がなくて借金ばかりだったらどうなるのでしょうか?
相続とは、被相続人の権利や義務を包括的に承継することをいいます。
不動産を借りれば、住む権利を得るとともに、家賃を支払う義務などが生じます。
権利というのは、ある事を他人にさせることができたり、自分の自由にできる場合をいいます。
例えば、不動産を借りる契約をすれば、賃借権という権利を得ることができ、その部屋に住むことができます。
また、自分の所有物は、所有権という権利に基づいて自由に処分することができます。
そして、義務というのは、ある事を他人のためにやらなければいけないことや、従わなければいけないことをいいます。
例えば、不動産を借りていれば、貸主に家賃を支払う義務があります。
お金を借りれば、将来にわたってお金を返さないといけないので、これも義務です。
相続は、権利も義務も相続した人が引き継ぐことをいうので、プラスの財産である権利(所有権とか)も、マイナスの財産である義務(借金とか)も相続することになります。
以前、「家売るオンナ」というドラマで、主人公が高校生の時に両親が交通事故にあい、父親の借金を抱えてホームレスになってしまった話がありましたが、そのことです。
ちなみに信用情報機関では、法定相続人の手続きにより借金について情報開示してもらえます。
単純承認
単純承認というのは、相続人が被相続人の財産を全部相続することです。
単純承認の場合は、相続人が被相続人の権利(現金、不動産等の権利)と義務(借金、未払金等返済義務のあるもの)を引き継ぎます。
相続があったことを知ってから3か月が経つと単純承認したものとみなされます。
ただし、この期間は利害関係人や検察官の請求により、家庭裁判所で伸長することができます。
借金や葬式費用
借金を相続するといいましたが、借金があっても取得した財産の価値の方が大きい場合があります。
不動産を多く保有しているケースでは、借入金があることが多いので、そのような場合には借金以上の財産があるかどうかを確認することです。
法律では、借金や未払いの金銭を債務といいますが、債務や葬式費用のうち一定のものは、相続財産から控除することができることになっています。
相続税でも、相続財産から債務や葬式費用を控除することは認められてます。
借金放棄はいつまでか、相続放棄とは
被相続人に借金があったことが発覚し、相続人が借金を相続したくない場合は、相続放棄ができます。
ただし、相続放棄には期限があり、相続を知った日から3か月以内に行う必要があります。
しかも、この3か月以内というのは、相続放棄は3か月以内に行わないといけないということを知らないで相続放棄できなかったとしても認められません。
催促等の書類を無視してそのまま何もしなければ、相続人は被相続人の借金を背負うことになります。
相続放棄は、単独で行うことができます。
以下の場合も単純承認したものとみなされます。
・相続財産を処分した
・3ヶ月以内に意思表示をしない
・限定承認・放棄したのに、相続財産を隠匿、消費した、悪意で財産目録に記載しなかった
判例では、相続人が相続財産が全くないと信じて3か月が過ぎ、そう信じたことに理由があるときは、これを認識できるときから起算するとされています。
たとえば、被相続人の死亡を知ってから3ヶ月が経過し、それから数か月後に被相続人の債権者の催促で借金があったことが発覚した場合です。
判例では、この場合は相続人は債権者から借金の返還を請求された時から3ヶ月以内であれば相続できるとしました(最判昭59.4.27)。
ここから分かるのは、一人で悩んで諦めず、まずは専門家に相談することが大事ということかもしれません。
借金を相続しそうなときのもう一つの対処、限定承認
限定承認とは、相続した人が引き継ぐ財産の範囲で負債を支払い、相続した財産を超える負債は責任を負わないという相続です。
1億円の財産と2億円の借金を限定承認した場合であれば、相続人は2億円の借金でも1億円しか責任を負わないことができるのが限定承認です。
ただし、限定承認は、相続放棄と違って単独で行うことができず、相続人全員が家庭裁判所に申し立てなければなりません。
相続開始前の3年以内に贈与があった場合
相続や遺贈によって財産を取得した人が、被相続人から相続開始前3年以内に贈与を受けた財産がある場合は、贈与で取得した財産価額を相続税の課税価額に加算されます。
そして、加算された財産について贈与税が課せられていた場合は、相続税の計算上控除されます。
令和6年から改正があります。
まとめ
・相続では、不動産や現金といったプラスの財産(権利)だけでなく、借金や未払い金といったマイナスの財産(義務)も承継する。
・相続には、単純承認以外に相続放棄と限定承認がある。
・相続があったことを知ってから何もせずに3か月経ってしまうと相続を承認したものとみなされてしまう。
・限定承認は、財産目録を作成し、家庭裁判所に申述する。
・相続放棄は、家庭裁判所に申述する。