今でこそ少なくなりましたが、かつては仕事から家に帰ると必ずといっていいほどポストに不動産屋のチラシが入ってました。
以前から不動産会社の広告に対して胡散臭いイメージをもっている人は多いようです。
例えば、チラシに載ってる土地がすごい安いからと思って不動産会社に問い合わせてみると、実際は建物が建てられない土地だったということはよくあります。
これだけ聞くと何だか悪人の集まるひどい業界だと思うかもしれません。確かに不親切ですが不動産会社はうそをついているわけではありません。
不動産会社の広告は一定の決められたルールがあり、このルールに基づいて行われています。
おとり広告は禁止
おとり広告は、反響を取るために不動産がありもしない物件を掲載させている広告のことです。
おとり広告は法律で禁止されています。悪質な場合は不動産業の免許停止や取り消しもあります。
今は免許停止や取り消しがあるので悪質業者は少ないですが、昔はとても多かったそうです。
実際に問い合わせてみると「まだありますのでご来店してください。」といい、喜んで店に行ってみると「今決まっちゃいました。」などと言います。といっても人気のエリアではこういったことが本当に起こるので、悪質業者との区別が難しいです。
悪質業者は法律なんか気にしないので、反響を取るために家賃を周辺の物件よりも安く設定したり、駅まで随分と近くしてみたり、酷い業者になると物件を作り上げます。
私は大学に通いながら東京の不動産会社で賃貸営業のアルバイトをしてましたが、当時の不動産会社はおとり広告を当たり前のように使ってました。特に東京の賃貸業者は酷かった気がします。
あれから10年以上が経って業界自体が儲からなくなり、悪質な業者はほとんどなくなりました。
不動産業界はトラブルが多い
取り締まりが厳しくなり10年前と比べて悪質業者は減りましたが、不動産業者の数自体多いので悪質な業者はまだ見かけます。
中には部屋の鍵を閉めて申込するまでお客さんを返さないといった業者もいます。こういった業者は賃貸でも売買でもいます。
不動産は大きな金額が動くので、お客さんと不動産業者とでトラブルになることも多いのがこの業界です。
お金を返さない業者も
不動産業界は、売買もそうですが特に賃貸の方がトラブルが多いです。
賃貸では、物件の申込みをする際に申込金がかかることがあります。
申し込みの際に申込金と称してお金を受け取り、お客さんが申し込みを解除してもお金を返還しないという業者もいます。
申込金は、契約のときに支払うものなのですが、申し込みの段階ではせいぜい意思表示を示す程度のものでしかありません。つまり申し込みをキャンセルすれば戻ってきます。
申込金とにたものに手付金というものがあります。不動産の売買の契約時に手付金を相手方に支払い、相手が履行に着手するまでは手付金を手放して解約することができます。
このように売買の契約では手付金は必要になりますが、賃貸の契約では手付金が必要になることはありません。また、申込金もあくまでも意思を示す程度なので、必ずしも必要ではありません。
申込金をめぐるトラブルは、不動産の協会でも注意喚起してるくらいです。
とりあえず賃貸では手付金は不要ですし、支払った申込金はキャンセルしたら戻ってくるということを覚えておけば十分です。
といっても、申込金は契約が成立したら仲介手数料に充てられるのが普通なので、人によっては問題ないと言うお客さんもいます。
物件資料に告知事項ありって書いてある場合のポイント
物件探しをしていると他と比べて安い物件があることがあります。
その物件資料をよく見ると、備考欄に「告知事項あり」と書いてあるかもしれません。
告知事項とは?
「告知事項あり」の意味は、それを知ったら部屋を借りたくないなあと思うような事項があるということです。
一般的には、自殺や他殺が過去にあった物件を指すことが多く、心理的に嫌がられることから「心理的瑕疵物件」とか「事故物件」といわれています。
ちなみに瑕疵というのは、キズという意味です。
告知事項は説明義務が法律で定められている
なぜ、告示事項ありという表示がされているかというと、不動産会社は心理的瑕疵物件について、部屋を借りる人に対して契約前に知らせることが法律で決められてるからです。
もし、法律で告知しないことが決まっていなければ、わざわざ不動産会社が不利になることを告知するわけがありません。
ただでさえ不動産会社と消費者には情報に差があります。
告知義務は、消費者のためにある義務です。
借りる、借りないは別にして、消費者が告知事項を知ったうえで自分で判断して借りる分には問題ありません。
多くの場合は、告知事項ありと書いてある物件は、周辺よりも安くなっています。
ただ、内装もきれいにリフォームされていれば、意外と気にならないかもしれません。
私も事故物件に住んだことがありますが、きれいにリフォームされてましたし、家賃も安かったので寧ろ快適でした。
具体的な告知事項の説明例
告知事項をめぐって、後からお客さんと不動産会社とでトラブルになることが多いです。
どのような場合に「告知事項あり」と不動産屋が書かないといけないのかというと、これについては明確な基準がなく、消費者がそれを知っていたら借りないことについて告知しなければならないとされているだけです。
消費者が告知事項について知ってるか否かによって、消費者の目的が達成できるかどうかがポイントみたいです。
自然死
自然死については、告知する必要はないとされています。
自然死についてまで告知義務有にしてしまうと、多くの物件は高齢者お断りになってしまい、部屋を借りることができなくなります。
このような理由もあって、告知義務有となるのは、自殺とか他殺に限っているようです。
ただし、お客さんから問われた時は不動産会社は事実を告げる必要があります。
どれだけの期間、告知義務があるのか
では、何年も前の事件についても告知しなければいけないのでしょうか。
これについても、法律上の明確な決まりがないため、過去の裁判例を参考にするしかありません。
過去の裁判例でも実は事件ごとに判断が分かれていて、明確な決まりはありません。
20年前に起きた有名な殺人事件で告知義務が必要とされた裁判がありますが、これは売買の例でした。
売買の場合は、資産価値にも影響することがあるので、20年経っても告知義務ありと判断したのかもしれません。
期間についても借り手がそれを知っていたら、借りなかったかどうかがポイントとなるようです。
ある弁護士の先生は、2~3年間が一つの目安といっています。
私の場合は告知するかどうか迷ったらお客様に知らせるようにしています。
駅から徒歩10分の意味
不動産会社からもらった物件資料では10分と書いてあったのに、実際に歩いてみたらとてもじゃないが10分ではたどり着かなかった、なんてことはないでしょうか?
実はこの徒歩〇分という表示については、不動産表示の規則によって決まっています。
徒歩1分というのは、80メートルで換算することに決められています。
そして、坂も平坦も関係なく徒歩1分=80メートルという決まりです。
不動産の販売図面では、駅から自宅まで平坦で坂が一切ない物件も、駅から自宅まで延々と坂が続く物件も、駅から徒歩10分という表示になります。
役所で聞いたところによると、職員の女性が実際に歩いたら1分80mだったので、これがもとになってるそうです。
男性より早足の女性ですね。
横浜や横須賀は、関東でも坂が多くて有名なエリアです。
販売図面の徒歩〇分という表示は老若男女問わず80メートルなので、販売図面で判断するのではなく、実際に駅から歩いてみることが大切です。
まとめ
・不動産屋の広告にも法律の適用がある。
・おとり広告とは、存在しない物件でお客さんに問い合わせをさせる広告のこと。
・おとり広告は処罰の対象となっている。
・告知事項とは、一般的にお客さんが嫌がる事項で、「心理的瑕疵物件」や「事故物件」と呼ばれることもある。
・自殺や他殺といった事件が起きた物件では、告知事項として事件があったことを知らされる。
・告知事項ありの物件は安いことが多い。
・告知義務の期間について明確に決まってない。賃貸では3年程度が目安とされている。
・販売図面の徒歩表示は、規則で80メートルが徒歩1分と決まっている。