令和元年9月30日に総務省から「住宅・土地統計調査」が公表されています。
この調査では日本の住宅の居住状況や土地等の実態を調査して公表しているので、日本の不動産市場の問題が分かります。
これによれば空室の数は毎年増加し続けており、完全に供給過多の状態が続いています。
日本では、平成25年に総人口に占める高齢率が25%を超えており、2010年頃からは人口数も減少に転じています。
ところが住宅の数は右肩上がりで現在も増加しているため、人口減少と重なって空き家の数は拡大しています。
総住宅数と総世帯数の現状
平成30年公表の住宅・土地統計調査によれば、平成30年の10月1日において、日本の総住宅数は6240万7千戸あるのに対して、総世帯数は5400万1千となっています。
つまり、1世帯あたりで1.16戸の住宅という状況です。
住宅・土地統計調査は、5年ごとに調査を実施して公表してますが、5年前と比べると総住宅数は177万9千戸増え、総世帯数も154万9千世帯の増加となっています。
総住宅数と総世帯数の推移を比較してみると,1963 年までは総世帯数が総住宅数を上回っていたが,1968 年に逆転し,その後は総住宅数が総世帯数を上回っている。
住宅の数は、人口減少が騒がれ始めた10年前と比べるて約500万戸も増えています。
不動産市場では、昔から今に至っても新築住宅が人気なので、人口が減少しているにもかかわらず住宅が供給され続けています。
人口が減少しているのに、住宅数だけでなく総世帯数が年々増えているのは、単身世帯が増加していることを表しています。
単身世帯の増加というと、昔は地方から上京した若者が原因でしたが、高齢社会の現在では独居老人の増加が総世帯増の原因と見られています。
空き家の数は3.6%増加し、空き家率は過去最高の13.6%
総住宅といっても、中には誰も住んでいない空き家もあります。
そこで、統計では総住宅数を居住世帯のある住宅と居住世帯のない住宅とに分けて公表しています。
引用元 総務省「住宅・土地統計調査」
総住宅数を居住世帯のある住宅とない住宅と分けると、居住世帯のある住宅は 5361 万6千戸(総住宅数に占める割合 85.9%)、居住世帯のない住宅は 879 万1千戸(同 14.1%)となっています。
居住世帯のない住宅の中でも空き家の数は、848 万9千戸と過去最高になっています。
また、空家率でも13.6%と前回の調査より0.1%増えています。
空き家の内訳は、賃貸用住宅が432 万7千戸(総住宅数に占める割合 6.9%)と空き家の過半数(51%)を占めており、続いて売却用の住宅が29 万3千戸(同 0.5%)、別荘といった二次的住宅が38万1千戸(同 0.6%)、その他の住宅が 348 万7千戸(同 5.6%)となっています。
2013年と比べると、賃貸用住宅が3万5千戸(0.8%)増え、売却用住宅が1万5千戸(4.9%)の減少、二次的住宅が3万1千戸(7.5%)の減、その他の住宅が30万4千戸(9.5%)の増加となっています。
不動産市場は都市部で堅調
このまま空き家が増加し続けると、今から20年後には空き家率が30%を超えると言われる日本の住宅市場ですが、現在は都市部の多く……特に東京23区のマンション価格が右肩上がりで上昇しています。
マンション高騰の原因として挙げられる一番は相続の節税対策ですが、他にも材料費の高騰、人手不足による職人不足といったものがあります。
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地方の商業地が平成3年以来28年ぶりに上昇
先日、平成30年7月以降の1年間の地価について都道府県地価調査が公表されました。 都道府県地価調査は、国土利用計画法9条に基づいて、都道府県知事が標準価格を公表するものです。 公示地価が ...
堅調な不動産市場の中でも特に東京23区のマンションが高騰しており、一般の人が転売目的で不動産を売り買いしているケースもあるようです。
マンションは時価と相続税評価が乖離しやすいので、分譲マンションが相続税対策に利用されてます。
この結果、東京23区のマンション価格ばかり高騰し、反対に資産価値の低い郊外のマンションが売れなくなっています。
外国人が投資目的で購入してるケースも増えています。
最近は地方で商業地が28年振りに高騰したと話題になりましたが、全体的には都市部と地方では二極化が進み、地方の不動産価格は下がっていくものと思われます。
地方の賃貸住宅は空室が悪化、投資物件は立地が重要
総住宅について割合で見ると13%台の空き家ですが、その過半数は賃貸住宅です。
賃貸物件の空室率にいたっては20%を超えているといわれますが、なかでもアパートの空室率は30%を超えています。
しかも、これはあくまでも日本の平均の空室率なので、都道府県別にみれば首都圏と地方とでは偏りが出るはずです。
1ルームマンションを不動産会社に勧められたのを機に不動産投資を始めた人の多くは途中で売却し、後悔する人も多いです。
1ルームマンションだとなかなか差別化が出来ませんし、立地が悪いと借り手が全くつかないこともあります。1ルームマンションでの空室は収入がゼロでも支出はこれまで通りかかります。
神奈川県内の新築アパートの中には、立地が悪いために募集してから1年経っても、3割も埋まらないものもあります。こういった物件はキャッシュフローのマイナスが拡大する一方なので、早いうちに撤退することも考えたほうがいいかもしれません。
マンション投資では、保有期間中の損益がほぼ0かマイナスになることが多いです。
保有中は利益ゼロかマイナスでも、不動産業者曰くローン返済が終わればマンションという資産が残りますということです。
マンションが古くなっても土地が残るので、最終的にはマンション業者が買い取るということです。
ただ、マンションの建て替えは現状では過去の例が少なく、建て替え決議が思うようにいくとは限らないので、立地次第では手放した方がいいケースも多いです。
ワンルームマンションは比較的低額から始められますが、一棟もの不動産と違って他の所有者がいるので対策が難しくなります。
今回のまとめ
・住宅数は5年前と比べて177万9千戸の増加となり、総住宅数は2.9%増の6247万戸となった。
・総世帯数も154万9千世帯増加した。
・単身者世帯が増加しているのは、高齢者の単身者世帯が増加しているから。
・空き家は、5年前よりも29万3千戸増加し、848万9千戸となった。
・空家率も0.1%上昇し、13.6%と過去最高を更新した。
参考 総務省 住宅・土地統計調査