総務省「令和5年住宅・土地統計調査」(2024年公表)によると、2023年時点の全国の空き家数は約900万戸、空き家率は13.8%と過去最高を記録しています。
1978年の268万戸(7.6%)と比較すると、約3.35倍に増加しています。
さらに深刻なのは将来予測です。
野村総合研究所の推計では2043年には空き家率が25.3%に達する見込みとされており、約4軒に1軒が空き家になる計算です。
この問題は「地方だけの話」ではありません。
神奈川県でも賃貸用住宅の2割以上がすでに空き家となっており、都市部でも空き家問題は着実に進行しています。
この記事では、人口減少・高齢化が不動産市場に与える影響と、不動産オーナー・住宅購入者それぞれが知っておくべきリスクと対策を解説します。
この記事で分かること
- 空き家増加の根本原因(人口減少・高齢化)
- 空き家率上昇が賃貸市場に与える影響
- 不動産オーナーが直面する空室リスクの実態
- 住宅購入者が知っておくべき資産価値の変化
- 人口減少局面での物件選びのポイント
空き家が増え続ける根本原因

主因は高齢化に伴う死亡数の増加
日本総研(2025年3月)の分析によると、空き家率と死亡率の間には強い正の相関関係があります。
高齢者が亡くなった後、残された住宅がそのまま空き家になるケースが急増しており、これが空き家問題の主因です。
2023年の死亡数は約160万人で、2040年頃にかけてさらに増加する見込みです。
つまり空き家には今後も中長期にわたって強い増加圧力がかかり続けます。
人口減少と世帯数の変化
日本の人口は2008年をピークに減少に転じており、2070年には現在より約3,000万人少ない約8,700万人になると推計されています。
ただし、世帯数については、単身世帯の増加などにより2030年頃まで増加が続く見通しです。
このため住宅需要がすぐにゼロになるわけではありませんが、エリアによる二極化が急速に進むことが確実視されています。
相続物件の増加
団塊の世代が後期高齢者となり、相続によって不動産を取得するケースが急増しています。
2024年4月に相続登記が義務化されましたが、相続した不動産を活用・売却できないまま空き家化するケースも多く、供給過剰に拍車をかけています。
賃貸市場への影響|借り手市場がさらに加速する

供給過剰の構造が固定化
相続税対策を目的としたアパート建設ラッシュの影響もあり、賃貸用住宅の供給は需要を大幅に上回っています。
人口減少が続く中でこの構造はさらに深刻化し、特に地方・郊外エリアでは空室が埋まらない物件が増え続ける見込みです。
敷金・礼金ゼロが当たり前の時代
空室を避けるために、多くのオーナーが敷金・礼金をゼロにして募集しています。
入居者確保の競争は今後も激化し、条件の良い物件とそうでない物件の差がさらに広がっていきます。
賃貸市場で生き残るための条件
| 条件 | 重要度 |
| 駅からの距離(徒歩5分以内が理想) | ◎ |
| 間取り・設備の現代化 | ◎ |
| インターネット・宅配ボックスなどの設備 | ○ |
| 管理状態・清潔感 | ○ |
| 家賃の適正水準 | ◎ |
立地の良い物件と管理状態の良い物件への需要集中が起きる一方、郊外の古い物件は空室が長期化するリスクが高まります。
不動産オーナーが直面するリスク
空き家の数は右肩上がりで上昇しています。
空室率上昇による収入減少
賃貸経営では、空室は直接収入ゼロに直結します。
1室でも長期空室が続けばキャッシュフローへの影響は大きく、借入金の返済が難しくなるケースもあります。
空室リスクが高まる物件の特徴
- 駅から徒歩10分以上
- 築年数が古く設備が未更新
- 単身者向けなのにコンビニ・スーパーが遠い
- 周辺の人口流出が進んでいるエリア
- 競合物件が多い供給過剰エリア
将来の資産価値の下落
人口減少・空室増加が続くエリアでは、不動産の資産価値も下落する可能性があります。
売却時に購入価格を下回るリスク、担保価値の低下によるローンの借り換えが難しくなるリスクも考慮しておく必要があります。
修繕コストの増加
建物は経年劣化するため、空室率が高い状態で修繕費用が発生すると収支が一気に悪化します。
大規模修繕の計画的な積立と、空室対策のリノベーション費用の双方が必要になる局面が増えています。
流行に目を向けることも大事?それともコンセプト物件?
ファッションや趣味に流行があるように、不動産にも流行があります。
賃貸住宅であれば、間取り、建物の構造、高齢者向け住宅等が考えられます。
その他、不動産市場が経済環境や社会的な要因の影響を受けることがあるように、賃貸市場も外部的な要因に影響を受けることがあります。
例えば、20年前はワンルームでロフトが流行りましたが、上がるのが面倒なのと隣の音が響きやすいので人気はいまいちです。
また、30年ほど前からバストイレが一緒の物件が急増しましたが、バストイレが一緒だと使い勝手が悪いので、今ではバストイレが一緒だと人気ありません。
昭和の時代は、洗濯機は外が当たり前でしたが、今は室内洗濯機置き場でないと嫌がられます。洗濯機が劣化・汚れるからです。
また、4人に1人以上が高齢者という時代なので、高齢者を無視することはチャンスを逃すことにもなりかねません。
最近では、他の賃貸住宅とは異なる内装を施した部屋や、サイクリング人気を受けてスポーツバイクを室内に置けるコンセプト住宅も人気です。
住宅購入者が知っておくべきリスク

不動産で一番重要なのはやはり立地です。これは自宅でも不動産投資でも同じことです。
「資産として持つ」という前提が崩れる地域がある
かつては「不動産は資産」という考え方が一般的でしたが、人口減少が進む地域では住宅の資産価値が長期的に下落するリスクがあります。
資産価値が維持・上昇しやすい条件
- 都市部・交通利便性の高いエリア
- 人口流入が続いているエリア
- 再開発・インフラ整備が進む地域
- 供給量が需要を大きく上回っていないエリア
資産価値が下落しやすい条件
- 人口流出が続くエリア
- 高齢化率が極めて高い地域
- 駅から遠い・交通インフラが弱い
- 供給過剰で空き家が目立つ地域
中古物件・空き家活用の視点
空き家の増加は、逆に言えばリノベーション物件・中古物件の選択肢が広がることを意味します。
エリアと立地をしっかり選べば、新築より費用を抑えながら希望に近い住まいを手に入れられる可能性があります。
人口減少局面での不動産選びのポイント

賃貸投資を検討する場合
- エリアの人口動態を確認する:人口増加・横ばいのエリアを選ぶ
- 駅徒歩5分以内:賃貸需要の維持に最も重要な条件
- ターゲットを明確にする:単身者向けか、ファミリー向けか、高齢者向けか
- 設備の現代化:インターネット無料・宅配ボックス・セキュリティは今や必須
- 将来の出口(売却)も考える:買い手がつきやすいエリア・物件かを考慮する
マイホームを購入する場合
- 立地を最優先にする:建物は変えられるが立地は変えられない
- 将来売れる物件かを意識する:人口が維持されるエリアを選ぶ
- 住宅ローンの返済期間と資産価値の下落リスクのバランスを考える
- ライフプランとセットで判断する:住む期間・家族構成の変化・老後の住み替えを視野に入れる
今回のまとめ
空室率の上昇でローンを延滞する人が増加中してますが、空室率を減らすためにできることはあります。時にはロスカットも必要です。
- 2023年の空き家率は13.8%で過去最高。2043年には25%超が予測されている
- 空き家増加の主因は高齢化に伴う死亡数の増加と人口減少
- 賃貸市場は借り手市場がさらに加速し、立地・設備・管理状態の差が拡大する
- 不動産オーナーは空室リスク・資産価値下落・修繕コスト増加の三重リスクを抱える
- 住宅購入者は「不動産は必ず値上がりする」という前提を持たず、エリアの人口動態・将来の売却しやすさを考慮した選択が重要
- 人口減少局面でも、都市部・交通利便性の高いエリアへの需要集中は続く
不動産の価値は一律ではなく、エリアと立地によって全く異なる方向に動く時代が来ています。
購入・投資どちらの場合も、ライフプラン全体での資金計画と合わせた判断が重要です。
本記事は宅地建物取引士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士・マンション管理士が監修しています。 記載のデータは総務省「令和5年住宅・土地統計調査」(2024年公表)、日本総研(2025年3月)、野村総合研究所の推計に基づきます。

