建物の空室率が上昇すると入ってくる家賃が減少するので、空室率の上昇は賃貸経営の悪化を招きます。
空室率の上昇で収入が減り、ローンを延滞する人が増えているようです。
平成25年に高齢率が25%を超えて以降、日本では人口減少が始まり、高齢率の上昇は今後も続く予想です。
高齢率が25%を超えるようになってからは、相続対策のセミナーをよく見かけるようになりました。
不動産会社でも高齢者に対して、相続対策向けにとアパート経営や不動産投資セミナーを開催してることが多いです。
特に不動産は相続対策になることが知られています。現金で保有するより不動産の方が評価額が下がります(税金の対象が少なくなる)し、制度上の評価の仕方でも引き下げできるからです。
しかし、賃貸用アパートは乱立し、今の賃貸市場は完全に借手市場となっています。
空室率を少しでもよくするためにも、現在の賃貸市場を知ることは重要です。
敷金礼金ゼロは当たり前?
保証会社を利用することで家賃滞納に対するリスクは低下します。
本来であれば、敷金は担保として貸主が預かるのですが、最近は敷金礼金なしという物件がかなり増えました。
貸主は敷金礼金をとらないかわりに、家賃滞納リスクに備えて借主に保証会社を利用してもらいます。
保証会社を利用することで、借主にとっても連帯保証人を探す手間が省けます。
敷金は担保といった役割がありますが、礼金は貸主に対するただのお礼にすぎません。
周りの物件が礼金をゼロにしているのに、自分が保有する物件だけが礼金をとっていては、なかなか空室が埋まらないのは当然です。
需要のある場所であれば礼金は取れるかもしれませんが、競合の多いエリアであれば礼金をゼロにしてでも空室は避けた方がキャッシュフローは改善します。
空き家率は、右肩上がり
下の図を見て頂くと空き家の数は右肩上がりで上昇していることが分かります。
「平成25年住宅・土地統計調査」によれば、空き家のほとんどが「賃貸用の住宅」と「その他の住宅」で90%を占めています。
神奈川は、全国的に見ても空き家率は低いといわれていますが、それでも賃貸用の住宅については、2割以上が空き家となっています。
実際、東京まで電車で1時間圏内のエリアの賃貸用住宅でも、新築の物件なのに立地が良くないせいで全く借り手がつかないことが増えています。
今後、神奈川では、4割の賃貸住宅が空き家になると予想されています。
流行に目を向けることも大事?
ファッションや趣味に流行があるように、不動産にも流行があります。
賃貸住宅であれば、間取り、建物の構造、高齢者向け住宅等が考えられます。
その他、不動産市場が経済環境や社会的な要因から影響を受けることがあるように、賃貸市場も外部的な要因に影響を受ける場合があります。
例えば、20年前はワンルームでロフトが流行りましたが、上がるのが面倒なのと隣の音が響きやすいので人気はいまいちです。
また、30年ほど前からバストイレが一緒の物件が急増したようですが、バストイレが一緒だと使い勝手が悪いので、今ではバストイレが一緒だと人気ありません。
昭和の時代は、洗濯機は外が当たり前だったようですが、今は室内洗濯機置き場でないと嫌がられます。洗濯機がすごい汚れるからです。
また、4人に1人以上が高齢者という時代なので、高齢者を無視することはチャンスを逃すことにもなりかねません。
不動産は立地が重要
不動産で一番重要なのはやはり立地です。
これは自宅でも不動産投資でも同じことです。
建物は建て替えや変更ができますが、立地については変更できません。
また、賃貸用住宅を建てる際には、どのような人を募集するかも重要です。
単身者向けのエリア
大学街であれば、ファミリータイプの居住用建物を建てるより、単身者向けの居住用建物を建てた方がいいかもしれません。
単身者向けの居住用建物は、コンビニやスーパーがあると人気が出ます。
将来のリスクに備えて用途地域や都市計画についても確認しておくといいでしょう。
ファミリー向けに向いているエリア
ファミリー向けの賃貸住宅でお客さんが重視するのは、通勤や通学についてです。
通勤・通学は毎日のことなので、交通アクセスはほとんどのお客さんが気にします。
子供がいる家庭であれば、幼稚園、小学校、中学校への距離も問題です。都内だと学区も重視される傾向にあります。また、中学校だと荒れてるかどうかが問われることがあります。
ファミリー向けだと病院が近いのもお客さんのポイントが高くなります。
墓場、火葬場、工場といった施設があるとお客さんは嫌がります。
駅から遠くてもそれほど気にしないお客さんがいるのは、ファミリー向けの居住用建物です。
クルマの移動がメインのお客さんは、駐車場が必要ですし、車通勤では高速道路へのアクセスが問われることもあります。
物件調査や市場調査も重要
忘れてはならないのは、そもそもその土地はどのようなアパートやマンションが建てられるのかです。
用途地域、建築基準法による制限、防火地域などの制限などもアパートやマンションの建設には重要な事前調査です。
他にも人口の増減や、土地価格・家賃価格の変動といった経済・市場調査も重要です。
若者がどんどん流出しているのに駅から10分以上かかるような場所にワンルームを建ててもなかなか空室は埋まらないと思います。
賃貸物件は売買物件と異なり、どれも似たような部屋が多くなります。
そうなると立地が悪い物件は分が悪いですが、それでも対策はできます。
例えば、他の物件との差別化のため、コンセプト物件で差別化を図る人もいます。
コンセプト物件は店舗等でも使える対策で、よくあるのはペット可、楽器可ですが、最近はスポーツ自転車が人気なので、部屋に自転車を置けるようになってる物件もあります。ちなみに玄関の前は共用部分なので、駐輪場以外の外に置くのは原則NGとなります。
さらにTwitterやInstagramといったSNSやYouTubeを活用することで、多数の人に情報を伝えられます。
今回のまとめ
空室率の上昇でローンを延滞する人が増加中してますが、空室率を減らすためにできることはあります。時にはロスカットも必要です。
・現在は、敷金礼金ゼロは当たり前の時代
・保証会社を利用した場合の家賃滞納リスクは、保証会社が負う
・ワンルームは駅から徒歩10分だと遠い。できれば5分以内
・空室率は今後も上昇を続けていく
・単身向けかファミリー向けのどちらに需要があるかはエリアで違う