区分所有マンションは、一棟の建物を数個の部分に区分したマンションです。
区分所有建物となるためには、それぞれの部屋が構造上・利用上区分してなければなりません。
独立した部屋は住居、店舗、事務所といった用途に使用でき、部屋を所有する権利が区分所有権です。
区分建物を所有するためには敷地を利用できる権利が必要です。
区分建物(区分所有マンション)とは
区分建物というのは、一棟の建物が、構造上の独立性および利用上の独立性を備えた部屋が複数ある建物をいいます。
街中でよく見かける分譲マンションが該当し、一棟の建物を一人で所有してる場合は区分建物ではありません。
それぞれの部屋は独立の所有権が認められており、区分建物の所有権を区分所有権と言います。
区分建物には、専有部分と共有部分があります。
専有部分は所有権の対象とする部屋のことで、居住だけでなく店舗や事務所、倉庫といったことに使用できます。分譲マンションの101号室、202号室といったそれぞれの部屋です。
共有部分は、専有部分以外の建物の部分をいい、廊下やエレベーター、階段といった他の所有者と共有し使用する部分です。
専有部分と共有部分は分離して処分することはできず、専有部分を売却したら原則として共有部分の使用権も移転します。
敷地利用権とは
日本の不動産は土地と建物が別の扱いです。別の扱いなので土地の所有者と建物の所有者が異なることはよくあります。
例えば、建物は所有してるけど、土地は賃貸してる(借地)ような場合です。
建物と土地が別々の人の所有では、建物を所有することに障害ができてしまうこともあります。
敷地利用権は、区分建物の専有部分を所有するための敷地に対する権利です。
区分所有建物では、土地の権利も各区分所有者が共有します。
敷地利用権が所有権であれば所有権、地上権であれば地上権を、賃借権であれば賃借権といった感じで共有してます。
共有してるので、それぞれの所有者は専有部分の面積の割合で持ち分を有するのが原則です。
敷地利用権になる権利には、所有権、地上権、賃借権、使用借権といったものがあります。
所有権は既に述べたように対象物(建物、土地、動産など)を所有する権利です。
地上権は、他人の土地に建物や竹木を所有するために土地を使用する権利です。
賃借権は、他人の物を賃料を支払って借りる権利です。
使用借権は、他人の物を無償で借りる権利です。
地上権と賃借権はどちらも土地を借りる権利ですが、地上権が誰に対しても主張できるのに対し、賃借権は債権なので当事者間でしか主張できません。ただ、建物を所有することが目的の場合は借地借家法の適用があります。
敷地権とは
不動産登記法上、登記された敷地利用権を敷地権と言います。
不動産登記法上、登記ができる権利は限定されています。
登記できる権利
所有権、地上権、永小作権、地役権、先取特権、質権、抵当権、賃借権、配偶者居住権、採石権
敷地利用権では使用借権がありましたが、使用借権は登記ができる権利に含まれてないので、敷地権にはなりません。
敷地権付区分建物と敷地権付ではない区分建物
区分所有建物には、敷地権付の区分建物と敷地権付きではない区分建物があります。
敷地権付区分建物は、区分建物と敷地利用権の分離処分が原則として禁止される区分建物をいいます。
敷地利用権が登記されると敷地権となり、原則として建物と利用権が別々に処分できなくなります。
専有部分を売買すれば、敷地権も一緒に移転します。
敷地権付ではない区分建物は、規約で分離処分が認められている区分建物です。
この建物の場合は、専有部分を売却しても敷地利用権が移転しません。
したがって専有部分とは別に敷地についても所有権移転登記が必要です。
区分所有者が相続人なくして死亡した場合の区分所有法の扱い
民法では、共有者が亡くなって死亡したときは、持ち分は他の共有者に帰属するとしています。
民法255条
共有者のうちの一人が、その持分を放棄したとき、または相続人がなく死亡したときは、その持分は、他の共有者に帰属する
しかし、敷地利用権についてはそうならないことがあります。
敷地利用権が区分所有者の共有であったときに、区分所有者が亡くなって相続人がいない場合などです。
民法の規定が適用されると、専有部分は国に、敷地利用権は共有者に帰属し、結果として分離処分することになるからです。
したがって区分所有法では、敷地利用権が共有である場合は民法255条を適用しないことになっています。
このような場合は専有部分と敷地利用権は国に帰属することになります。
まとめ
・敷地利用権は区分マンション等を所有するための敷地に関する権利
・敷地利用権が登記されると敷地権になる
・敷地権は建物と敷地利用権を原則として分離処分できない
・敷地権付の区分建物を売却すると敷地権も移転する
・共有の敷地利用権の区分所有者が亡くなっても民法255条は適用されない