今はだいぶ少なくなりましたが、ときどき見かける不動産チラシには、「頭金なしでも家が買える」といった文が入ったチラシがあります。
不動産屋のチラシ自体は確かに間違ってはいませんが、実はこれ……誤解を招くことも多く、かなりの人が誤解している部分があります。
今回は、この「頭金なしでも家が買える」チラシについて書こうと思います。
目次
頭金とは何なのか
まず、最初に頭金についてお話をさせて頂こうと思います。
住宅を全額現金で購入できる人でない限り、一般的には住宅ローンを利用すると思います。
頭金とは、住宅ローンを利用した際、自分で用意する現金をいいます。
例えば、購入する不動産の価額が4000万円だとしたときに、自分で400万円用意して、残りの3,600万円をローンで賄う場合です。
この例の場合は、自分で用意した400万円が頭金になります。
ちなみにフラット35では、頭金を1割以上用意するかどうかで適用される金利が変わることがあります。
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頭金、諸費用、自己資金のそれぞれの意味
頭金とよく似たものに自己資金があります。
自己資金とは、住宅の購入の際に、住宅ローン以外に自分で準備する金銭をいいます。
頭金は、購入する物件に対しての金銭のことと言いましたが、自己資金は、住宅購入にかかる費用に充てられる金銭です。
不動産の購入では、不動産の価格以外に諸経費がかかります。
間違いの主な原因は、頭金と自己資金と諸費用を区別していないことによって起こります。
自己資金とは、住宅を購入するために自分で用意した金銭の全部をいいますが、諸費用は、住宅を購入するために係る住宅本体の価格とは別にかかる費用です。
諸経費には、仲介手数料、収入印紙、登記費用、税金の精算金がかかり、ローンを利用する場合には、融資手数料、収入印紙、保証料、抵当権設定登記費用などがかかります。
頭金、自己資金、諸費用の例
例を挙げて説明しましょう。
ここに3000万円の住宅を買うつもりのAさんがいます。
Aさんは住宅購入に充てる費用として自己資金300万円を貯めました。
ところが住宅購入にはいろいろな費用(諸費用)が掛かり、240万円の費用がかかることが分かりました。
住宅を購入するためには自己資金300万円から諸費用240万円が引かれるので、住宅本体価額に充てられるのは60万円となります。
つまりAさんの場合の頭金は、60万円ということになります。
結局、Aさんは残りの2940万円を住宅ローンで用意して購入することにしました。
この例では、自己資金は300万円、諸費用は240万円、頭金は60万円となります。
「頭金なしでも家が買える」というチラシの本当のところ
結論からいうと、頭金がなくても金融機関の審査が通れば家は買えます。もっというと保証会社の審査が通れば家が買えます。
不動産の売買では、契約時に手付金が必要です。
手付金とは、契約の際に買い主が売り主に渡す金銭をいいます。
相手が履行(契約内容を実行すること)に着手していなければ手付金を放棄することによって契約を解約することができます。ただし、手付解除期日以内であることが必要です。
手付金は契約によって3つの性格を有するとされていますが、通常は手付といったら解約手付のことを指します。
手付金は、売主との交渉にもよりますが、物件価格の5%~10%というのがよくある例です。
不動産の本体価格は住宅ローンを利用すればいいのですが、諸費用は自分で準備する必要があります。
なかには諸費用ローンもありますが、金利が高いですし、審査が厳しくなることもあります。
今でこそ見ることが少なくなった「頭金がなくても家が買える」といったチラシですが、こういったチラシを見て問い合わせをするお客様は、基本的には自己資金がないために問い合わせをするので、頭金どころか手付金・諸費用もない人がほとんどです。
ほとんどのお客様は、家が買えずにガッカリして買えられるというのがパターンでした。
家賃を支払いながら自己資金を貯めるのは大変ですが、毎月一定額を最初に積立てたり、積み立て投資をするなど、仕組みを利用すれば比較的貯めやすいと思います。
フラット35では、頭金があると金利が下がることがある
フラット35を利用する人は、頭金を1割以上準備すると適用される金利が変わります。
2015年の最多金利について見ていくと、頭金が1割以上の場合は1.46%、頭金が1割未満の場合は1.59%となっています。
この金利で3,000万円を借りたとして比較してみます。諸経費は無視します。
例 借入額3000万円 返済期間35年 5月の最多金利を用います
頭金1割以上 1.46% 月々の返済額9万1269円
頭金1割未満 1.59% 月々の返済額9万3184円 となりました。
35年間このまま返済していけば、総額では80万4300円の差となります。
おわりに
上述したように、頭金と自己資金、諸費用は別です。
契約時には、手付金もかかりますが、手付金は購入価格に充てるということが行われています。
不動産探しは、そう何度も経験するものではありません。
不動産探しを決断しても、実際にかかる費用を知って、「こんなに費用がかかるとは思ってもいなかった」と将来に不安を抱くこともあります。
賃貸でも売買でも、お客様をサポートするために宅地建物取引士という専門家がいるわけです。
分からなければ、気軽に質問して、コミュニケーションを取りながら楽しい不動産探しをしていきましょう。