前回の元金均等返済と元利均等返済に続いて、今回も住宅ローンに関する話です。
「住宅ローンの基礎知識 元利均等返済と元金均等返済について」
今回は、住宅ローンの見直しとして有名な「繰り上げ返済」についてですが、まず繰り上げ返済には一部繰り上げ返済と全部繰り上げ返済があります。
一部繰り上げ返済は、住宅ローンの残債の一部について繰り上げ返済を行うことです。
全部繰り上げ返済は、住宅ローンの残債の全部を繰り上げて返済することをいい、全部繰り上げ返済をすれば全てのローンを返済したことになります。
今回取り上げる「2つの繰り上げ返済」は、一部繰り上げ返済を中心に進めていきます。
期間短縮型と返済額軽減型の2つの繰り上げ返済
繰り上げ返済というのは、住宅ローンを毎月の返済額とは別に繰り上げて返済することです。
繰り上げ返済を行うことにより、返済分についてかかるはずだった将来の利息を削減することができます。
ちなみに繰り上げ返済の効果は、「残り返済期間」と「適用金利」によって違います。
繰り上げ返済の効果について
1.残り返済期間が長いほど、繰り上げ返済の効果は大きい
2.適用されている金利が大きいほど、繰り上げ返済の効果が大きい
ローンの繰り上げ返済には、「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2つがあります。
どちらも総支払額を減らす効果がありますが、期間短縮型と返済額軽減型のどちらを選択するかによって、軽減できる利息の効果が異なります。
どちらにもメリットとデメリットがあるので、各家庭の状況に応じた使い分けができます。
期間短縮型の繰り上げ返済
期間短縮型による繰り上げ返済は、住宅ローンの返済期間自体を繰り上げて返済する方法です。
例えば3000万円を金利2%で35年借りた人が、5年後に100万円を繰り上げ返済すれば1年6月の住宅ローン返済期間が短縮されます。
また、繰り上げ返済を行ったことにより、約79万5千円の利息費用が削減されます。
期間短縮型の繰り上げ返済は、返済額軽減型の繰り上げ返済よりも総返済額を多く抑えることができます。
ただし、毎月の返済額は変わらないので月々の返済額を抑えたい場合には向きません。
毎月のローン返済額は変化しませんが、返済期間は短縮されます。
繰り上げ返済する場合は住宅ローンとは別に用意する必要があるので、現金預金が繰り上げ返済分減ることになります。
余裕資金で行わないと、教育資金が足りなくなった、生活がきつい、なんてこともありえます。
返済額軽減型の繰り上げ返済
返済額軽減型の繰り上げ返済は、期間短縮型の繰り上げ返済と異なり、ローンの返済期間は変わりません。
そのかわりに毎月の返済額が軽減されます。
上の例と同様に3000万円を金利2%で35年借りた人が、5年後に100万円を繰り上げ返済すれば、月々の返済額を9万9378円から9万5682円に減らすことができます。この場合の利息の軽減効果は33万662円になります。
同じ条件で期間短縮型の繰り上げ返済が、79万5千円の利息軽減効果ができたのと比べるとメリットは少なく見えるかもしれません。
月々の軽減額をどう見るかです。たいしたことないと思えば短縮型でいいと思います。
返済額軽減型の繰り上げ返済は、毎月の返済額を軽くしたい人に適していますが、期間短縮型の繰り上げ返済よりも利息費用の軽減効果は少ないです。
返済額軽減型は、手元資金を使った効果が毎月の返済額に反映されるので、その点では期間短縮型より効果が実感しやすいと思います。
2つの繰り上げ返済のまとめ
期間短縮型と返済額軽減型には、それぞれメリットとデメリットがあります。
ある程度余裕があり、毎月の返済も問題なく返していけるのであれば期間短縮型を選択し、毎月の返済がきつかったり将来のリスクに備えて月の支払いを抑えたい人は返済額軽減型を選ぶのがよいでしょう。
現在の適用金利が低いので、中には繰り上げ返済をあえてしない人も増えています。
住宅ローンは、団体信用生命保険に加入するのが一般的ですが、繰り上げ返済をすれば保障も少なくなります。
こういった考えから繰り上げ返済をせず、その資金を運用に回している人もいるようです。
とはいえ住宅ローンの繰り上げ返済は、リスクなく適用金利分の効果が得られることを意味しています。
そういった点も踏まえて判断することが大事です。
期間短縮型 | 返済額軽減型 | |
毎月の返済額 | 変わらない | 軽減する |
返済期間 | 短縮 | 変わらない |
利息の軽減効果 | 大きい | 少ない |