自分が使う専有部分は修繕積立金の対象外?給湯器・浴室・配管の修繕費は30年で400万円超

ファイナンシャルプランナー

マンションの修繕積立金は、外壁や廊下などの共用部分のためのものなので、自分が使う部屋の中(専有部分)は対象外です。

専有部分の修繕については、マンション購入者の多くが見落とすため、後になって気づいて慌てることになります。

給湯器や浴室、キッチン、室内の配管などの修繕費は、30年で400万〜700万円ほどかかります。

費用の目安、かかる時期、資金計画への入れ方を、マンション管理士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士が解説します。

 

【この記事から分かること】

  • 自分が使う部屋の中(専有部分)が、修繕積立金の対象外である理由
  • 部屋の中(専有部分)の修繕費が見落とされやすい理由
  • 給湯器、浴室、キッチンなど、項目ごとの交換時期と費用の目安
  • 30年間の専有部分の修繕費と、費用がかさむ時期
  • 専有部分の修繕費を、購入時の資金計画に組み込む方法

 

結論:自分が使う専有部分は、修繕積立金の対象外

「毎月、修繕積立金を払っているから、建物の修繕は安心」と思っていないでしょうか。

修繕積立金は、マンションの所有者全員で共有している「共用部分」を修繕するための積み立てです。

そのため自分の住戸の中、つまり「専有部分」の修繕には使えません。

区分 主な部分 修繕費を出すのは
共用部分 外壁、屋上、廊下、階段、エレベーター、エントランス、建物全体の配管(縦管) 管理組合(修繕積立金)
専有部分 室内の壁紙や床、キッチン、浴室、トイレ、洗面台、給湯器、室内の配管(枝管) 各住戸の所有者
共用部分だが専用で使う部分 バルコニー、窓サッシ、玄関ドア 原則は管理組合。日常の手入れは所有者

※どこまでが専有部分かは、マンションごとの管理規約で定められています。

 

給湯器が壊れても、浴室が古くなっても、費用は自分で払います。しかも、賃貸のように貸主が直してくれるわけではありません。

このことは是非とも知っておいた方がいいでしょう。

 

なぜ専有部分の修繕費は見落とされるのか

修繕積立金の値上げについては、知っている人が増えてきました。

一方で、専有部分の修繕費を把握している人は、驚くほど少ないのが実情です。

住宅購入の資金計画でも、見落とされていることが少なくありません。

理由は主に4つあります。

 

資金計画書に載っていない

マンションの販売時に示される資金計画は、住宅ローンの返済額、管理費、修繕積立金で構成されるのが一般的です。

専有部分の修繕費は、毎月決まって払うものではないため、計画に入っていないことがほとんどです。

 

「修繕積立金ですべて直せる」という思い込み

「修繕」という言葉が付いているため、建物のどこでも修繕積立金で直せると考えてしまいがちです。これが原因で誤解してる人が多いようです。

 

新築から10年ほどは、ほとんど壊れない

新築マンションでは、最初の10年ほどは設備がほとんど故障しません。

費用がかからない期間が長いため、将来の出費を実感しにくくなります。

 

賃貸の感覚が残っている

賃貸住宅では、給湯器やエアコンなど備え付けの設備が壊れたら、貸主が直すのが基本です。

賃貸から購入に移った人ほど、自分で払う感覚を持ちにくくなります。

 

専有部分の主な修繕と費用の目安

70㎡・3LDKのマンションで、30年間に必要になる主な修繕と費用の目安です。

項目 交換の目安 1回の費用 30年間の回数 30年間の合計
給湯器 10〜15年 15万〜30万円 2回 30万〜60万円
エアコン(3台) 10〜15年 30万〜60万円 2回 60万〜120万円
壁紙(全面) 10〜15年 40万〜50万円 2回 80万〜100万円
床(フローリング) 20〜30年 70万〜90万円 1回 70万〜90万円
トイレ 15〜25年 15万〜30万円 1回 15万〜30万円
洗面台 15〜25年 15万〜30万円 1回 15万〜30万円
浴室(ユニットバス) 20〜25年 70万〜150万円 1回 70万〜150万円
キッチン 20〜25年 70万〜150万円 1回 70万〜150万円
合計       410万〜730万円

※費用の下限は標準的なグレードの目安です。設備のグレードや工事の範囲によっても大きく異なります。

 

30年間で約410万〜730万円、月あたりに直すと約1.1万〜2.0万円です。

中間をとって、月1.5万円程度を見込んでおく必要があります。

 

どこまで手を入れるかで、金額は次のように変わります。

修繕の範囲 30年間の目安
水回り(浴室、キッチン、トイレ、洗面台)と給湯器の交換のみ 約200万〜420万円
壁紙と床も張り替える 約350万〜610万円
エアコンの買い替えも含める 約410万〜730万円

最低限、壊れたものを交換するだけでも、200万円以上はかかると考えておくのが正解です。

 

費用がかさむ時期は2回ある

専有部分の修繕費は、毎年少しずつかかるわけではありません。集中する時期が2回あります。

時期 主な修繕 費用の目安
10〜15年目 給湯器、エアコン、壁紙 約100万〜150万円
20〜25年目 浴室、キッチン、トイレ、洗面台、床。2回目の給湯器とエアコン 約300万〜600万円

特に重いのが20〜25年目です。水回りの設備が一斉に寿命を迎えます。

 

この時期は、マンション全体でも2回目の大規模修繕に向けて、修繕積立金が上がりやすい時期と重なります。

子どもの大学進学と重なる家庭も多いでしょう。共用部分の修繕積立金の値上げと、専有部分の修繕費、教育費が同時に来ると、家計は一気に苦しくなります。

 

さらに築30〜40年を超えると、室内の配管を含めた全面的なリフォームが必要になることがあります。

70㎡で700万〜1,300万円ほどかかる工事です。

 

配管は要注意|共用部分と専有部分の境目

専有部分の修繕の中で、最も注意が必要なのが配管です。

マンションの配管は、建物全体を縦に貫く縦管と、各住戸の中を通る枝管に分かれます。

一般的には、縦管は共用部分、枝管は専有部分として扱われます。

 

規約によっては、修繕積立金から出せることもある

枝管の交換費用は、原則として各住戸の所有者が負担します。

ただし、国の標準管理規約のコメントでは、共用部分の配管と専有部分の配管をまとめて取り替えたほうが安くなる場合には、一体で工事を行うことも考えられるとしています。

その場合、長期修繕計画に記載し、費用を修繕積立金から出すことを規約で定めておく必要があります。

 

規約で認められても、一括工事はなかなか進まない

専有部分の配管を修繕積立金で一括して取り替えることができても、実際にはなかなか進みません。

主な理由は3つあります。

 

1. すでに自費で工事した住民との不公平

数年前に自分の費用で浴室や配管を新しくした住民からすれば、他の住戸の配管代を修繕積立金から出すことに納得しにくいでしょう。国の標準管理規約のコメントでも、先に工事をした所有者への補償をどうするか、十分に検討するよう求めています。

 

2. 部屋の中に工事が入る負担

専有部分の配管工事では、作業員が室内に入り、床や壁の一部を壊して元に戻します。管理規約では、管理組合は必要な範囲で専有部分への立ち入りを求めることができ、所有者は正当な理由なく拒めないとされています。それでも、在宅の調整や生活への影響が大きく、全戸の工事をそろえるのは簡単ではありません。

 

3. 規約の変更には高いハードルがある

修繕積立金を専有部分の配管に使うには、管理規約を変更する必要があります。規約の変更は、区分所有者と議決権の各過半数が出席した総会で、出席者の4分の3以上の賛成が必要です(2026年4月施行の改正区分所有法による)。改正前より通しやすくはなりましたが、反対の声が強いと成立しません。

 

そのため、購入する側としては、「いずれ管理組合が一括で直してくれる」と期待せず、自分の住戸の配管は自分で更新する前提で資金計画を立てておくのが安全です。

中古マンションを検討する場合は、専有部分の配管が更新済みかどうか、管理組合が一括工事を検討しているかどうかを、総会の議事録や管理会社への確認で調べておきましょう。

 

漏水すると、下の階への賠償も自分で負う

専有部分の配管から水が漏れて下の階に被害が出た場合、原則として、その住戸の所有者が賠償責任を負います。

古い配管を放置するのは危険です。火災保険に個人賠償責任の補償を付けておくと、こうした事故に備えられるかもしれません。

 

中古マンションでは、購入直後に費用がかかることも

中古マンションを買う場合は、前の所有者がいつ、どこをリフォームしたか知っておくと安心です。

築20年前後でリフォームの履歴がない物件は、購入後すぐに水回りの交換が必要になる可能性があります。

物件価格が安く見えても、リフォーム費用を加えると、割高になることもあります。

 

購入前にリフォームが必要と分かっている場合は、物件価格とリフォーム費用をまとめて借りられる「リフォーム一体型の住宅ローン」も選択肢になります。

 

リフォームには管理組合のルールがある

専有部分のリフォームは自分の費用で行いますが、自由に工事できるわけではありません。

多くのマンションでは、管理規約や使用細則で次のようなルールが定められています。

・工事の前に、管理組合への届け出や承認が必要
・床材は、決められた遮音性能を満たすものを使う
・工事できる曜日や時間帯が決まっている
・窓サッシや玄関ドアは共用部分のため、原則として個人では交換できない

 

こうした制約によって、希望どおりの工事ができなかったり、費用が上がったりすることがあります。

リフォームを前提に購入する場合は、管理規約を事前に確認しておきましょう。

 

専有部分の修繕費を、資金計画に組み込む方法

自分専用の修繕積立金を毎月積み立てる

最も確実なのは、管理組合に払う修繕積立金とは別に、自分の住戸のための修繕費を毎月積み立てておくことです。

目安は月1万〜1.5万円ほどでよいでしょう。

月1.5万円を積み立てれば、12年で216万円、30年で540万円になります。

10〜15年目の給湯器やエアコンの交換、20〜25年目の水回りの交換を、この積み立てでまかなえます。

インフレ時代は資産が目減りするので、私は投資に回して備えてます。

 

毎月の住居費を「本当の金額」で見積もる

購入時の資金計画は、次のすべてを含めた金額で考えておくとリスクへの備えになります。

項目 資金計画書によく載っている 見込んでおくべき
住宅ローンの返済 ○ ○
管理費 ○ ○
修繕積立金 購入時の金額 将来の値上げを含めた平均額
専有部分の修繕費 ― 月1万〜1.5万円
駐車場代 △ ○
固定資産税・火災保険 △ ○

購入時の資金計画書の金額と比べると、毎月の住居費は2万〜3万円ほど高くなるのが普通です。

 

「資産はあるのに、現金が足りない」を防ぐ

マンションを買うと、住まいという資産は手に入ります。

しかし、専有部分の修繕費を見込まずに手元の現金を使い切ってしまうと、給湯器が壊れたときや水回りの交換時期に、まとまったお金を用意できなくなります。

 

資産はあるのに、毎月の家計に余裕がないことは多くの家計に当てはまります。

こうした状態を防ぐには、購入時に頭金を入れすぎず、修繕のための現金を手元に残しておくことも大切です。

 

よくある質問

給湯器は共用部分ですか、専有部分ですか

一般的には専有部分として扱われ、交換費用は所有者の負担です。ただし、マンションによっては管理組合が一括して交換する場合もあります。管理規約で確認してください。

 

窓サッシを断熱性の高いものに交換したいのですが、自分でできますか

窓サッシは共用部分のため、原則として個人の判断では交換できません。ただし、管理規約で、所有者の費用負担で交換できる場合を定めているマンションもあります。まずは管理組合に相談してください。

 

設備の故障は、火災保険で直せますか

経年劣化による故障は、火災保険の対象外とされています。給湯器やエアコンの寿命による交換は、自分の費用で行うことになります。一方、配管からの突発的な漏水や、落雷による故障などは、補償の対象になる場合があります。

 

まとめ

  • 修繕積立金で直せるのは共用部分だけ。部屋の中(専有部分)の修繕費は、所有者が自分で払う
  • 専有部分の修繕費は、30年間で約410万〜730万円。月あたり1万〜2万円が目安
  • 費用がかさむのは、10〜15年目と20〜25年目。特に20〜25年目は、水回りの交換と修繕積立金の値上げ、教育費が重なりやすい
  • 室内の配管は原則として所有者の負担。ただし、規約によっては修繕積立金から出せる場合もある
  • 購入時の資金計画には、管理組合への修繕積立金とは別に、自分の住戸の修繕費を月1万〜1.5万円見込んでおく

 

マンションの住居費は、住宅ローンと管理費、修繕積立金だけではありません。

部屋の中の修繕費まで含めて、無理のない資金計画を立てることが大切です。

 

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※本記事の費用は一般的な目安です。実際の金額は、物件の広さ、設備のグレード、工事の範囲によって異なります。

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