「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズが、2018年4月に民事再生法を申請(後に破産)し、経営破綻しました。
このことで当分の間は銀行融資は厳しくなり、不動産投資市場は冷え込むと見込まれています。
被害を受けた投資家は700人以上、物件数は1,200棟以上、ローン総額は1,500億円以上ともいわれています。
この事件は、サブリース契約に潜むリスクを、社会に広く知らしめることになりました。
この記事から分かること
- サブリースの仕組みとメリット・デメリット
- かぼちゃの馬車事件で何が起きたのか
- スルガ銀行の不正融資と、その後の解決
- サブリース契約で気をつけるべきこと
サブリースについて

サブリースというのは、サブリース業者が投資物件を一括で借り上げ、オーナーに対して家賃の満額の8割~9割を保証するといった契約です。
普通の賃貸借と違うのは、サブリースの場合は借主であるサブリース業者が部屋の入居者にまた貸し(転貸)することです。
サブリースでは、オーナーは賃貸経営を業者に丸投げすることになり、業者はオーナーの代わりに賃貸経営を行います。
サブリースのメリットは、空室に関係なく家賃収入が確保できることです。
また、投資物件の空室募集や維持管理を業者が行ってくれるので、オーナーは手を煩わすことがありません。
デメリットは、保証した家賃が将来も保証したものではないため、家賃が減額された場合に収支計画がきついと投資の継続が困難になります。
また、賃貸経営を丸投げするといっても、ランニングコストは他の賃貸経営と同様、オーナーが負担します。
サーブリースが特に問題となるのは、オーナーからのサブリース契約の解約が困難という点です。
オーナーからの解約は困難ですが、一方で業者からの解約は容易にできるので、ある日突然解約の知らせが届くことも考えられます。
かぼちゃの馬車事件で起きたこと

かぼちゃの馬車を経営するスマートデイズは、「30年間家賃保証」「利回り8%」といった好条件を掲げ、女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を販売していました。
オーナーは、提携するスルガ銀行から1棟1億円を超える融資を受けて購入しました。
シェアハウスというのは、一棟の建物を複数の人で共同使用する賃貸契約です。
リビングやトイレ・風呂などは共有して使いますが、自分の個室はあるので一定のプライベートは保たれます。
交流スペースとプライベートスペースが確保されてるので、若い人の間で人気になりましたが、実はトラブルも多く、中には殺人事件にまで発展しているケースもあります。
2017年11月、スマートデイズは、オーナーに対して保突如障賃料額の減額を通知しました。
このことがきっかけとなり、次々に問題が明らかとなっていくことになります。
翌2018年2月頃から、ローンを申し込む際にオーナーの金融資産や契約書類を改ざんしたこと、レントロールの虚偽報告を行っていたことが次々と明るみに出ました。
そして、同年4月にスマートデイズが民事再生法の適用申請をしたため、多くのオーナーが破産状態になりました。
「入居率9割以上・家賃保証」がうたい文句でしたが、実際の入居率は40%程度にとどまっていました。
相場より割高な家賃で、共用部分も狭く、入居者のニーズを満たせていなかったのです。
明らかとなったスマートデイズの書類の改ざん

その後の調査の結果、スマートデイズの他にスルガ銀行と不動産仲介業者が組んでいたことも明らかになりました。
入居率9割以上、家賃保証をうたい文句に売上を伸ばすことに成功しましたが、実際の入居率は半分以下、家賃保証も減額されることになります。
ローンの手続きでは、一般的にオーナーと銀行の間に業者が入って取りまとめを行います。
そして、借り入れの審査では、オーナーの金融資産が分かる資料や収入が分かる資料が必要なので、オーナーは業者に通帳や源泉徴収票を渡すことになります。
ところがこの時に業者から銀行に提出された書類は、事実と違ったものだったようです。
買主から提出された書類を業者が改ざんしたり、偽造して実際よりよく見せていたそうです。
この書類の改ざんや偽造によって、本来借り入れ能力(借入余力)のない人にまで多額の融資が行われました。
また、いわゆる「ふかし」が行われていたことも分かりました。
ふかしというのは、契約書を偽造して銀行から必要以上に融資を引っ張ることです。
例えば、1億円の物件を購入する場合に、銀行に提出する書類の物件価格を1億1千万円として提出し、余分な1千万円は諸費用にあてます。
昔の新築マンションの販売業者では、お客さんを逃がさないためにどこの業者も行っていたといわれています。
物件が割高だった理由
スマートデイズは、建築費の50%という法外なキックバックを施工会社から受け取っていました(通常は施工費の2〜3%)。
そのため物件価格は1棟1億円超に膨らみましたが、事件後の調査では、物件の本来価値は約6,000万円と算出されています。
家賃保証は、このキックバックで得た資金から捻出されていました。
最初から無謀だった投資計画

業者からオーナーに提案された投資計画は、かなり無謀な計画だったようです。
- 相場より高い家賃収入を前提にした計画
- 20年間家賃が下がらず満室の収入計画
- 賃貸経営を維持していくうえで必要なランニングコスト(共用部分の維持費、管理委託手数料など)が計上されていない
- 一般的に5年~10年サイクルで必要な修繕費用や10年〜20年ごとに行われる大規模修繕も計上されていない
空室が続いたり、周りの相場と比べて不当に家賃が高ければ、家賃が減額される可能性があります。
必要な費用が考慮されていないので、計画上のキャッシュフローと実際のキャッシュフローとの間に大きな乖離が生じる可能性は高いです。
レバレッジがかかっているので、負担に転じたときは資産が加速的に流出していく可能性もあります。
サブリース契約の解約が難しい理由

サブリース契約は、オーナーが自由に家賃設定を行えないので、解約をめぐってトラブルになっている話をよく聞きます。
借地借家法は、借主が強く保護される制度なので、オーナーからの解約は困難です。
オーナーからの解約には、正当事由が求められます。
オーナーからの解約が正当かどうかをめぐって、たびたび裁判が起きていますが、この正当事由が認められることはほとんどありません。
業者が解約に応じる場合も、違約金が発生するのが一般的です。
違約金として満室賃料の半年分を請求されたため、解約をあきらめるオーナーもいます。
破産をすると他の資産も失う

自己破産をすれば借金はなくなります。一方で自己破産にはデメリットがあります。
- 自己破産するには「保有している全財産を売却しても借金がなくならない」状態であることが必要のため、自宅や車など他の財産も失う。
- クレジットカードが使えなくなる。
- 士業などの一定の職業に就けなくなる。
自己破産の免責許可決定があると官報にのりますが、官報なんて見る人はごく一部の人だけなので、周りに知られる可能性は高くありません。
ただし、裁判所に配当要求終期が公告されると、不動産業者が自宅に訪ねてくる可能性はあります。そこから自己破産が知られることがあります。
その後の展開と、法整備
この事件は「スルガショック」として金融業界に波及しました。
2020年3月、被害弁護団とスルガ銀行は民事調停で合意し、オーナーが物件(土地・建物)を手放せば残債を帳消しにするという、異例の解決に至りました。
スルガ銀行が多額の債務を引き受けるこの結末は、「令和の徳政令」とも呼ばれました。
また、こうした被害の再発を防ぐため、法整備も進みました。
サブリース新法(賃貸住宅管理業法)
2020年12月に一部施行され、2021年6月に全面施行されました。
誇大広告の禁止、不当勧誘の禁止、契約前の重要事項説明・書面交付の義務化などが定められ、違反には罰則もあります。「一切下がりません」といった説明は、この法律で禁じられています。
さいごに
日本では人口減少時代に突入しており、空室率が増加しています。
にもかかわらず、投資物件は供給過多となっています。
サブリースでは賃貸経営を業者に丸投げするので、現状の問題を把握しにくくなります。
普通の賃貸物件と比べて、サブリース物件だけが優れていることはありませんので、実際の空室状況はどこも似たようなものです。
スマートデイズは賃料に加えて入居者に仕事を紹介して、人材紹介料も入るとうたってオーナーを募集したとも言われています。
労働業界に多少詳しい人がこの話を聞けば、どう考えてもビジネスモデルとして成り立たないことが分かります。
最近は神奈川県内でも勝ちエリアと負けエリアの差が明らかになってきました。
特に区分所有のマンション投資では、横浜市内間でもエリアで格差が生じてきました。
特に地方では周りとの差別化が図れなければ今後も厳しい状況は続くでしょう。
建物は時間の経過とともに劣化していきますので、それにつられて家賃も下がるのが一般的です。
サブリース契約は借地借家法の盲点を突いた不動産業者に有利な契約です。
サブリース契約は一見するとリスクがないように見えますが、実はリスクが多い契約なのです。
- サブリース新法(2020)→誇大広告禁止・不当勧誘の禁止・重要事項説明
物件と借入は、うまい話に飛びつくのではなく、自分で採算を検証し、納得したうえで判断することが大切です。

