今は同じ職場で正社員やパート、契約社員といった様々な雇用形態の労働者が一緒に働くことは当たり前となりました。
同じ仕事をしていても、以前は雇用形態で賃金に差が出ることは一般的でしたが、同一労働同一賃金の導入によって説明できない待遇差は禁止されることになります。
というより令和2年4月から労働者は同一労働同一賃金の対象となってます。
パートタイムや派遣労働者、アルバイトといった正社員以外で働いている人は特に知っておくと役に立つかもしれません。
といっても中小企業は令和3年4月から対象となるので、その点には注意が必要です。
立場が弱い非正規労働者
一般的にアルバイトや派遣労働者といった労働者は、正社員の人と比べると立場が弱いとされていますが、泣き寝入りせずに自分の権利を訴えることも時には必要です。
たとえば、現在は新型コロナウィルスの感染が拡大していますが、前触れもなく「コロナの影響で明日から来なくていい」といわれてトラブルに発展するケースが増えているようです。
会社の経営が危機的な状況であったとしても、解雇が認められるためには、合理的な理由および社会通念上相当であることが必要です。つまり、事前の予告なく「来なくていい」は認められないということです。
たとえ解雇される場合でも、法律では30日以上前に解雇予告をしなければならず、解雇するのであれば会社は労働者に30日分の解雇予告手当の支払いをしなければなりません。
今は働き方が多様化しており、現在は男性で2割以上、女性で過半数が非正規で働いています。
同じ仕事をしてるのに、社員か否かで賃金に差があるのを納得する人は少ないと思います。非正規であれば特に。
ただでさえ日本は世界に取り残されつつあるのに、働き方の多様性を認めても待遇に差があるようでは世界との差は開くばかりです。
正規社員か非正規社員かによって差があるのは以前から問題視されてましたが、ようやく政府も改正に動きだしたようです。
正規社員と非正規社員との不合理な待遇差を設けることは禁止
正規社員と非正規社員との間に、基本給や賞与といった待遇で不合理な差を設けることは禁止されます。
といっても同じ会社で同じ業務内容かどうかが問題なわけで、会社が違えば同じ業務でも賃金が違うのは、まあ普通です。
同一労働同一賃金の問題となるのは、会社で業務内容も同じなのに正規社員とそれ以外のパートやアルバイト等で待遇に差がある場合です。
同じ時間に同一業務をしているのに、正規社員だけに賞与が支払われ、賃金も倍というのは非正規社員の立場なら納得できませんよね。
こういった不合理な待遇差が禁止されます。
ちなみに差別的かどうかのもととなる業務の内容については、主な業務や責任、職種内容といったことから総合的、実質的に判断されるとされています。
待遇の内容や理由に納得がいかない労働者は説明を求めることができる
正規社員でないという理由だけで待遇差が設けられているのは、非正規社員の立場なら納得がいかないでしょう。
この場合に非正規労働者から待遇について説明を求められたのであれば、会社は正社員との待遇差の内容や理由についての説明が必要(義務)です。
同一労働同一賃金の実現のために、2020年4月からパートタイム・有期雇用労働法が施行されますが、雇用形態で格差を設けることは不合理という流れは以前からありました。
以前は、同じ業務を同じ時間労働していても、正規社員とそれ以外の労働者とで基本給に違いがあるのは当たり前で、正規社員だけ手当の対象という会社が多数でした。
ところが近年では、日本郵便事件やハマキョウレックス事件などで、正規社員だけに手当の支給を対象としたり、病気休暇があることは不合理といった判決がされてます。
つまり、同一労働同一賃金の流れは今に始まったものではなく、必然的なものだったのです。
もしパートタイム労働者や契約社員(有期雇用労働者)であって、正規社員との待遇について不明な点があったり不満があるのであれば、会社に対して説明を求めることができます。
また、労働者が待遇差について説明を求めたとしても、会社は労働者に不利益な扱いをすることは禁止されてます。
労働者と会社とのトラブルに無料相談が利用できるようになる
同一労働同一賃金の始まりを機に裁判外紛争解決手続(行政ADR)が整備されることになりました。
裁判外紛争解決手続きは、裁判によらずに解決を図る制度です。
これにより労働者と事業者との間のトラブルについて、労働局の無料相談を利用できるようになりました。
令和2年から対象者が拡大され、パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者も対象となっています。
主な解決方法としては、
・労働局長による助言・指導
・紛争調整委員会によるあっせん
があります。
労働局長による助言・指導は、労働条件で紛争してる場合に労働者と事業者に対して問題を指摘し、解決の方向を示すことで紛争当事者の自主的解決を促進するといった方法です。
紛争調整委員会によるあっせんは、紛争当事者の調整および話し合いを促進して解決する方法です。
あっせんの手続きは非公開とされ、当事者双方の主張を確かめたうえであっせん案が提示されることになります。
原則として1回の期日であっせんが行われるので裁判のように時間がかからないのはメリットです。
ちなみに紛争調整委員には、弁護士、大学教授、社会保険労務士といった労働関連の専門家がなります。
おわりに
同一労働同一賃金が始まっても実はこれ自体に罰則はありませんが、手当などをめぐって損害賠償が発生しているケースもあります。
労働関係に限らず、日本の法律は少し遅れてるようです。