日本と欧米とでは住まいに対する価値観は異なるといわれています。
日本ではスクラップビルドが基本で建築後30年も経つと家の価値はほとんどないものとして評価されますが、欧米では30年程度ではまだ新しく、修繕して100年以上もたせることも普通のようです。
これは不動産市場とも大きく関わっており、日本は人口減少時代を迎え、住宅が余ってるにもかかわらず毎年新築が建てられてますが、欧米では中古市場が発達しています。
古くなったから壊して建てるではあまりよろしくないということで日本で始まったのがインスペクションです。インスペクションの実施は一つの安心材料になります。
戦後の日本で住宅不足の時代がありましたが、1980年以降の日本でも普通の会社員ではなかなか家が買えないという時代があったようです。
それを反映したのが「それでも家を買いました」というドラマで、このドラマは1991年のものですが何年か前にも放送されてました。
舞台はバブル時代、社宅に住む山村雄介(三上博史)と浩子(田中美佐子)の夫婦が、マイホーム取得のために必死になり、最後に神奈川の山奥の分譲住宅を手に入れるというだけの物語ですが、当時の時代を知ることができて面白いです。
今では考えられませんが、当時は住宅の倍率が224倍、500倍といったことは普通で、通勤に便利な都心エリアなんて高すぎて手が出ません。
山村夫妻は数年探してもマイホームを手に入れることはできず、最終的に通勤に2時間以上かかる郊外の物件を購入します。
とにかく家を買うことが優先される、そんな時代だったようです。
ドラマもそうですが、時代とともに不動産に対する人々の価値観がだいぶ違うのが興味深いです。
今から30年以上前のバブル期
私が社会に出た頃にはバブルは崩壊して既に就職氷河期でしたので、バブル時代というものは話で聞いただけです。
金利も今のような低金利ではなく、ひどい時には8%にも達したことがあったと聞いてます。
不動産はどんどん高くなっていき、当時の会社員は今買わないと買えなくなってしまうと周りに言われ、それからは毎週のように住宅見学会に行ったそうです。
バブル期に家を購入した世代は、金利が高くても物価が上昇し続けていたので、給料もそれに伴って上がっていきました。
インフレではお金の価値が低下するので、借金の負担は実質的に軽くなります。対して不動産はインフレに強いので価値は上昇していきます。
今から30年以上前に住宅を購入した世代が若いうちにマイホームを購入した方がいいと勧めるのは、こういったことがあるからです。
住宅を購入したのがバブルの前と後かで、不動産に対する価値観が天と地ほど違うのは当然です。
失われた30年をきっかけに変わる不動産の価値観
バブルが崩壊して30年、経済はずっと低迷し続け、この時代は失われた30年と呼ばれています。
不動産価格は下がり続け、不動産価格以上の住宅ローンが残って苦しんでる、そんな人をたくさん見てきました。
少子高齢化が騒がれるようになったのもこの間だったと思います。
少子高齢化で小中学校の統廃合は進み、横浜市でも統廃合が起こってニュースになりました。
特に若葉台、左近山、さわの里、並木、上郷、庄戸、野庭、瀬谷、霧が丘、飯田北といった市の郊外を中心に行われました。
平均賃金も上がらず、非正規雇用で働かざるを得ない人が増えました。
私が社会人になって働いた職場は正規雇用でしたが、労働基準法をよく分かってないのか固定給さえ支払ってればいくら働かせてもいいと思ってるような会社でした。
毎日8時過ぎに出社して会社を出るのは夜11時なのに、割増賃金はおろか残業分の時給すら支払われたことはありません。
今では考えられない時代でした。
不動産市場も低迷気味で、横浜市内でも3000万円を切る建売が出てくるようになりました。
住宅ローンの金利は2.375%とか2.475%でしたが、実質的な金利は下がり続け、20年前頃に1.5%程度まで下がり、10年くらい前には1%を下回ってました。
また、分譲マンションの中には老朽化が進んでいるのに建て替えができず、空室が増え、大きく資産価値を下げるものが出てきました。
新築不動産の供給は減りましたが、人口減少時代に突入して空き家が取りざたされるようにもなりました。
地方の不動産の中には、売ろうにも売れず、それどころかただでも処分できない物件が出てきました。
30年以上前は、不動産は保有していれば値上がりするものでしたが、バブルが崩壊したことで資産価値のあるもの、利便性の高い不動産が選ばれるようになりました。
人生百年時代が騒がれたことで、不動産を購入した後の維持費も注目されるようになりました。
不動産を含めて資産は将来のバランスシートを念頭に検討する(将来資産価値と負債はどうなってるか)のがよさそうです。
利便性が重視される共働きの時代
初めて不動産会社に就職した頃、上司に住宅すごろくという言葉を教えてもらいました。
これは子供の頃から亡くなるまでの住宅の変遷をすごろくに例えたものです。
社会人になりたての頃は賃貸に住み、その後分譲マンションを購入し、最後は一戸建てを購入するといった感じだったと思いますが、一戸建て住宅というのはそれだけ成功者の証みたいなものだったようです。
バブル時代に営業だった上司なので、家を買えるだけ凄いみたいなこともよく聞かされました。
奥さんは専業主婦が一般的で、購入できるかは旦那さんの年収次第だったからです。
ところが今は共働き夫婦が当たり前の時代になり、専業主婦は過去のものとなっています。
夫婦合わせて年収が高い共働き夫婦に使われる言葉がパワーカップルです。
共働きだと夫婦どちらにも仕事があるので、交通の便が悪い閑静な一戸建てより、狭くても交通の便が良いマンションが人気になりました。
また、タワーマンションの供給が増えました。
タワーマンションが急激に増えたおかげで都市部に人が集まり、郊外は人が減少傾向にあります。
外国人の不動産購入者も増えましたが、日本語が通じなかったり、連絡が取れなかったりでマンション総会の運営が滞ってるマンションも出てきました。
最近はタワーマンションの修繕費が高いことも話題になりました。
コロナで少しだけ変わった家に対する価値観
新型コロナウィルスでリモートが増え、郊外の一戸建てに引越す人が出てきました。
今はマンションが高騰し続けてるので、横浜や横須賀といった郊外の戸建てに引越す人も出てきました。
コロナの制限が解除され、再び会社に通勤するようになった人もいますが、今もリモートを実施してる会社も多いです。
リモートをしている人の中には、以前は交通の便だけを重視していたのが、住むだけでなく、仕事用の部屋を欲しがったり、日当たりを重視する等住宅に求めるものが変化した人達がいます。
人手不足も深刻化し、買い手市場から売り手市場へシフトしました。外国人の労働者もだいぶ増え、日本人より外国人のほうが多いエリアも出てきました。
条件が良くないと人を募集しても全然採用できないという話も聞きます。
おわり
ちなみに神奈川県のデータでは、持家率は79.4%、共働き世帯は46.3%
年間賃金は男性で554万円、女性で397万円でした。
参考
「厚生労働省 賃金構造基本統計調査」
「総務省 就業構造基本調査」
「賃金事情 2023年1月5日・20日号 36頁より」
失われた30年といわれるこの間、政治家たちは何をやっていたのでしょう。
日本の国会議員は手当が多いので報酬は世界一高水準といわれ、人口当たりの議員の数はアメリカの4倍近くになるそうです。
日本の平均賃金は下がり続けてるのだから、いつまで経っても結果を出せない議員の報酬は平均賃金でいいと思います。
高い報酬が欲しければちゃんと働けばいいだけです。