国民の老後生活を支える年金制度ですが、この制度が国民に知られているとはいい難く、実際に年金を受け取っている人でもよく分かっていないことが多いです。
年金制度といえば、普通は国民年金と厚生年金のことを指しますが、分かりにくいのか二つの制度を混同している人も多いです。
厚生年金は会社員や公務員でないと加入できないので、自営業や専業主婦の期間が長いと年金額が微々たるものだったり、人によっては出ないこともあります。
日本は国民皆年金をとっていると言われますが、この土台となる年金が基礎年金といわれる国民年金です。
そこで今回は、原則全ての国民が受け取れる国民年金について触れてみようと思います。
ほとんどの人が国民年金の被保険者
国民年金では、国民の老齢、障害又は死亡について、生活の安定が損なわれないように、共同連帯によって防止するとされています。
国民年金保険法
第一条 国民年金制度は、日本国憲法第二十五条第二項に規定する理念に基き、老齢、障害又は死亡によつて国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によつて防止し、もつて健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。
第二条 国民年金は、前条の目的を達成するため、国民の老齢、障害又は死亡に関して必要な給付を行うものとする。
日本では、国民年金を基礎年金と位置づけ、国民の全てが国民年金を原則受け取れる国民皆年金制度を採っています。
国民年金を将来受け取るには、国民年金の被保険者の期間が10年以上必要ですが、この被保険者には第1号被保険者から第3号被保険者までがあります。
第1号被保険者は自営業者や無職
国民年金の第1号被保険者になるのは、日本に住んでいる20歳以上60歳未満であって、国民年金の第2号被保険者と第3号被保険者に該当しない人です。
具体的にどのような人がなるかというと、自営業者の人や学生、無職の人がこの第1号被保険者になります。
・日本国内に住所を有すること
・20歳以上60歳未満であること
・厚生年金保険法の老齢給付を受けることができないこと
・第2号被保険者又は第3号被保険者でないこと
国民年金は、原則強制加入なので任意に選択できるものではありません。当然、保険料も支払うことになりますが、実際は未納の人は多いです。
ちなみにですが、学生や無職の人については、保険料の支払いが困難な人も多いので、保険料の免除制度があります。
免除期間は被保険者期間とされ、年金額にも反映されたりします。生活保護や一定以上の障害がある人も納付期間と扱われます。
第2号被保険者は会社員等
第2号被保険者は、会社員や公務員等の厚生年金の被保険者になってる人がなります。
第2号被保険者には、年齢要件がありませんが、老齢基礎年金や老齢厚生年金の受給権がある場合はなれません。
・厚生年金保険の被保険者であること
・老齢年金の受給権を有する65歳以上のものでないこと
第3号被保険者
第3号被保険者になれるのは、第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者です。
第1号被保険者と違って国内居住要件がありませんが、収入が一定以上になると別の被保険者(扶養から外れる)になることがあります。
配偶者である第2号被保険者が、会社を辞めたり、年金を受け取れるようになった場合は、第3号被保険者ではなくなります。この場合は第1号被保険者となって手続きが必要ですが、このことを知らない人も多いです。
・20歳以上60歳未満であること
・第2号被保険者の配偶者であって、第2号被保険者の収入により生計を維持されていること
国民年金の給付にはどんなものがあるか
国民年金法上に規定されている給付の種類の代表的なものには、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金があります。
他にも第1号被保険者に対する独自の給付として、付加年金、寡婦年金、死亡一時金といったものがあります。
給付ではありませんが、法附則上の給付にも脱退一時金といったものもあります。
老齢基礎年金
老齢基礎年金は、すべての国民に共通する老齢給付であって、要件を満たしている65歳以上の人に支給されます。
老齢基礎年金の満額 780,900円×改定率
改定率は名目手取り賃金や物価の変動によって改定されます。
多くの人の老後の収入の基礎となるのがこの老齢基礎年金です。
ライフプランを考えるうえでも欠かせないものです。
障害基礎年金
障害等級の1級か2級に該当する障害状態のときに支給されるのが障害基礎年金です。
障害基礎年金の年金額は、被保険者期間に関係なく、満額の老齢基礎年金と同じ金額が支給されます。
さらに1級の場合は1.25倍になります。
1級 780,900円×改定率×1.25
2級 780,900円×改定率
さらに生計維持関係にある子がいると加算されることもあります。
遺族基礎年金
遺族基礎年金は、死亡した者の配偶者又は子に対して支給されます。
基礎年金額 780,900円×改定率
子の数によっても遺族基礎年金額は異なり、子が多いほど加算されます。
子のある配偶者又は子を対象としているため、子の養育費的側面があります。
支給対象である子とは、18歳到達日以後3月31日までの子のことをいい、子が障害状態に該当した場合は20歳まで延長されます。
付加年金
付加年金は老齢基礎年金の上乗せ給付として支給される年金です。
400円を納めることで年金額が200円増額されます。
200円といっても老齢基礎年金とともに生涯支給されるので、2年で元がとれることになりますから大変有利な年金です。といってもあくまでも名目的な数値ですので、インフレになると微妙です。
自営業者の人は、厚生年金に加入できないので付加年金を検討してもいいかもしれません。
寡婦年金
寡婦年金は、保険料納付済期間と免除期間が25年以上(改正後10年以上)の夫が死亡した場合に婚姻期間が10年以上の妻に対して支給される有期年金です。
妻に対しての年金なので、妻が死んでも夫にはありません。
また、障害基礎年金の裁定を受けていないこと及び老齢基礎年金の支給を受けていないといった要件もあります。
死亡一時金
死亡一時金は、遺族基礎年金の受給要件を満たさない場合に支給されます。
保険料の掛け捨て防止のために、遺族に支給される一時金といわれています。
第1号被保険者として36カ月以上の保険料を納付しており、老齢基礎年金や障害基礎年金の支給を受けたことなないといった要件があります。
おわりに
年金制度を理解することがライフプラン実現に向けた第一歩といえます。
よくいわれる老後2,000万円問題(今は3,000万円問題らしい)は、老後にかかる費用から年金を引いてるので、年金が少ない人は何らかの方法で不足分を補う必要があるからです。
年金は、ライフプランを考えるうえで重要なだけでなく、住宅ローンが適正なのかを判断するうえでも重要な要素です。