不動産の市場を考える場合、そのエリアでの人口の推移を知り、将来の人口動向を見定めておくことが大切です。
そのエリアでの魅力的な自治と今後の展開次第で将来の人口予測は変化することもありますが、基礎として過去の人口推移からある程度将来の人口動向を知ることはできます。
昭和のように人口が増加していた時代は都市部の土地が高騰してしまい、多くのサラリーマンは都市部で住宅が購入できず、郊外が開発されるのを待って住宅を手に入れました。
バブルが崩壊して日本がデフレ時代になった後は、都市中心部の不動産価格が低下し、それまでと変わって郊外から都市部に回帰する流れとなりました。
これには若い世帯の減少も影響してるのはいうまでもありません。
東京圏は好調、地方は不調
不動産市場も需要と供給によって価格が変化することから、需要と供給に影響を及ぼす人口の推移を知っておくことは重要です。
若い世帯の方が不動産を必要とするので人口構成も重要です。ただ、最近は高齢者が利便性の悪い戸建てを売って、駅前のマンションを購入する事例も増えています。
平成20年から日本の人口は減少に転じていますが、これも不動産市場にはマイナス要因です。
ただ、日本全体では人口が減少するといっても、東京、愛知、大阪を中心とした都市圏では現在も人口が増加傾向にあり、不動産市場も値上がり傾向にあります。
反対に過疎が進む地方では、人口の減少に歯止めがかからず、不動産市場の価格も下落傾向にあります。
神奈川県の横須賀市が人口流出の数で2013年に全国1位を記録したのは記憶に新しいですが、隣接する三浦市でも人口減少が問題となっており、神奈川県で唯一の消滅可能都市といわれています。
横須賀市も三浦市もどちらも三浦半島にある都市ですが、どちらの自治体も人口減少に問題を抱え、不動産価格も下落傾向にあり、空き家率も高いです。
横須賀市全体では、10年で土地の1割が下落したといわれており、湘南鷹取といった高級住宅地では20%減と大幅に土地価格が下落しました。
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平成31年神奈川県の地価公示は、横浜・川崎は上昇
国土交通省は、2019年1月1日時点の地価公示を発表しましたが、神奈川県も3月20に県内の地価公示をまとめたものを発表しました。 少子高齢化が進む日本では、土地の価格についても人口減少の ...
横須賀市は東京まで通勤する人も多く、東京を中心とした都市圏内なのにです。
横浜の比較的中心エリアであっても、駅から遠い(坂)ため、なかなか売れない物件もあります。
一方で横須賀市でも利便性の高い場所であれば、すぐに申し込みが入るのをみると、やっぱり立地が重要です。
基本的には、今後も東京、愛知、大阪を中心とする三大都市圏と地方との間で不動産市場は二極化していくものと予想されます。
日本の人口推移
総務省統計局の資料によれば、2010年頃を境に日本の人口が減少していきます。
引用 総務省統計局
上の図は、日本の総人口の将来予測を表したものです。
出生高位、出生中位、出生低位というのは、出生を高く見積もったものが出生高位、低く見積もったものが出生低位で、出生中位が基準となります。
少子化の日本では今後も人口の減少が続き、このままだと2053年頃に1億人を割ると予想されています。
当たり前ですが、人口は死亡数が出生数を上回れば減少していきます。
中には行方不明者や国籍変更による転出入もいますが、今はまだ少数です。
今はまだ死亡数と出生数による人口増減がほとんどなので、この死亡数と出生数のバランスで人口は減少しています。
引用 厚生労働省 人口動態統計
空き家の数は増加
総務省が発表している住宅・土地統計調査によれば、空き家の数は日本全体で約846万戸となっており、地方を中心に空家数は増加傾向にあります。
賃貸用と売却用の住宅が450万戸を超えており、これも人口減少時代を象徴しています。
ちなみに住宅総数に占める空き家率は、過去最高の13.6%です。
土地は価値が減少していくものではありませんが、建物については年々価値が劣化していき、築25年もすれば建物の不動産価値はゼロになるといわれています。
建物の価値はゼロとなれば残るのは土地だけです。
インスペクション制度が始まったばかりですが、こういった中古住宅の取引活性化に向けた取り組みは不動産の資産価値維持のためには必要です。
人口減少に打つ手なしの日本では、将来的にインフレが進んだり、人手不足になると予想できるので、そうなると不動産を維持する費用も高騰するはずです。今後は投資のスキルが生活の明暗を分けるでしょうね。
神奈川の人口推移
神奈川県は人気のエリアも多く、比較的空き家率は低いといわれています。中でも横浜や川崎、湘南エリアは人気です。
しかし、実際は人口減少が続く三浦半島や神奈川県西部だけでなく、横浜市内でも空き家の問題が出ています。
下の図は、市町村ごとの人口増減を分布化したものです。
出生数と死亡数から算出した自然増減と、転出者と転入者を比較した社会増減とによる分布ですが、横須賀市は出生数より死亡数が多く、転出者が転入者よりも多く(出ていく人が多い)なっているので大幅に人口が減少しています。
人口減は不動産価格にも影響を与えるのが一般的ですが、過去の取引事例を調べても横須賀市の不動産価格はここ数年は低下続きです。
引用 神奈川県人口統計調査結果報告平成30年1月~12月
資産価格は将来への期待から増減するといわれてますが、それは不動産も同じです。
人口増減と不動産評価は関連するのが一般的です。
下の図は、神奈川県の2025年までの人口予測ですが、予測では川崎と横浜だけが人口が増加しています。
引用 人口部会報告
日本は人口が減少するだけでなく、老齢人口が増えています。
郊外の一戸建てを売却したお金で駅前のマンションに住む高齢者が増加しているように、今後は郊外の住宅地といった不便なエリアが空き家となって市場に流れる可能性は高いです。
終わりに
東京圏、名古屋圏、関西圏を中心とした人が集まるエリアと過疎化が進む郊外とで二極化しているように、不動産の価格も二極化していくはずです。
特に東京では不動産価格が増加しており、投資目的の不動産取引が活性化しています。
また、日本の不動産は外国人でも制限なく購入できるので、外国人も投資目的で買ってます。
反対に過疎化が進む郊外では、不動産価格は下落傾向にあり、今後も不動産の二極化が進むことが想定されます。
政府が少子高齢化を解決できないので、外国人労働者を増やしていく案が出てますが、整備もせずに安易な政策をするのはリスクです。
「大阪では外国人が購入したマンションから日本人が追い出されてるという話も聞きます。」