分譲マンションでは、建物や設備の性能を新築時と同水準に維持するため、長期修繕計画を定めて定期的に修繕が行われています。
長期修繕計画は、一般的に5年程度毎で見直されますが、修繕積立金の引き上げに所有者の納得が得られなければ、資産価値に影響が出る可能性があります。
現実に管理組合が機能してなかったり、自主管理でうまくいっていないマンションも多いようです。
分譲マンションの管理費や修繕積立金は、建物の資産価値を維持する上で必要な費用ですが滞納する人は少なくありません。
中古マンションを探していると、管理費を滞納しているマンションが売りに出ることがあります。
また、不動産の競売でも、管理費等は滞納されていることがほとんどです。
管理費等が滞納されているマンションを購入した場合は、どうなるのでしょう。
滞納管理費等についての区分所有法の定め
分譲マンションでは、区分所有法という法律によって権利や建物の管理等のルールが定められています。
実際の運営では、個々のマンションの実情に合わせて管理・運営を行う必要があるため、管理規約や使用細則が定められています。
区分所有法が憲法で、管理規約が民法といったところでしょうか。
区分所有法の第8条には、区分所有者の特定承継人の責任が定められています。
ここでいう特定承継人とは、区分所有者から専有部分を買ったり、受贈された(もらった)人をいい、強制執行や競売によって専有部分を承継した人も含まれます。
区分所有法第8条(特定承継人の責任)
前条第1項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。
前条第1項というのは先取特権で担保される債権のことです。
分かりやすくいうと、管理費等を滞納している区分所有者が、自分の専有部分を売却したときは、管理者(管理組合等)は区分所有者と購入した人のどちらにも、滞納している管理費や遅延損害金を請求できるということです。要は売主も買主も滞納管理費の支払い義務があるということです。
ちなみに購入者(買主)が管理費の滞納があったことを知らなかった場合ですが、知らなかったとしても責任は免れないとされています。
区分所有者の滞納管理費を購入者が支払った場合は、購入者(買主)は区分所有者(売主)に請求できます。
購入した人が、さらに別の人にマンションの専有部分を売却したとしたら、いずれの人も滞納管理費等の支払い責任が生ずるとされています。
区分所有者A → 購入して売却したB → Bから購入したC
この場合のCには、AとBが滞納した管理費の支払う義務があります。
滞納管理費等を支払わない定めをしても主張できない
普通は他人が滞納した管理費を支払いたくないはずです。
もし仮に区分所有者と購入者が滞納管理費等の支払い義務を承継しないと契約したとしたらどうなるか。
この契約は当事者間では有効かもしれませんが、管理者(管理組合等)に対しては主張できません。管理者が納得すれば別ですが、法律では支払いを拒否できないことになっています。
つまり、管理者に滞納管理費の支払いを請求された場合は、購入者が管理者に前の所有者が支払うことになってると主張しても、それは認められないということです。
競売で購入した人も、前所有者が滞納していた管理費の支払い義務を承継します。
ちなみに滞納が長期にわたって滞納管理費が高額になる場合は、共同利益に反するとして競売の請求をされる可能性があります。
共同利益に反する場合の競売は、債権の回収を目的としたものではなく、区分所有者でなくすことが目的とされています。
なので、債権額に満たない場合でも競売を行うことができるといった判例があります。
おわりに
まとめ
管理費の滞納がある区分所有マンションを購入した人は、滞納管理費や遅延損害金の支払い責任があります。
以上のことから、マンションの購入では、売主が管理費等を滞納してないか事前に知ることが大事です。
不動産市場
レインズには毎月マーケットウォッチというのがあって、中古やマンション・戸建てといった種別ごとの不動産市場の動向が分かります。
戸建てもマンションも全体的に上昇傾向(契約件数は増えたり減ったり)にありますが、東京や神奈川では特にマンション価格の上昇が目立ちます。
3 月の横浜・川崎市は 55.05 万円/㎡と前年比で 6.9%上昇し、20 年 6 月から 22 ヶ月連続で前年同月を上回った。神奈川県他は 37.18 万円/㎡で前年比プラス 10.1%の 2 ケタ上昇となり、20 年 12 月から 16ヶ月連続で前年同月を上回った。
今回は、購入した区分所有マンションが管理費を滞納していた場合について書きました。
せっかく購入したマンションも、前所有者が滞納費を滞納していたら、購入した人に支払いの責任が発生することになります。
中古マンションの取引では、価格や見た目といった分かりやすいところより、目に見えない部分が重要だったりします。