「うちのマンションは、修繕積立金が平均並みだから大丈夫」
そう考えている方は少なくありません。
しかし、この「平均並み」という安心感には注意が必要です。
修繕積立金が国の目安並みに収まっているマンションの中には、本来必要な水準まで値上げできず、結果として安いまま据え置かれているだけのケースが少なからず含まれています。
今回は、修繕積立金の「平均」を鵜呑みにすることのリスクと、適正額を見極めるポイントを整理します。
この記事から分かること
- 修繕積立金の「平均並み」が必ずしも適正額を意味しない理由
- 国土交通省が示す規模別の修繕積立金の目安と、機械式駐車場の加算ルール
- 積立金が安いまま据え置かれやすい「合意形成不足」のメカニズム
- 国交省が示す2つの指針(均等積立方式・段階増額の上限の考え方)
- 自分のマンションの積立金が適正かどうかを見極めるポイント
国土交通省が示す修繕積立金の目安
国土交通省は「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)で、建物の規模別に修繕積立金の目安を示しています。
| 建物タイプ | ㎡単価目安 | 専有面積70㎡の月額目安 |
| 小規模(20階未満・延床5,000㎡未満) | 335円 | 約23,450円 |
| 中〜大規模(20階未満・延床1〜2万㎡) | 271円 | 約18,970円 |
| 超大規模(20階未満・延床2万㎡以上) | 255円 | 約17,850円 |
| タワーマンション(20階以上) | 338円 | 約23,660円 |
機械式駐車場があるマンション
このガイドラインでは、機械式駐車場がある場合の加算も示されています。
機械式駐車場は修繕に多額の費用がかかるため、通常の修繕積立金とは別に、駐車場の台数に応じた上乗せが必要とされています。
| 駐車場のタイプ | 1台あたりの月額加算目安 |
| 1段式(地下1段・地上2段等) | 5,080円 |
| 2段式(地下2段・地上3段等) | 7,015円 |
| エレベーター方式(パレット等) | 14,165円 |
一般的なファミリー向けマンションで機械式駐車場がある場合、月あたり2,000〜5,000円程度の上乗せになるケースが多いとされています。
機械式駐車場の有無・台数によって、必要な積立金は大きく変わる点に注意が必要です。
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なぜ「平均並み」でも安心できないのか

ここで重要なのは、これらの目安はあくまで「必要な水準」を示したものであり、実際のマンションの積立金が、この目安通りに設定されているとは限らないという点です。
修繕積立金の値上げには、管理組合の総会での決議が必要です。
しかし、値上げ議案は次のような理由で否決されたり、先送りされたりすることが少なくありません。
- 目先の負担増を避けたいという心理から、反対意見が集まりやすい
- 高齢の区分所有者ほど「自分が住んでいる間は今のままでいい」という意識が働きやすい
- 大規模修繕がまだ先の場合、値上げの必要性が実感されにくい
- 一度否決されると、次回の議案提出まで時間が空き、問題が先送りされ続ける
こうした事情から、値上げの合意形成がうまくいかず、積立金が本来必要な水準より低いまま据え置かれているマンションは珍しくありません。
つまり、「積立金が平均並み、あるいは平均より低い」という状態は、必ずしも「無駄なく効率的に運営されている」ことを意味せず、「必要な値上げに合意できていない」というシグナルである可能性があるのです。
国交省が示す2つの指針

こうした事態を防ぐため、国土交通省のガイドラインでは、次の2つの考え方が示されています。
① 均等積立方式の推奨
修繕積立金の積立方法には、計画期間を通じて毎月ほぼ同じ金額を積み立てる「均等積立方式」と、当初の負担を抑えて段階的に値上げしていく「段階増額積立方式」があります。
国土交通省の調査(平成30年度マンション総合調査)によれば、均等積立方式の採用割合は41.4%、段階増額積立方式は43.4%と、実態としては段階増額方式を採用するマンションも多い状況です。
しかし、ガイドラインでは、将来にわたって安定的に修繕積立金を確保する観点から、均等積立方式が望ましいとされています。
段階増額方式は、新築時・購入時の負担が小さく見える一方、将来の値上げが合意形成できなければ、資金不足に陥るリスクを抱えることになります。
② 将来の増額幅への目安
段階増額積立方式を採用する場合でも、将来の値上げ幅が際限なく大きくならないよう、一定の目安を意識することが重要とされています。
当初の積立額に比べて、将来の値上げ額があまりに大きくなる計画は、その通りに値上げを実行できる可能性が低く、結果として修繕資金が不足するリスクが高まります。
「実は、築年数が経ってから均等方式に切り替えたマンションでも、実際に6割以上の管理組合で購入時より修繕積立金の値上げを余儀なくされているという話も聞きます。」
自分のマンションの積立金を確認するポイント

自分のマンションの修繕積立金が適正かどうかを確認する際は、次のような点をチェックすることをおすすめします。
- 自分のマンションの規模(延床面積・階数)に対応する国交省の目安と比較しているか
- 機械式駐車場がある場合、その加算分が反映されているか
- 積立方式が均等積立方式か、段階増額積立方式か
- 段階増額方式の場合、将来の増額計画が総会で決議されているか、それとも「未定」のままになっていないか
- 過去に値上げ議案が否決された経緯がないか、議事録で確認できるか
- 長期修繕計画と、実際の積立金残高に大きな乖離がないか
特に、「段階増額の計画はあるが、実際に決議されたことがない」というマンションは注意が必要です。
計画上は将来値上げする前提になっていても、実際に値上げできるかどうかは別問題だからです。
まとめ
- 修繕積立金が「平均並み」であることは、必ずしも「適正」を意味しない
- 積立金が安いまま据え置かれているマンションの背景には、値上げの合意形成がうまくいっていないケースが少なくない
- 国交省のガイドラインでは、規模別の目安に加え、機械式駐車場の加算ルールも示されている
- 国交省は、将来にわたり安定的に資金を確保できる「均等積立方式」を望ましいとしている
- 段階増額方式を採用する場合は、将来の増額計画が実際に決議・実行可能かどうかの確認が重要
修繕積立金は、マンションの資産価値そのものに関わる重要な要素です。
「平均並みだから安心」ではなく、自分のマンションの規模・条件・合意形成の状況を踏まえて、積立金が本当に適正な水準にあるかを確認することをおすすめします。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別のマンションの修繕積立金の適正額を保証するものではありません。実際の積立金の見直しについては、管理組合や専門家にご相談ください。本記事の内容は執筆時点の国土交通省のガイドラインに基づいています。
