不動産は生活に欠かせない身近な物ですが、利用にあたって様々な法律の規制を受けます。
自分が所有する物の処分や使用について、誰かにとやかく言われる筋合いはなく、自分のものを何に使おうと自由だろうと思うかもしれません。
しかし、不動産は使用について自由に認めると様々な弊害が出てしまいます。
建物の賃貸には法律でルールを設けないと賃貸人の気分次第で賃借人が追い出されることが考えられますし、建物について制限しないと隣の人の日照がなくなることも起きてしまいます。
一般の方が不動産の法律をすべて熟知している必要はありませんが、「こういう法律がある」と知っておくことで、不動産トラブルに遭遇した際に適切な対応が取りやすくなります。
この記事では、不動産に関わる主要な法律8つと、2024年に施行された重要な法改正を解説します。
この記事で分かること
- 不動産に関わる主要な法律8つの概要
- 一般法(民法)と特別法(借地借家法など)の関係
- 借主を守る借地借家法の重要ポイント
- 2024年に義務化された相続登記の概要
- マンション購入者が知っておくべき区分所有法
- 不動産取引に関わる主な税金の種類
一般法と特別法の関係を理解する

法律には、一般法と特別法というものがあります。
一般法は、ある分野に広く適用される法律です。そして、一般法に対して、効力が特定の事項に限って適用される法律を特別法といいます。
例えば、賃貸借の基本的な契約ルールは民法に定められていますが、建物の賃貸借については借地借家法という法律が特別法として優先されます。
建物の賃貸借について、借地借家法に何もなければ、民法が適用されるのが原則です。
- 一般法:ある分野に広く適用される法律(例:民法)
- 特別法:特定の事項に限って適用される法律(例:借地借家法)
1.民法

民法は、私人間の権利や義務についての法律です。
総則、物権、債権、親族、相続の5編から構成されていて、それぞれの分野に分かれています。
どの分野も不動産と関りがある重要な法律ですが、不動産に限らず様々な取引の基本となる法律です。
不動産に関わる場面としては以下のものがあります。
- 物権:所有権・抵当権・地上権など不動産の権利関係
- 債権:賃貸借契約・売買契約のルール
- 相続:相続による不動産の取得・遺産分割
他の不動産関連法律の多くは、民法を基礎として特別法として制定されています。
2.宅地建物取引業法(宅建業法)
宅地建物取引業法は、不動産取引の公正確保と購入者等の利益保護を目的として制定された法律です。
消費者にとって重要なポイント
- 不動産仲介業を営むには、都道府県知事または国土交通大臣の免許が必要
- 取引の際には宅地建物取引士が重要事項説明を行う義務がある
- 不動産会社の事務所には免許証番号が掲示されている
免許を持たないもぐりの業者との取引はトラブルになりやすいため、不動産会社の免許証番号(「国土交通大臣(〇)第〇〇〇〇号」または「〇〇県知事(〇)第〇〇〇〇号」)を確認する習慣を持つことが重要です。
3. 借地借家法

借地借家法は、土地・建物の貸し借りに関するルールを定めた法律です。
民法よりも借主保護の観点が強く、賃借人の権利を手厚く保護しています。
消費者にとって重要なポイント
- 貸主は正当な事由がなければ更新を拒絶できない(借主の居住の安定を守る)
- 定期借家契約では、契約期間満了とともに契約が終了する(更新なし)
- 建物が売却されても、賃借権は原則として新しいオーナーに引き継がれる
賃貸物件を借りる際は、普通借家契約か定期借家契約かを確認してください。
定期借家契約は更新がなく、期間満了で退去が必要になります。
4.不動産登記法(2024年改正:相続登記の義務化)

不動産登記法は、不動産の登記記録・登記手続きについて定めた法律です。
民法では、不動産の所有権は登記しなければ第三者に対抗できないとされています。
登記することで「この不動産は自分のものだ」と法的に主張できるようになります。
2024年4月から相続登記が義務化
2024年4月1日より、相続によって不動産を取得した場合は、相続を知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務になりました。
正当な理由なく期限内に登記しない場合は、10万円以下の過料の対象になります。
この改正以前に相続した不動産も対象で、2027年3月31日までに登記が必要です。
相続した不動産の登記が済んでいない方は早めに対応を考えましょう。
5.建築基準法
建物を建てる時に重要なのが建築基準法です。
建築基準法は、建築物の敷地・設備・構造・用途について最低基準を定め、国民の生命・健康・財産を守ることを目的とした法律です。
消費者にとって重要なポイント
- 接道義務:建物を建てるには原則として建築基準法上の道路に2m以上接することが必要。これを満たさない土地は再建築不可となり、大幅に資産価値が下がります
- セットバック:道路幅が4m未満の場合、道路の中心から2m後退(セットバック)した部分は建物を建てられません
- 用途地域:住居系・商業系・工業系など13種類の用途地域があり、建てられる建物の種類が制限されます
- 建ぺい率・容積率:敷地面積に対して建てられる建物の大きさの上限が定められています
都市計画法と合わせて確認することで、購入した土地に希望の建物が建てられるかを判断できます。
6.建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)

区分所有法は、マンションなど区分所有建物の権利関係・管理について定めた法律です。
マンションの「憲法」とも呼ばれます。
消費者にとって重要なポイント
- 専有部分(自分の部屋)と共用部分(廊下・エレベーターなど)の区分を定める
- 区分所有者全員で構成する管理組合によってマンションを運営する
- 建て替えには区分所有者の5分の4以上の賛成が必要
- 管理規約は区分所有法の範囲内で定められる
マンションを購入する際は、管理規約と区分所有法の関係を理解したうえで、管理組合の運営状態を確認することが重要です。
7.農地法
農地法は、農地の保護・農業の振興を目的とした法律です。
農地は他の不動産より厳しい制限を受けます。
消費者にとって重要なポイント
- 農地を農地以外の目的(住宅建設など)に転用するには、農業委員会の許可または届出が必要
- 市街化区域内の農地は届出のみで転用可能(許可不要)
- 市街化調整区域の農地は転用が原則として認められない
- 農地を購入する場合も農業委員会の許可が必要
「安い土地」として農地が売りに出されていても、建物が建てられない場合があります。農地の購入・転用を検討する際は事前に確認が必要です。
8. 税法(不動産に関わる主な税金)

不動産の取得・保有・売却・相続のそれぞれの場面で税金が発生します。
| 場面 | 税金の種類 |
| 取引時 | 印紙税(売買契約書に貼付) |
| 取得時 | 不動産取得税・登録免許税 |
| 保有時 | 固定資産税・都市計画税 |
| 売却時 | 譲渡所得税(所得税・住民税) |
| 相続時 | 相続税・登録免許税 |
主な控除・特例
- 住宅ローン控除:年末ローン残高の0.7%を最長13年間控除(2022年改正)
- 3,000万円特別控除:マイホームを売却した場合の譲渡所得から3,000万円を控除
- 相続時精算課税制度:生前贈与を相続時にまとめて精算する制度
税制は頻繁に改正されるため、取引前に最新情報を確認することが重要です。
まとめ
不動産に関わる主要8つの法律
| 法律 | 主な内容 |
|---|---|
| 民法 | 所有権・売買契約・賃貸借・相続の基本ルール |
| 宅建業法 | 不動産業者の免許制度・重要事項説明義務 |
| 借地借家法 | 借主保護・定期借家契約のルール |
| 不動産登記法 | 登記手続き・2024年から相続登記が義務化 |
| 建築基準法 | 建物の最低基準・接道義務・用途地域 |
| 区分所有法 | マンションの権利関係・管理組合の運営 |
| 農地法 | 農地の転用・売買の規制 |
| 税法 | 取得・保有・売却・相続時の税金 |
不動産は人生で最も高額な取引のひとつです。
「こういう法律で守られている・制限されている」という基礎知識を持つことが、トラブルを防ぐための第一歩になります。
本記事は宅地建物取引士・マンション管理士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士が監修しています。 法律・税制は改正される場合があります。詳細は専門家にご確認ください。

