不動産の扱いは、国によってけっこう違います。
例えば、アメリカやオーストラリアでは、土地と建物の所有者が異なることはないそうです。
しかし、日本では、土地と建物はそれぞれ独立した不動産として扱われます。そのため、土地の所有者と建物の所有者が異なるケース、つまり「土地を借りて建物を建てている」という状況が存在します。
田舎だと土地が安いので、建物と土地の持ち主が同じなのが当たり前かもしれませんが、都心は借地も多いです。
都心だと土地が高いので、借地権の新築戸建やマンションも珍しくありません。
少し前に借地を活用してタワーマンションや商業施設を建てた例もあります(定期借地)。
この記事では、土地の権利関係(所有権・借地権・底地)の基本と、定期借地権の種類、登記の重要性を整理します。
この記事で分かること
- 所有権・借地権・底地の違い
- 借地借家法による賃借人の保護
- 普通借地権と定期借地権の違い
- 定期借地権の3種類(一般・事業用・建物譲渡特約付)
- 登記の重要性と2024年の相続登記義務化
所有権・借地権・借家権

土地や建物を持つ人を「所有者」といい、所有者は不動産を使用・収益・処分できる権利(所有権)を持ちます。
不動産に関する主な権利の整理は次のようになります。
| 権利の種類 | 対象 | 内容 |
| 所有権 | 土地・建物 | 使用・収益・処分できる権利 |
| 借地権 | 土地 | 建物所有を目的として土地を借りる権利 |
| 借家権 | 建物 | 建物を借りる権利 |
借地権とは|地上権と賃借権の違い
借地権には、地上権と賃借権の2種類があります。
地上権は物権(物に対する権利)であり、登記された地上権は誰に対しても主張できます。
また、貸主には地上権登記への協力義務があります。
賃借権は債権(当事者間の権利)であり、原則として当事者間でのみ有効です。
ただし、立場の弱い賃借人を保護するため、借地借家法によって強く守られています。
実務上は「借地権=賃借権」として扱われるケースが多く、建物所有を目的とした土地賃貸借には借地借家法が優先して適用されます。
借地借家法による保護

借地借家法の主なポイントは次のとおりです。
①登記がなくても建物の登記で対抗できる
賃借権の登記がなくても、その土地の上に建物の登記があれば、後から土地の所有者が変わっても借地権を主張できます(判例では建物の表示登記でも対抗力が認められています)。
②建物が滅失しても立て看板で対抗できる
火災や地震で建物がなくなった場合でも、土地の見やすい場所に一定の事項を記載した看板を立てておくことで第三者に対抗できます。
③更新の保護
普通借地権では、貸主が正当な理由なく更新を拒否することはできません。
④再築の保護
最初の契約期間中であれば、建物を再築することができます(更新後は貸主の承諾が必要)。
底地とは|借地権が付いた所有権

土地を所有していても、その土地に他人の借地権が設定されている場合、その土地は底地(そこち)と呼ばれます。
底地は土地の所有権ですが、借地権者がいるため、所有者が自由に土地を使うことができません。
また、正当な理由がなければ借地契約の更新を拒否することもできません。
| 普通の所有権 | 底地 | |
| 自由な使用 | できる | できない |
| 更新拒否 | — | 正当事由が必要 |
| 担保価値 | 高い | 一般に低い |
| 収益 | 自由に設定 | 地代収入(限定的) |
日本では借地権者の保護が強く、一度貸した土地はなかなか返還されないという実態があります。
底地は担保価値が低く、地代も低額に設定されたままのケースも多いため、底地の買い取りに特化した不動産業者も存在します。
底地権者が借地権を買い取れば普通の所有権(完全所有権)になります。
定期借地権|期間終了で返還される

一般の普通借地権では、正当事由がなければ更新を拒否できないため、土地がなかなか返還されないという問題があります。
一度土地を貸すとなかなか返却してもらえない問題をクリアするための比較的新しい借地権が定期借地権です。
定期借地権では、契約で定めた期間が終われば土地が確実に返還されます。
種類は3つあります。
① 一般定期借地権
- 存続期間:50年以上
- 住居・事業用どちらにも利用できる
- 期間終了後:借主が更地にして返還
② 事業用定期借地権
- 存続期間:10年以上50年未満(10年以上30年未満と30年以上50年未満で条文が異なります)
- 事業用建物のみ(住居は建てられない)
- 期間終了後:借主が更地にして返還
- 公正証書による契約が必須
③ 建物譲渡特約付借地権
- 存続期間:30年以上
- 期間終了後:建物を貸主が買い取り、土地とともに返還
- 借地人・借家人は契約終了後も住み続けることができる
- 投資物件を建てて賃貸事業を行い、期間終了後に貸主が賃貸事業を引き継ぐ使い方もある
登記の重要性と2024年の相続登記義務化

ここまで書いてきたように、住んでいるのが所有者と別の人ということは日本ではよくあります。
不動産は目に見えますが、気になる土地の本当の所有者が誰なのかは見ただけでは分かりません。
誰が所有者なのかを調べるには、直接、聞いてみるのもいいですが、最近は個人の情報がうるさく言われますし、本人以外だと分からないこともあります。
不動産の所有者は法務局で調べられる
不動産の所有者を知るのに便利なのが法務局で登記情報を調べる方法です。
お金はかかりますが、誰でも登記情報を調べることができます。
登記情報を調べれば、対象の土地の所有者が誰で、不動産が担保にされているか、いくら借りたか、といったことも分かります。建物情報から状況も調べられます。
ただし、登記には注意点があります。
- 不動産登記には公信力がない(登記の内容が実際の権利を保証しているわけではない)
- 実際の権利関係と登記が一致していないケースがある
2024年4月から相続登記が義務化されました
2024年4月1日以降、不動産を相続した場合は、相続を知った日から3年以内に相続登記を行うことが義務付けられました(正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料)。
過去の相続分にも適用されます(経過措置あり)。
増築など登記が義務付けられていないケースでも、未登記のままにしておくと、売却時にローンが通らなかったり、権利関係でトラブルが生じたりすることがあります。
建物の登記は早めに行っておくことをおすすめします。
相続と借地・底地の注意点
相続財産に借地権や底地が含まれる場合、評価や権利関係の整理が複雑になりやすいため、注意が必要です。
- 借地権は相続財産として評価対象になる(借地権割合は地域により異なる)
- 底地は担保価値が低いため、相続税の納税資金の確保に注意が必要
- 権利関係の整理(借地権の買い取り・等価交換など)は時間がかかるため、早めに専門家に相談することが大切
今回のまとめ
- 日本では土地と建物が別個の不動産として扱われ、土地と建物の所有者が異なるケースがある。
- 借地権には地上権(物権)と賃借権(債権)があり、借地借家法によって賃借人が保護されている。
- 底地は借地権が付いた所有権。担保価値は低く、自由な使用ができない。
- 定期借地権(一般・事業用・建物譲渡特約付)を使えば、一定期間後に確実に土地が返還される。
- 2024年4月から相続登記が義務化。相続後3年以内の登記が必要。
- 登記情報は法務局で誰でも確認できるが、登記が実際の権利関係を保証するわけではない。
ご注意
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の不動産取引・相続・法律的判断に関する助言ではありません。借地権・底地の評価や手続きは個別の事情によって大きく異なります。具体的な判断は、宅地建物取引士・税理士・弁護士・司法書士など各分野の専門家にご確認ください。記載の制度・法令は執筆時点のものです。

