不動産の扱いは、国によって違います。
例えば、アメリカやオーストラリアでは、土地と建物の所有者が異なることはないようです。
しかし、日本では、土地と建物の持ち主が違うことは結構あります。
地方の人と話していると、建物と土地の持ち主が同じなのが当たり前だと思っているようですが、そうとは限りません。
特に都心では、借りた土地の上に建物を建てることが多いです。
都心だと土地の所有権は高いので、借地権の新築戸建でも5,000万円以上することは別に珍しくありません。
不動産の権利で代表的なのが所有権と借地権
そして、不動産の持ち主を所有者といい、所有には、不動産を運用、処分、使用できる権利があることから、この権利のことを所有権といったりします。
不動産には、土地と建物とがありますが、建物を借りる権利を借家権といい、土地を借りた場合の権利を借地権といいます。
土地の利用権である借地権は、さらに「地上権」と「土地の賃借権」とがあります。

地上権と土地の賃借権
借地権とは、土地の賃貸借のことをいると書きましたが、借地権は、不動産の賃貸借に関する特別法「借地借家法」によって規定されています。
借地権には、物件の地上権と、債権の賃借権とがあるといいました。
不動産では、法務局で登記することで第三者(当事者以外)にも対抗できます。
借地権も同様で、借地権を登記することで第三者に対抗できます。
しかし、借地権の登記することは所有権者が嫌がるので普通は拒否されます。
そこで、地上権や賃借権の登記がされていなくても土地の上に建つ建物の登記をしておくことで、後から土地の所有者が変わっても(第三者があらわれても)自分のものと主張できることになっています(対抗できます)。
建物が火事や地震でなくなってしまった場合は、借地権者が土地の見やすい場所に立て看板をしておけば第三者に対抗できるとされています。
底地やら借地やら日本の不動産はややこしい
土地の所有権があっても、その土地を他人に貸している場合は、価値が大きく減額されます。
日本では、借地借家法という法律があって、借地権者は厚く法律で守られています。
借地権者が厚く守られているとはいっても、建物の所有者が建物を処分する場合は、土地の所有者の承諾を得ることが必要です。
借地権のある所有権が底地権
自分の土地を他人に貸して、その他人が土地に建物を建てている場合を底地といいます。
土地も建物も自分が所有権者であれば、底地ではありません。
しかし、土地が他人に貸して他人が建物を建てている場合は底地です。
ややこしいのですが、実は底地も土地も所有権には変わりがありません。
どちらも土地の所有権ですが、違うのは借地権が設定されてるかどうかです。
底地の場合は、土地の借主(借地権者)がいるので、土地の所有者であっても自由に土地を使用することはできません。

借地権者が建物を第三者に売却しようとする場合は、底地権者の承諾が必要ですが、承諾しないときは、裁判所が承諾にかわる許可をすることができます。
このように日本では、借地権者保護が強いため、土地の所有者が他人に土地を貸すとなかなか返還してもらえません。
契約期間を決められる定期借地権
一度土地を他人に貸すとなかなか返却してもらえない問題をクリアするための比較的新しい借地権が「定期借地権」です。
定期借地権には、「一般定期借地権」、「事業用定期借地権」、「建物譲渡特約付借地権」があります。
一般の普通借地権だと所有権者に正当な事由がないと更新を拒否できませんが、定期借地権として土地を貸し出せば、契約で定めた期間の経過によって土地が返還されます。
一般定期借地権
一般定期借地権は、50年以上の存続期間を定めれば、更新をしないことができます。
契約期間が終了した際は、借主は更地にして貸主に返却します。
事業用定期借地権
事業用定期借地権では、10年以上50年の範囲で借地の存続期間を決めます。
事業用の借地なので、住居は建てられません。住居以外の事業用建物を建てる定期借地権です。
契約期間終了後は、更地で借主から貸主に返却されます。
事業用借地の場合は、公正証書によって契約をします。
建物譲渡特約付借地権
建物譲渡特約付借地権では、30年以上の借地権の存続期間を決めます。
契約期間終了後は、建物と一緒に土地を返還し、貸主が建物を買い取ります。
借地人や借家人は、契約終了後も住み続けることができます。
建物譲渡特約付借地権契約では、借主が不動産投資物件を建てて賃貸事業を行い、建物譲渡後は貸主が賃貸事業を引き継ぐといった利用もできます。
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住んでる人が所有者とは限らない
ここまで書いてきたように、住んでる人が所有者かどうかは見ただけでは分かりません。
不動産は目に見えますが、誰が所有者で気になる土地の本当の所有者が誰なのかは分からないんですね。
誰が所有者なのかを調べるには、直接、聞いてみれば分かりますが、住んでる人が必ずしも本当のことを答えてくれるとは限りません。
不動産の所有者は法務局で調べられる
不動産の所有者を知るのに便利なのが法務局で登記情報を調べる方法です。
お金はかかりますが、誰でも登記情報を調べることができます。
登記情報を調べれば、対象の土地の所有者が誰で、不動産が担保にされているか、いくら借りたか、といったことも分かります。
その他、家族信託契約をした場合も登記情報で分かります。
ただし、法律で登記義務が定められているわけではありません。
そのため、実際の権利関係と登記上の権利関係が異なるケースがあります。
実際、不動産を相続しても登記しない人がいます。
なので、登記には、公信力がなく、登記を信じて取引しても保護されません。
最近、日本では九州くらいの大きさの土地が未登記というニュースが出て話題になりました。
登記義務がないと誰が本当の所有者か分からなくなってしまいます。

二人の人に売ることだってできてしまいますよ。
1つの不動産を二人同時に売却した場合は、先に登記をしたかどうかで決まるので、当事者以外に所有を主張するには登記が必要です。
第三者に対抗するためには、登記が必要なので、通常は、法務局で登記情報を調べれば不動産の権利関係(所有権、抵当権等)を知ることができます。
借地権と底地権のまとめ
・底地権は、借地権が付いている所有権
・日本は、借主の権利保護が強く、同じ所有権でも底地権と所有権とでは資産価値に大きな差が出る。
・底地権者が借地権者から借地権を買い取ると一般的な所有権になる。
・普通借地権だといつになったら返却されるか分からないが、定期借地権であれば一定期間経過後に土地が返還される。
・法務局で登記情報を調べることで不動産の権利関係を確認できる。
・登記が実際の不動産の権利関係を表してるとは限らない。