2026年4月1日、改正区分所有法が施行されました。
マンションの管理と再生を円滑にするための大きな制度改正で、区分所有法としては2002年以来の大規模な見直しです。
この記事では、改正前のルールと比べながら、何がどう変わったのかを整理します。
この記事から分かること
- そもそも区分所有法とは何か、改正の背景
- 改正前のルールと、合意形成が難しかった理由
- 決議要件の変更点(改正前→改正後の比較)
- 再生手法の多様化と管理を円滑にする新制度
- 管理組合・購入検討者が確認しておきたいこと
そもそも区分所有法とは

区分所有法(正式名称「建物の区分所有等に関する法律」)は、分譲マンションのように1つの建物を複数の所有者で持つ場合の、専有部分・共用部分の権利関係や管理・再生のルールを定めた法律です。
各住戸の所有者を「区分所有者」と呼び、管理組合の運営や建替えなどの意思決定の方法が定められています。
改正の背景|2つの老いと合意形成の難しさ
今回の改正の背景にあるのは、建物の高経年化(老朽化)と居住者の高齢化という「2つの老い」の進行です。
築40年以上のマンションが増える一方、高齢化で管理組合の合意形成が難しくなり、建替えや再生が進みにくいという課題がありました。
とくに従来は、建替えなどに高い決議要件が課され、欠席者が反対票と同じ扱いになるなど、必要な再生がなかなか進まないという課題がありました。
そこで、管理と再生の両面で意思決定をしやすくする改正が行われました。
改正前と改正後の比較

主な決議要件・制度が、改正前と後でどう変わったかを表にしました。
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
| 建替え決議 | 5分の4以上 | 原則5分の4。 耐震性不足等の一定の事由で4分の3に緩和 |
| 共用部分の変更 | 4分の3以上 | 原則4分の3。権利侵害のおそれやバリアフリー化等で3分の2に緩和 |
| 集会の普通決議 | 区分所有者全体が母数。欠席者は反対扱い | 処分を伴う決議を除き出席者の多数決で議決可能に |
| 一括売却・取壊し・ 一棟リノベ |
区分所有者全員の同意が必要 | 建替えと同様の多数決決議で可能に |
| 所在不明者の扱い | 決議の母数に含める必要 | 手続きを経て母数から除外できる制度を新設 |
※ 建替えは「一律で緩和」ではない点に注意。
原則は5分の4のままで、耐震性不足・火災安全性不足・外壁剥落のおそれ・給排水管の腐食・バリアフリー不適合のいずれかに該当する場合に4分の3となります。
ポイント①決議要件の緩和
これまで合意形成のハードルが高かった建替えや再生について、決議要件が見直されました。
建替えは原則「5分の4以上」のままですが、耐震性不足などの一定の要件を満たすマンションでは「4分の3以上」に緩和されます。
主な決議要件の変化(イメージ)
- 建替え(一定要件あり)
- 5分の4 → 4分の3
- 共用部分の変更(一定の場合)
- 4分の3 → 3分の2
※ 緩和には耐震性不足・バリアフリー対応など個別の要件があります。すべての決議が一律に緩和されるわけではありません。
ポイント②再生手法の多様化
これまで建替え以外の再生手法は、原則として区分所有者全員の同意が必要でした。
改正により、多数決決議で進められる選択肢が増えます。
- 建物・敷地の一括売却 → 多数決決議で売却が可能に
- 一棟リノベーション → 建替えずに再生する選択肢
- 建物の取壊し → 取壊し後の敷地売却も
- 団地の再生要件も緩和 → 一括建替え等の要件を見直し
ポイント③管理を円滑にする新制度
再生だけでなく、日常の管理を円滑にするための制度も新設されました。
所在等不明区分所有者の決議分母からの除外
所在の分からない所有者を、一定の手続きを経て決議の母数から除外できる制度。
合意形成が進めやすくなる。
集会の出席者多数決の仕組み
一定の事項について、出席者を基準とした多数決の規律が導入され、集会での意思決定がしやすくなる。
所有者不明・管理不全部分の管理人制度
裁判所が管理人を選任できる制度。
所有者不明の専有部分などに法的に対応する道が整備された。
注意:管理規約の見直しが必要なことも

施行日時点で、改正後の区分所有法に抵触する管理規約の定めは、施行日からその効力を失うとされています。
たとえば、決議要件を旧法基準で定めている規約は、見直しが必要になる場合があります。
あわせて、改正法を踏まえてマンション標準管理規約も改正されています(2025年10月)。
各マンションの規約は総会決議で改正する必要があるため、管理組合では早めの確認が望まれます。
購入検討者・所有者への影響
中古マンションの購入を検討している方にとっては、老朽化したマンションでも再生・売却の道が開けやすくなる点が、将来の出口を考えるうえでプラスに働く可能性があります。
一方で、管理組合の運営状況や規約の整備状況は、これまで以上に重要な確認ポイントになります。
購入前には、長期修繕計画や修繕積立金の状況に加え、管理組合が改正に対応した規約見直しを進めているかにも目を向けておくと安心です。
まとめ
今回の改正は、「決議要件の緩和」「再生手法の多様化」「管理を円滑にする新制度」の3本柱で、老朽化マンションの管理・再生を進めやすくするものです。
立場ごとに、押さえておきたい点を整理します。
管理組合
- 規約が改正法に抵触していないか確認
- 標準管理規約の改正内容をチェック
- 所在不明者対応の手続きを把握
購入検討者
- 老朽化物件でも再生の道が広がる
- 管理組合の運営・規約整備状況を確認
- 長期修繕計画・積立金もあわせて確認
制度が変わっても、最後に資産を守るのは「自分のマンションの状況を正しく把握しておくこと」です。
規約や修繕計画に不安がある場合は、利害関係のない専門家に相談することをおすすめします。
本記事は2026年6月時点の法令・公表資料に基づく情報提供を目的としたものです。個別のマンションの状況や規約により取り扱いが異なる場合があります。具体的な手続きや判断については、弁護士・マンション管理士等の専門家にご相談ください。
