不動産探しの契約までの流れとしては、物件の内見をして気に入ったら、申込みをして売主(貸主)の審査を受け、数日後に売主の売却の承認(賃貸なら貸主や保証会社の承認)を得て、次は契約となります。
実際には宅地建物取引業法により、契約の前に宅地建物取引士から重要事項説明を受けることになっています。
不動産の取引は、権利関係や条件が複雑なことが多く、不動産取引に不慣れな人が契約すると、予想外の損害を受けることがあるためです。
何度も契約を経験してるお客様の中には、重要事項説明を面倒くさがる人もいますが、説明が義務なので必ず行います。
重要事項の説明
始めて不動産を探す人にとって、不動産取引は慣れないことも多く、また、聞き慣れない専門用語も多く出てきます。
不動産業者は、買主(借主)が購入し(借り)ようとしている物件の情報や取引の判断に必要な情報を調べ、重要事項説明書を交付したうえで、宅地建物取引士に重要事項説明をさせなければならないとされています。
説明の際には、宅地建物取引士から宅地建物取引士証を提示されて重要事項説明を受けます。
説明の時期 | 契約が成立する前 |
売買契約 | 買主 |
賃貸借契約 | 借主 |
交換契約 | 双方(両方の当事者) |
だめな重要事項説明
売買取引では少ないですが、賃貸取引では宅地建物取引士以外の人が重要事項説明をしたり、録音した音声を流したり、お客様に自分で書類を読ませるといったことを行う業者を実際に見たことがあります。
今は会社自体ありませんが、私が最初に勤めた会社の社長はいつもお客様に重要事項を説明するのですが、社長は宅建の資格は持ってませんでした。
繁忙期になると我々若手社員が営業にかけ回ってるので、比較的やることがない社長が契約担当でした。
今はうるさくなって見かけなくなりましたが、昔はこんな業者が多かったです。特に都内は。
重要事項説明は法律で宅地建物取引士が行わなければいけないと定められてるので、こういった例は法律違反になります。
宅建資格がない営業はけっこう多いので、契約時に同じ会社の事務員さんを連れてくる営業もいます。
とはいえ、法律が遵守されていれば問題はないと思います。
重要事項説明書の中身
重要事項説明書には、対象となる宅地又は建物に直接関係する事項、取引条件に関する事項、マンションに関する事項に大別できます。
対象となる宅地または建物に直接関係する事項
1.登記記録に記録された事項
2.都市計画法、建築基準法等の法令に基づく制限の概要
3.私道に関する負担に関する事項
4.飲用水・電気・ガスの供給施設および排水施設の整備状況
5.宅地造成又は建物建築の工事完了時における形状、構造等
6.建物状況調査の結果の概要
7.建物の建築および維持保全の状況に関する書類の保存の状況・地震に対する安全性に関する書類
8.建築確認・検査済証の交付年月日・番号等
9.当該宅地建物が造成宅地防災区域内か否か
10.当該宅地建物が土砂災害警戒区域内か否か
11.当該宅地建物が津波災害警戒区域内か否か
12.アスベスト使用調査の内容
13.耐震診断の内容
14.住宅性能評価を受けた新築住宅であるときはその旨
取引条件に関する事項
1.売買代金および交換差金以外に売主・買主間で授受される金銭
2.契約の解除に関する事項
3.損害賠償額の予定または違約金に関する事項
4.手付金等の保全措置の概要(売主が不動産会社)
5.支払金または預り金の保全措置の概要
6.ローンのあっせん内容
7.瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要
8.割賦販売に係る事項
9.土地の測量によって得られた面積による売買代金の清算
マンションに関する事項
1.敷地に関する権利の種類及び内容
2.共用部分に関する規約等の定め
3.専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約等の定め
4.専用使用権に関する規約等の定め
5.所有者が負担すべき費用を特定の者のみに減免する旨の規約等の定め
6.計画修繕積立金等に関する事項
7.通常の管理費用の額
8.管理組合の名称及び管理の委託先
9.建物の維持修繕の実施状況の記録
参考 全日本不動産協会の重要事項説明書ひな形
これらは法律によって定められている事項です。
重要事項説明のチェックポイント
・物件が登記簿などの記載と合っているかをチェックします。物件の所在は、表題部に記載されています。
・物件の所有者が確かにその人なのか、また抵当権もチェックします。抵当権があっても引き渡しまでに抹消されれば問題ありません。
・不動産は自分の所有であっても様々な制限を受けます。法令上の制限によって購入の目的が達成されるかどうか等を確認します。
・私道負担はあるのか、あるなら共有なのか分割されるのか、また、セットバックはあるのかといった私道に関する確認をチェックします。
・飲用水や電気、ガスといったインフラについてどうなっているかも大事です。負担金が必要だったり、他人の土地を水道管が通っているといったこともあります。
・手付金の扱いや金額についてをチェックします。契約後に解除する場合は手付解除期日(売主が業者の場合は履行の着手)までであれば、手付金の放棄により可能です。
・ローンを利用する場合は、どういった金融機関から借り入れ、借り入れの承認が下りなかった場合どうなるのかをチェックします。
・マンションでは、建物の修繕積立金の滞納がないか、修繕状況の記録はどうなのかといったことも将来の資産に影響を及ぼします。
今回のまとめ
契約に際して、不動産業者は買主、借主に対して目的物件について重要事項説明書を交付して説明しなければなりません。
重要事項説明はその名の通り、契約にあたって宅地建物取引士に重要な事項を説明させ、買主、借主が取引する物件について理解し、購入、賃借を判断できるようにするためにあります。
この重要事項説明書に書いてあることと、口頭で説明を受けたことが一致しているかチェックすることが大事です。
重要事項説明を受けた際に、聞き慣れない言葉や専門用語を使われることもあると思いますが、不明な点はその都度質問して後回しにしないことが大切です。
普通の人は不動産の取引を何度もしないですが、不動産は権利や法令上の制限が絡みます。
欠陥のある土地が安いのは、それなりの理由があるからです。
欠陥の意味を理解しようとせず、何十年後に問題が起こって理解する人もいますが、それでは遅すぎます。
不動産業者は不動産取引についてのプロですから、向こうは当然知っていることも一般消費者は知らなくて当たり前です。
不明な点をそのままにしてしまうと、後々のトラブルになってしまうこともあります。
実際、重要事項説明に関するトラブルは多く、不動産取引における三大トラブルの一つとされています。