普通借家契約は、普通の賃貸借契約と違い、借地借家法という法律によって借主が強く保護されます。
例えば、ほとんどの普通借家契約には2年や3年といった契約期間がありますが、貸主が賃貸借契約の更新を望まなかったとしても、正当事由がなければ借地借家法によって更新されます。
正当事由制度は、戦時中に借家住まいの人が家を追い出されるといったことが起こり、軍人家族の住まいを確保するためにできたといわれています。
その後、戦争は終わりましたが、正当事由制度だけは残って今に至っています。
このように普通借家契約だと貸主に正当事由がなければ、部屋を貸しても返ってこないことになります。
こういった問題を解消するため平成12年3月にできた制度が定期借家契約です。
定期借家契約について
一般の普通借家契約は契約期間の定めをしますが、契約期間の定めがあっても更新されるのが原則です。
しかし、定期借家契約は、契約期間が満了すると更新はなく、借家契約は終了します。
また、普通借家契約で1年未満の契約を定めると期間の定めのない契約になりますが、定期借家契約では1年未満の契約も可能です。
期間満了で契約が終了するので、立退料を支払わずに部屋を明け渡してもらえます。
また、普通借家契約では、契約期間の賃料は物価変動等により増減することがありますが、定期借家契約では固定させることが可能です。
ちなみに普通借家契約の特約で賃料を固定するとしても、増額は有効ですが減額は無効(借主保護により)になります。
こうみると貸主にとってメリットばかりに見えますが、契約期間がハッキリしてれば安心して貸せることから、良い物件が出てくることも考えられるので、場合によっては借主側にとってもメリットのある制度といえます。
例えば、賃貸物件は分譲マンションや一戸建てに比べれば設備が劣るのが一般的です。
分譲マンションでも、所有者が数年転勤するといったケースで貸出すことができるので、少しグレードの高い部屋を借りられることがあります。
定期借家契約の要件
定期借家契約は、期間満了で契約が終了するため、普通借家とは異なる規定があります。
定期借家契約の要件
・必ず公正証書などの書面で契約すること
・あらかじめ「更新がない」ことを説明し、書面を交付すること
・期間満了の1年前から6か月前に終了の通知をすること
要件を満たさないと契約書に定期借家と書いてあっても普通借家契約になってしまいます。
ただし、通知期間経過後に借主に対して、その旨を通知したときは、通知の日から6か月が経過したときに終了します。
必ず公正証書などの書面で契約する
法律上は、お互いが合意すれば契約が成立します。
普通借家契約であれば、口頭であっても契約は成立しますが、定期借家契約の場合は書面での契約が必要です。
書面であればよいので公正証書でなくても大丈夫です。
一般的に不動産業者には定期借家契約書のひな型が用意されてるので、それを使用することになります。
契約書には、定期借家であること、契約の期間、契約の更新がないこと等が記載されます。
期間満了により契約は終了するため、契約の更新はありませんが、再契約をして同じ人に賃貸借するということはありえます。
同じ人を借主とする場合は、契約更新ではなく、再契約ということがポイントです。
あらかじめ更新がないことを説明し、書面を交付する
定期借家の事前説明書では、事前に契約書とは別に説明し、書面を交付することが必要です。
事前説明の書面には、定期借家契約であること、期間の満了で契約が終了すること、契約の期間等が記載されます。
書面による説明がないときは、契約は普通の賃貸借契約になります。
ただし、重要事項説明書に一定の事項を記載して、当該重要事項説明書を交付したうえ、貸主の代理として宅地建物取引士が説明を行うことでも可能とされています。
期間満了の6か月から1年前に終了の通知をする
契約期間が1年以上の定期借家契約の貸主は、期間満了の6か月前から1年前に、借主に対して契約が終了することの通知が必要です。
期間が1年未満の場合は通知の必要はありません。
また、終了の通知は書面で行わなくてもよいとされていますが、トラブル防止の観点から書面で行われるのが一般的です。
定期借家契約では、原則的に中途解約ができないことになっています。
ただし、一定の場合に限り、中途解約が認められています。
中途解約の要件
・借主が転勤や親の介護等、やむを得ない理由があり、その建物を自己の生活の本拠として使用することが困難であるとき
・建物の床面積が200㎡未満であるとき
・上の条件を満たして1か月前に申し入れたとき
まとめ
・定期借家契約は、更新のない借家契約である。
定期借家契約の特徴
1.契約期間が満了すると契約が終了する
2.契約期間中の賃料を固定することができる
3.書面や事前説明といった要件がある
4.更新はないけど再契約はできる
定期借家契約の要件
1.公正証書などの書面によって契約すること
2.契約前に定期借家契約であり、契約の更新がなく、期間の満了で契約が終了することを書面を交付して説明されること
3.期間1年以上の場合は、6か月前から1年前に終了の通知があること