一戸建ての場合は個人が建物全体を単独で保有しますが、分譲マンションの場合は一戸建てと異なり、建物全てを個人で保有しません。
マンションは、一戸建てと違って複数の人が建物の所有者となるので、必ず共用部分(共同で使用する部分)があります。
一戸建てでも建物全体を複数の人で共有することがありますが、マンションはこの共有とは違います。マンションでは、それぞれの各部屋を独立した所有権(区分所有)として扱います。
分譲マンションの場合は、「区分所有法」という法律に基づいて区分所有者それぞれが議決権に基づいて運営に参加することになります。
区分所有者は、当然に管理組合の構成員になるので、組合員になることを拒否できませんし、区分所有者以外の人は構成員になれません。
分譲マンションを買った後に、どこからどこまでが専有部分で共用部分なのかといった疑問を持つ人も多いようです。
分譲マンションにかかわる法律「区分所有法」とは
マンションでは、建物の各戸を独立した所有権の対象とします。
マンションの権利や運営について規定した法律が「区分所有法」と一般的に呼ばれている法律ですが、正式には「建物の区分所有等に関する法律」といいます。
この法律に基づいてマンションのルールである規約や運営方法が決められているので重要な法律です。
区分所有と認められるためには、「構造上の独立性」と「利用上の独立性」がなければならないので、条件を満たさないデパ地下のテナントやフードコートは対象になりません。
専有部分や区分所有かが争われた裁判もありますし、法律が適用されるかといったことにも関わってきます。
建物の区分所有等に関する法律の構成
第一章建物の区分所有第
・一節総則
・第二節共用部分等
・第三節敷地利用権
・第四節管理者
・第五節規約及び集会
・第六節管理組合法人
・第七節義務違反者に対する措置
・第八節復旧及び建替え
第二章団地
第三章罰則
附則
マンションには専有部分と共用部分がある
マンションは、今まで一戸建てやアパートにしか住んだことがない人にとっては、区分所有という性質上、分かりにくい部分が多いと思います。
分譲マンションの各部屋のそれぞれの所有者は、区分所有者といわれます。
マンションには、区分所有者が共同で利用する共用部分と区分所有者が専有で使える専有部分とがあります。専有して使える各部屋の部分以外が共用部分といった理解でいいと思います。
マンションの各住居部分については所有権の対象となるので専有部分となります。
専有部分については、内装などは管理組合(理事会)の承諾や届出を得て自分の好みに変更できます(限度はあります)。
ちなみに天井、梁、壁といったコンクリートの内側部分が原則的に専有部分になります。壁をぶち抜くといったようなリフォームは、専有部分であってもマンションの構造にも影響しますし、共同の利益に反することから原則として認められません。
共用部分は、階段や通路、エレベーターといったみんなで共同して利用する部分をいいます。
階段や通路が一部の人しか使えないとなるとマンション生活に支障が出てしまいますから、これらは当然に共用部分となります。
2つの共用部分(法定共用部分と規約共用部分)
共用部分には、階段やエレベーター、通路といった当然に共用部分とされる法定共用部分と規約によって共用部分と定めた規約共用部分の2つがあります。
管理人室は、区分所有の条件を備えているので、本来であれば専有部分になりますが、規約で定めて共用部分(規約共用部分)として使うのが普通です。
ただし、規約共用部分であることを第三者に対抗するためには、共用部分であることの登記が必要とされています。
登記というのは、不動産ごとに権利関係や所在地、面積、所有者等を記録して公開したものです。登記がどうなってるかは法務局に行けば誰でも知ることができます。
反対に法定共用部分の場合は、当然に共用部分とされます。
エレベーターや階段、通路は迷うことなく所有者一人一人が利用できる共用部分と分かります。このように法定共用部分は、誰が見ても共用と分かるため登記は出来ません。
共用部分と登記
法定共用部分(登記できない)
規約共用部分(登記がないと第三者(当事者以外)に主張できない)
中には一部の人のみしか使わないエレベーターや階段もありますが、それであっても共用部分です。
マンションはどこまでが自分の所有?
専有部分としてよく間違われるのが、バルコニー、1階の専用庭、ドアといったものですが、これらは専用使用してるだけで、実は共用部分になります。
バルコニーには非常用の避難口が設置されるのが普通ですが、火災が起きた場合等はバルコニーを使って避難しますから、バルコニーが専有部分だと非常時に上の階の人が逃げられなくなってしまいます。
なのでバルコニーは共用部分になっています。
共用部分なので、バルコニーには個人の荷物を置いておくことが基本的に出来ません(置いてあること多い)。
1階等の専用庭については、庭を特定の人が占用して利用していることがあります。これも専用使用してるだけで、庭も共用部分となります。
マンションの広告等では、専用使用権付きと書いてあることがありますが、共用部分であることは同じです。ちなみに専用使用について使用料が取られることがほとんどです。というより標準管理規約に記載があります。
ドアについては、ドアの内側は専有部分ですが、外側は共用部分になります。
ドアの外側を勝手に派手なものに塗り替えられると、マンション全体の美観を損なうことになりかねませんし、資産価値にも影響してきます。
気になるのがメンテナンス等の費用をだれが負担するのかですが、専有部分のメンテナンス費用は所有者が負担し、共用部分については管理費や修繕積立金から支出するのが原則です。
ちなみにですが、管理費は経常的に発生する費用に充て、数年ごとに発生する費用(大規模修繕、建て替え)は修繕積立金が充てられます。
マンション管理規約の変更について
マンションは、管理規約や集会の決議によって運営されます。
例えば、マンションごとにペットが飼えたり、飼えなかったりするのは、マンションごとで管理規約の定めが異なるからです。
共用部分の変更については、区分所有法や規約に基づいて変更できます。
区分所有法第17条
1.共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
2.前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。
共用部分の変更について、著しい変更をともなわないものは軽微の変更とされ、著しい変更を伴うものは重大な変更とされて区別されます。
ただ、著しい変更がどの程度かについては、あいまいな点も多かったりします。
また、マンションは一戸建てと違って、建物の所有権と土地の敷地利用権利を分けて処分することができないように登記することができます(敷地権)。
マンションの専有部分を所有するためには、建物がある敷地を利用する権利が必要ですが、これは敷地利用権と呼ばれ、土地の所有権、賃借権、使用借権、地上権があります。
登記された敷地利用権は、敷地権と呼ばれますが、使用借権だけは登記できないので敷地権になりません。
敷地権になる権利
・所有権
・賃借権
・地上権
今回のまとめ
いかがだったでしょうか。
マンションは立地がいい場所に立つことが多いことから現在人気ですが、購入する際に専有部分や共用部分、区分所有法について知らずに購入する人は多いです。
そのため後で購入を失敗したという人も多いようで、2,3年もせずに売りに出ることもあります。
「もっとマンションについて勉強してから買えばよかった」はよく聞きます。
区分所有法は、独特な部分も多く、居住者の中にも知らなかったという人はいます。
区分所有マンションを買うときに最低限知っておいた方がいいことについて等、今後このブログでも紹介していこうと思います。