年が明けると不動産会社では本格的な繁忙期になります。
1月から3月になると入学や入社に合わせて部屋を探す人が増えるからです。ちなみに賃貸だけでなく売買も1月から3月は繁忙期になります。
前回は初めて部屋を探す人に向けて、部屋探しの流れについて書きました。
賃貸と売買とではかかる費用も金額も違います。
今回は賃貸で最初に必要なお金について書こうと思います。
敷金について
敷金は、部屋を借りた人(借主)が家賃の滞納や契約違反による損害に備えて、部屋を貸す人(大家さん、貸主)が借主から預かっておくお金のことをいいます。
敷金は契約期間の間、貸主に預けておきますが、預けた期間については家賃に利息は付きません。
また、敷金は契約違反等による損害に備えて貸主が預かっているものなので、通常は契約が終了して物件の明け渡しが終われば、修繕や損害分を控除した金額が借主に返金されます。
単身者向けの賃貸物件についてですが、15年ほど前であれば敷金2か月が当たり前でした。
保証会社の普及や礼金ゼロ物件が出てきたことで、敷金も1か月の物件が増え、今では敷金を2か月取るような単身者向けの物件はほとんど見なくなりました。
中には最初に掃除費用、鍵交換費用がかかるだけで、敷金がゼロという物件も出てきました。
横浜・湘南エリアについて調べてみたところ、単身者向けの賃貸物件では、敷金ゼロの物件が半数近くありました。
ただし、ファミリー向けの賃貸物件は相変わらず敷金2か月の物件が多いです。
住んでいる間に大家さんが変わった場合の敷金
賃貸借契約の期間には、大家さん(貸主)がアパートを売却たり、競売手続きによって、大家さんが別の人に変わることがよくあります。
大家さんが変わった場合に、預けた敷金はどうなってしまうのか不安になる借主さんもいます。
大家さんが別の人に途中で変わったとしても、前の大家さんに渡した敷金は次の大家さんにも引き継がれます。
また、前の大家さんとの間に結んだ契約も当然に引き継がれます。
大家さんが変わったからといって新しく敷金を支払わなければいけないかというとそうではなく、前の大家さんに支払った敷金がそのまま有効に引き継がれるということです。
なので、退去する際は、新しい大家さんから支払っていた敷金が返還されることになります。
むしろ中古でアパートを購入する人の方がどんな契約をしてるのか注意が必要です。
大家さんが変わったからといって賃貸借契約の効力が失われるわけではなにので、借主はそのまま住み続けることができます。
ただし、引き継がれるためには借主が引き渡しを受けて使用していることが必要になります。
引き渡しを受けて使用してるのであれば、大家さんが変わったからといって特別な契約は不要です。
礼金について
礼金は、敷金と違って契約が終了しても返ってきません。
礼金の始まりは、戦後の住居不足の際に借主から貸主にお礼として支払うことから始まったといわれています。
今のように十分に住居がある場合には馴染まない気もしますが、今でも慣習として続いています。
といっても最近は礼金ゼロの物件も増えました。
特にその傾向は単身者向けの賃貸物件で顕著で、少なくとも横浜・湘南エリアでは単身者向けの賃貸物件の半数は礼金が0です。
これがファミリー向けの賃貸物件では、礼金を1か月とるものが多いようです。
昔と違って礼金で儲けることができなくなったので、過大な清掃代や会員費といった別の名目で金銭を取る会社もあります。といっても限度がありますが。
共益費と管理費
共益費と管理費は、同じような意味合いで使われています。
共益費と管理費は、アパートやマンションの共同使用する設備の維持のために使われる費用です。
具体的には建物の電灯や清掃の人件費、共同の水道費用、町内会費(本当は強制できない)などに使われます。
つまり、みんなで利用する部分の維持費のことをいいます。
賃貸の管理費は、物件によってゼロだったり、高めに設定されていたりと、いまいち分かりにくいと感じていいる人も多いようです。
分かりやすくするために最初から家賃に含めているケースもあります。
広告だと家賃ばかりに目がいきがちなので、家賃を減らしてそのまま共益費を上げるなんてケースもあります。
先月まで家賃10万円だった物件が、今月は家賃8万円になっているのを発見し、驚いてよく見たら管理費が2万円増えただけという例も実際ありました。
分譲マンションであれば、法律でエレベーターの維持費や清掃、毎月の費用に使用することが決められてます(管理費と修繕積立金はちゃんと区別される)。
分譲マンションは、設備が充実しているので管理費も割高に感じるかもしれないので、分譲マンションの賃貸募集では管理費を賃料に含めて募集する大家さんもいます。
ちなみに貸主が負担する管理費を借主がそのまま負担しても、マンションの総会で発言できるわけではありません(過去に問題になった)。
ちなみに共益費がゼロだったとしても、貸主には修繕義務があるので電灯がつかない場合は、催促すれば直してくれます。
ちなみに部屋の電球とか電池は特約で借主の負担とすることが普通なので、そういった契約なら自分で直して問題ありません。
こんな感じで、みんなで使う部分のための費用が共益費、管理費になります。
申込金と手付金
不動産会社に支払うお金に、申込金と手付金というものがあります。
この2つは似ているので混同して使っている人がいますが、この2つは意味が全く違います。
申込金とは
申込金というのは、不動産の購入や賃貸での申込の時に預ける金銭です。
申込金の目的は、申し込みの意思表示のためです。
売買だと新築マンションの申込の際に、賃貸だと都内の業者で申込んだ際に必要になることが多いようです。
申し込みの際の意思表示に必要となるだけなので、契約が成立しなければ返金されます。
悪質な業者の中には返金しないのもいるようなので、お気を付けください。
手付金とは
手付金は、契約が成立した際に支払うお金です。
売買では契約を解約する時のために必要ですが、賃貸で手付金を必要とすることは普通はないです。
手付金には解約手付と証約手付と違約手付の3つがありますが、不動産の契約では解約手付になります。売買の契約をしても手付金を放棄することで契約を解除できます。手付金は後に代金の一部に充当されることが多いです。
このように似たように使われる申込金と手付金ですが、その性質は全く違うということです。
自分が支払うものが何なのかを理解していおくことは重要なので、不明だったら納得するまで質問した方がいいです。
賃貸契約でかかるその他の費用
その他、賃貸では鍵交換費用、火災保険がほとんどの場合にかかります。
鍵交換費用は、ディンプルキーや複数ドアロックの場合は高めになります。
賃貸借契約の火災保険は、2年で15,000円~20,000円程度といったところです。法人の事務所などには安い火災保険もあります。
最近では、保証会社への加入を必須としている管理会社が多くなっています。
昔は、トラブルに備えて契約時に連帯保証人を求められるのが一般的でしたが、最近は敷金がゼロの物件の普及と連帯保証人とのやり取りの煩雑さから、連帯保証人を取らずに保証会社を利用するケースが多くなっています。
その後、個人根保証契約について法律の改正があったので、保証会社が当たり前になりつつあります。そのうえで連帯保証人が求められることも増えました(複数の連帯保証人)。
まとめ
・敷金は将来のトラブルに備えて貸主に預けるお金をいう。
・礼金は大家さんへのお礼。
・最近の単身向け賃貸住宅では、敷金と礼金がゼロの物件が増えている。
・共益費・管理費はみんなで使う部分の維持費用の性質を持つ。
・申込金は申し込みの時に支払い、手付金は契約のときに支払う。賃貸で求められるのは申込金。
・初期費用として、鍵の交換費用、火災保険料、保証会社利用料が多くの場合にかかる。
・法律の改正で個人の保証で極度額の定めが必要になった。