「夢中でがんばる君へエールを~」の歌で有名なレオパレスが話題です。
2月上旬、不動産賃貸アパートを手掛けるレオパレス21の深山社長が会見で謝罪しました。
レオパレスが建築したアパートにおいて、防火壁の役割をもつ界壁が設置されていないという不正建築が明らかとなったためです。
レオパレス21がつくった不正建築となるアパートは3,000棟を超すといわれ、これにより1万人を超す人が影響を受ける見込みです。
レオパレスの物件は、問題が発覚する前から遮音性に不満を持つ入居者が多く、インターネットへの書き込みも盛んに行われてました。
さらに、今回のレオパレス問題でもサブリース契約が問題視されています。
レオパレスの防音問題は昔から指摘されていた
レオパレス21の防音面の酷さは、以前から指摘されており、建築・不動産業界の人間以外の一般の人にも知られていました。
レオパレスのアパートについて、今までに聞いたことがあるのは、「壁に画びょうを刺したら、隣人に刺さった」「おならをすると隣室にも響き渡る」「チャイムを押すと同じフロアに住む住人全員がドアを開けて出てきた」などです。
今までは面白い冗談だと思ってましたが、今回の騒ぎを見てると本当のような気にもなります。
木造アパートの防音性については、マンションに比べると酷いといわれます。
小さな不動産会社に勤めていた10年以上前のことです。
20代のカップルが同棲するための部屋を紹介してくれと来店したので、アパートにご案内しました。
そのアパートは1階部分の隣接する2部屋を募集していたのですが、現地に到着するとカップルは念のため2部屋とも見たいというので、2部屋ともカギを開けて部屋の中を見てもらいました。
すると、彼氏と彼女が別々の部屋に行き、彼女が壁をトントンと叩いて「聞こえますか」と隣の部屋にいる彼氏に語りかけ、それに対して彼氏が「聞こえまーす」といったやり取りを始めました。
私は「変なカップル」と思いながらやり取りを見ていましたが、確かに隣からの音がとても響いてました。おかげで賃貸アパートの壁の薄さというか防音の劣悪さがよく分かりました。
そのアパートがレオパレスが建築したものだったのですが、実はレオパレスに限らず、分譲マンションと違って賃貸アパートの壁は遮音性に問題があります。
当時から防音面で問題視されていたレオパレスで建築する人は、よほどの素人か、老後不安に反応しやすい人だったのではとニュースで指摘されています。
前社長が違法建築を指示か
レオパレス21を大手不動産会社に育て上げたのは深山祐助前社長でしたが、現在は別会社を経営しているそうです。
界壁問題が明らかになったアパートは、前社長の時代に建築されたとされ、外部調査委員会の報告によれば、一連の違法建築は前社長の指示によるものとの報告がされました。
外部調査委員会の報告を受けて、レオパレスが急遽開いた会見では、レオパレス役員が施工業者の「勝手な判断で界壁をつけなかった」と発表しましたが、施工業者に取材した別の番組では「図面に界壁が書いてなかった」「界壁は無くてもいいと指示された」と施工業者は発言しており、罪のなすりつけが起きています。
2019年3月26日に放映された「ガイアの夜明け」では、このレオパレス問題が取り上げられてました。
番組では、レオパレスに実際に建築を依頼したオーナーを取り上げてました。
界壁が未施工だった問題をオーナーが知り、レオパレスに調査の依頼を行うと、レオパレスは「商品は国道交通省が認定するものであり、界壁が必要ない商品であるため調査は行わない」との返事でした。
オーナーがこの件について国道交通省に尋ねたところ、「遮音性と界壁の設置は無関係で、必要な界壁が不要となることはない」といった回答でした。
すると、今度はオーナーのアパートを設計した建築士が「知識不足で誤った説明をした」と回答しました。このことについて別の建築士に尋ねたところ「そんなことはあり得ない」ということでした。
この話を聞いて思ったのは、レオパレスが責任を建築士になすりつけたのだろうということです。
「アパートの設計から建築だけでなく、その後のアパート運営も当社が行いますから安心です。」といった甘言を用いて売上を伸ばし続けたようです。
こんな言葉の裏には、手抜き工事によって莫大な利益を得ることしか考えておらず、空室が出れば家賃の減額を強制し、それが嫌なら家賃保証の契約を解除するという悪質なものが隠されてました。
オーナーもどうすればいいのか分からない状態のようで、とりあえず今後のレオパレスの対応を静観するとのことでした。
サブリース契約
サブリース契約というのは、地主が貸主、建築業者が借主となる「アパートの一括借り上げ」をいいます。
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サブリース業者が言うには、「煩わしいアパート経営が業者に丸投げできるのがメリット」とのことです。
サブリース契約では、毎月の賃料を業者が管理してくれ、家賃の滞納などの債務不履行についても業者が行ってくれます。
また、アパートを一括で業者が借りてくれるので、空室があっても満室の家賃を保証してくれます。
しかし、実際に受け取れる賃料は本来の家賃の8割~9割です。
また、一般的には数か月の賃料支払いがない賃料免責期間(賃料を地主に渡さなくてよい期間)が設けられています。
サブリース契約が得をするのは不動産・建築業者
他にもサブリース契約には問題があります。
サブリース契約は、地主が貸主となって、レオパレスが借主となる契約ですが、この際に借地借家法という不動産賃貸借における特別法が適用されます。つまり、レオパレスが強く保護されることになります。
借地借家法は、借主の立場が弱い賃貸借において、借主が住居を失うこと防ぐためにできた法律ですが、借地借家法では貸主からの契約解除はほとんど認められていません。
貸主からの契約解除には、正当事由が認められることが必要ですが、貸主の正当事由が認められるためには、貸主が他に住む場所がないといったよほどの理由が必要です。
反対に借主からの契約解除は、それほど困難はありません。
家賃保証のサブリース契約でも、借主には家賃減額請求が認められており、借主の建築業者から貸主に対する減額請求によって家賃収入がどんどん減額されていくといったケースがたびたび起こっています。
新築アパートをレオパレスで建てると、数年のうちにたびたび家賃の減額をされたので、レオパレスの営業に怒ったところ、「家賃減額に応じなければサブリース契約を解除する」といった一方的な通知を受けた地主もいます。
空室がいくつかある状態だったので、サブリース契約を解除されることを恐れた地主は、家賃減額を受け入れるほかなかったそうです。
サブリース契約はトラブル続出?
サブリース契約でトラブルが続出しているのを受けて、国土交通省では消費者庁と連携して注意喚起を促しています。
建物所有者からアパートなどの賃貸住宅を一括して借り上げ、入居者に転貸する、いわゆるサブリースでは、賃料減額をめぐるトラブルなどが発生しています。
サブリース契約をするオーナーは、サブリースに関するリスクについて、自ら十分理解することが重要です。
また、サブリース住宅の入居者は、オーナーとサブリース業者の契約終了等による不利益を受ける場合があります。
このため、国土交通省では、消費者庁と連携し、サブリースに関するトラブルの防止に向けて、サブリース契約を検討されている方及びサブリース住宅に入居する方に対しての注意喚起のため、サブリース契約に関する主な注意点、消費者ホットラインに寄せられた相談事例及び賃貸住宅に関する相談窓口を公表しました。
国道交通省 サブリース契約に関するトラブルにご注意ください!~トラブルの防止に向けて消費者庁と連携~より
大量に修繕工事が必要になったレオパレス物件が職人を募集したところ、初めて建築現場に出るような職人も多く、日本語が通じない外国人が修繕工事に当たることも少なくないみたいです。
外国人作業員たちも、普段は土木現場ばかりで、建設作業はレオパレスの修繕作業現場で初めてやると、まさに右も左もわからない状態で連れてこられていたという。
混迷のレオパレス修繕現場 「日給7500円」で職人は不足より
素人に修繕工事をやらせるのは心配事を増やすようなものですね。
おわりに
2018年のスマートディズ、そして2019年のレオパレスとアパート建築会社の不正建築が続いていますが、どうも氷山の一角のようで、次はどこの会社がやり玉にあげられるかが噂されています。
とりあえずいえることは、サブリース契約は思っている以上にリスクが多いですよということです。
サブリース契約の実態は転貸であり、借地借家法によって業者が保護されます。
借地借家法を悪用して建築会社が儲ける方法はないか考えに考えた末に、誕生したのがサブリース契約とすら思えます。
これから不動産経営をやるのであれば、建築業者と管理業者は分けたうえで、賃料相場を自分で調べたり、投資の本を読んで自分で学ぶくらいの心がけが必要です。
不動産経営をしていれば、空室の問題やリフォームの問題、家賃収入の減額の問題は必ずや関わることになるので、不動産会社と一緒に取り組むくらいの心意気が大事です。