言うまでもなく、不動産は利用することに価値があります。
同じエリアでも建物が建てられない土地は比較にならないほど安いです。
特に戸建てを考えている人は、宅地が道路に接してるかどうかが欠陥ある宅地なのかに影響します。
戸建てのメリット
一戸建てはマンションと比べてランニングコストが安い
駐車場代がかからない
マンションよりも騒音トラブルが少ない
建物が老朽化しても土地が残る
こういった理由から一戸建ての購入を考えている人は多いです。
しかし、一戸建てはマンションにはない一戸建て特有の問題もあります。
マンションでは道路について考える必要は少ないですが、一戸建てでは道路との関係は重要です。
道路との接道が資産価値に影響することもあるので、これから一戸建ての購入を考えている人には必須の知識かもしれません。
マイホームと接道義務について
マイホームを建てるためには、4m以上の道路に2m以上接道していなければならないと建築基準法に規定されています。
この4m以上の道路に2m以上接道していなければならない義務を接道義務といいます。
世の中の土地には、様々な理由で義務を満たしていないものもありますが、原則としては接道義務は満たさなければなりません。
接道している道路があまりに狭ければ、消防車が入ってこれません。
こういった理由から接道義務が定められたといわれています。
また、この場合の道路とは建築基準法上でいう道路のことを指します。
一見すると道路にみえても、実際は建築基準法上の道路ではないということはあります。
建築基準法上の道路に接道していないと接道義務を果たしたことにならないので、土地はあっても建物を建てることができないといったことがあり得ます。
接道義務のポイント
・敷地が2m以上道路に接道していること
・敷地が接道している道路が建築基準法の道路であること
道路に見えるけど、道路ではない例
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建築基準法の道路と43条2項1号・2号(ただし書き)
不動産が分かりにくいと言われる理由の一つに道路に関することがあります。 道路について知ってる人でも、多くの人は公道と私道があるというくらいではないでしょうか。 道路は一目見ただけでは分かりにくく、最近 ...
行政庁が指定した場合は4mの道路は6mとなることもあります。雪国などでは除雪車が通ることがあるので、6mの幅が求められるというわけです。
また、現状では4mなくても中心から後退することで(セットバックといいます)道路とみなすこともあります。
建築基準法の42条には、道路とについて1項1号~5号まで記載があります。
42条1項1号道路は、道路法による道路
42条1項2号道路は、都市計画法、土地区画整理法等による開発道路
42条1項3号道路は、建築基準法が適用された時に既にあった道路(既存道路)
42条1項4号道路は、道路法、都市計画法、土地区画整理法等によって2年以内に事業が予定されている道路
42条1項5号道路は、築造しようとする者が土地を建築物の敷地として利用するため、行政庁から位置の指定を受けた位置指定道路
接道義務をはたしていないため、再建築ができない物件は周りの相場よりも安く出ることがあります。
不動産会社によっては、集客のためにこういった物件をあえて広告に載せる業者もあります。
幅が4mないときは、道路の中心線から2mセットバックさせる
42条の2項にはみなし道路について書かれており、この道路のことを2項道路やみなし道路と呼ばれますが意味は同じです。
建築基準法42条2項
この章の規定が適用されるに至つた際現に建築物が立ち並んでいる幅員四メートル未満の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定にかかわらず、同項の道路とみなし、その中心線からの水平距離二メートル(前項の規定により指定された区域内においては、三メートル(特定行政庁が周囲の状況により避難及び通行の安全上支障がないと認める場合は、二メートル)。以下この項及び次項において同じ。)の線をその道路の境界線とみなす。ただし、当該道がその中心線からの水平距離二メートル未満でがけ地、川、線路敷地その他これらに類するものに沿う場合においては、当該がけ地等の道の側の境界線及びその境界線から道の側に水平距離四メートルの線をその道路の境界線とみなす。
建築基準法は昭和25年に施行されましたが、4m以上の道路に2m以上接道しておくことを全ての道路に適用させると、中には狭い道路もたくさんあるため、建築基準を満たさない住宅だらけになってしまいます。
そこで、建築基準法が適用されたときに4m未満でも存在し、特定行政庁が指定した道路は建築基準法の道路とみなすことにしたわけです。
そして、次に建築する際に道路の中心から水平距離で2m後退しなければならないことになりますが、これをセットバックといいます。
もし、片側に川や崖があって、そちら側だと2mセットバックできない場合は、セットバックできる側から取ります。
例えば、3mの幅しかない道路は本来であれば0.5mずつセットバックさせますが、一方に川や崖があってセットバックが全くできない場合はセットバックできる側が1mセットバックさせることになります。
セットバックによって削られた土地の部分については、建物が建てられなくなります。
また、建ぺい率や容積率を計算する場合も、セットバック部分を計算に含めることはできません。
不動産の販売図面やチラシには、セットバック済みとか要セットバックといったかたちで分かるように記載されます。
敷地延長線は道路ではない
不動産屋さんに紹介されたチラシや販売図面を見ると、旗のような形をした土地があります。
土地の接道部分が2mちょっとで、通路のようなものが敷地と道路をつないでいる土地です。
このような敷地と道路をつないでいる土地を敷地延長といったりします。
オレンジ色で塗りつぶしたのが土地で、細長い部分が敷地延長です。敷地延長は道路ではなく、敷地なので自分の土地です。
これは、建築基準法により道路に2m以上接道しなければならないと規定されているためにこのような土地が生まれます。敷地延長がなかったら道路に接道しなくなってしまいますから。
旗のような形をした土地は、正方形の土地と比べて使いにくかったり、日当たりが悪いこともあります。
敷地延長部分は建物を建てることができないので、正方形の形をした整形地と比べて1㎡あたりの単価も安くなります。
ただし、敷地延長にカースペースが2台置けたり、奥なのでプライバシーが確保されたりと必ずしも悪いことばかりではありません。
資産価値が低いと言う人もいますが、売るときになって初めて問題になるのが資産価値であって、住んでいる間は資産価値はあまり関係ありません。
ただし書きから認定制度と許可制度へ
ただし書きと呼ばれるものは、道路ではなく土地になります。
建築基準法の道路に接道していない土地の中にも建物を建てることができるものもありますが、但し書きと呼ばれる土地もそうです。
だたし、この規定は改正により、建築基準法第43条第2項に基づく認定制度と許可制度になりました。
建築基準法第43条第2項
一 その敷地が幅員四メートル以上の道(道路に該当するものを除き、避難及び通行の安全上必要な国土交通省で定める基準に適合するものに限る。)に二メートル以上接する建築物のうち、利用者が少数であるものとしてその用途及び規模に関し国土交通省令で定める基準に適合するもので、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるもの
二その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの
一が認定制度で、二が許可制度になります。
おわりに
道路とはいってもいろいろなものがあるので、不動産探しをする時の担当者さんも重要になります。
何で安いのかを聞いたときに言葉を濁したり、本当のことをいってくれない営業もいます。
一応、不動産取引では重要事項説明や宅地建物取引業法がありますが、きっちりと説明されないと聞き流してしまうことも多いです。
ファイナンシャルプランナー(FP)や税理士は不動産についてもアドバイスしてくれますが、欠陥的な宅地にどういったものがあるかまでほとんどの人は知りません。欠陥ある宅地が一般的でないのでこれは無理もないことといえます。
不動産会社なら接道義務を満たしてなかったり、再建築不可の物件について当然知ってますが、適当に流す営業もいます。
一等地の土地が高いように、安い物件は安いなりの理由があると思った方がいいかもしれません。