「夢中でがんばる君へエールを~」の歌で有名なレオパレスが話題です。
2月上旬、不動産賃貸アパートを手掛けるレオパレス21の深山社長が会見で謝罪しました。
レオパレスが建築したアパートにおいて、防火壁の役割をもつ界壁が設置されていないという不正建築が明らかとなったためです。
レオパレス21がつくった不正建築となるアパートは3,000棟を超すといわれ、これにより1万人を超す人が影響を受ける見込みです。
レオパレスの物件は、問題が発覚する前から遮音性に不満を持つ入居者が多く、インターネットへの書き込みも盛んに行われてました。
この問題をきっかけに、あらためて注目されたのが「サブリース契約」の仕組みそのものです。
今回は、レオパレスの件を入り口に、サブリース契約がなぜトラブルになりやすいのか、そして現在はどのような法律でオーナーが守られているのかを整理します。
この記事から分かること
- サブリース契約(アパート一括借り上げ)の基本的な仕組み
- なぜサブリース契約では家賃減額請求などオーナー側が不利になりやすいのか(借地借家法との関係)
- レオパレス21の界壁施工不備問題で何が起きたか
- 2020年施行「サブリース新法」でオーナーはどう守られるようになったか
- サブリース契約と管理受託方式の違い
レオパレスの防音問題は昔から指摘されていた
レオパレス21の防音面の酷さは、以前から指摘されており、建築・不動産業界の人間以外の一般の人にも知られていました。
レオパレスのアパートについて、今までに聞いたことがあるのは、「壁に画びょうを刺したら、隣人に刺さった」「おならをすると隣室にも響き渡る」「チャイムを押すと同じフロアに住む住人全員がドアを開けて出てきた」などです。
今までは面白い冗談だと思ってましたが、今回の一連の報道を見ると、あながち大げさでもなかったのかもしれません。
木造アパートの防音性については、マンションに比べると酷いといわれます。
小さな不動産会社に勤めていた10年以上前のことです。
20代のカップルが同棲するための部屋を紹介してくれと来店したので、アパートにご案内しました。
そのアパートは1階部分の隣接する2部屋を募集していたのですが、現地に到着するとカップルは念のため2部屋とも見たいというので、2部屋ともカギを開けて部屋の中を見てもらいました。
すると、彼氏と彼女が別々の部屋に行き、彼女が壁をトントンと叩いて「聞こえますか」と隣の部屋にいる彼氏に語りかけ、それに対して彼氏が「聞こえまーす」といったやり取りを始めました。
私は「変なカップル」と思いながらやり取りを見ていましたが、確かに隣からの音がとても響いてました。おかげで賃貸アパートの壁の薄さというか防音の劣悪さがよく分かりました。
そのアパートはレオパレスが建築したものだったのですが、実はレオパレスに限らず、分譲マンションと違って賃貸アパートの壁は遮音性に問題があります。
当時から防音面で問題視されていたレオパレスで建築する人は、よほどの素人か、老後不安に反応しやすい人だったのではとニュースで指摘されています。
界壁施工不備問題の経緯

レオパレス21を大手不動産会社に育て上げたのは深山祐助前社長でしたが、現在は別会社を経営しているそうです。
界壁問題が明らかになったアパートは、前社長の時代に建築されたとされ、外部調査委員会の報告によれば、一連の違法建築は前社長の指示によるものとの報告がされました。
外部調査委員会の報告を受けて、レオパレスが急遽開いた会見では、レオパレス役員が施工業者の「勝手な判断で界壁をつけなかった」と発表しましたが、施工業者に取材した別の番組では「図面に界壁が書いてなかった」「界壁は無くてもいいと指示された」と施工業者は発言しており、罪のなすりつけが起きています。
2019年3月26日に放映された「ガイアの夜明け」では、このレオパレス問題が取り上げられてました。
番組では、レオパレスに実際に建築を依頼したオーナーを取り上げてました。
界壁が未施工だった問題をオーナーが知り、レオパレスに調査の依頼を行うと、レオパレスは「商品は国道交通省が認定するものであり、界壁が必要ない商品であるため調査は行わない」との返事でした。
オーナーがこの件について国道交通省に尋ねたところ、「遮音性と界壁の設置は無関係で、必要な界壁が不要となることはない」といった回答でした。
すると、今度はオーナーのアパートを設計した建築士が「知識不足で誤った説明をした」と回答しました。このことについて別の建築士に尋ねたところ「そんなことはあり得ない」ということでした。
「アパートの設計から建築だけでなく、その後のアパート運営も当社が行いますから安心です。」といった甘言を用いて売上を伸ばし続けたとも報じられています。
空室が出れば家賃の減額を強制し、それが嫌なら家賃保証の契約を解除するという悪質なものが隠されていましたが、サブリース事業を急拡大させる過程で品質管理が追いつかなかった典型例として捉えることもできます。
オーナーもどうすればいいのか分からない状態のようで、とりあえず今後のレオパレスの対応を静観するとのことでした。
サブリース契約とは何か
サブリース契約というのは、地主が貸主、建築業者が借主となる「アパートの一括借り上げ」をいいます。
サブリース業者が言うところによれば、「煩わしいアパート経営が業者に丸投げできるのがメリット」ということです。
サブリース契約では、毎月の賃料を業者が管理してくれ、家賃の滞納などの債務不履行についても業者が行ってくれます。
また、アパートを一括で業者が借りてくれるので、空室があっても満室の家賃を保証してくれます。
しかし、実際に受け取れる賃料は本来の家賃の8割~9割です。
また、一般的には数か月の賃料支払いがない賃料免責期間(賃料を地主に渡さなくてよい期間)が設けられています。
サブリース契約はオーナーが不利になりやすい

他にもサブリース契約には問題があります。
サブリース契約は、地主が貸主となって、レオパレスが借主となる契約ですが、この際に借地借家法という不動産賃貸借における特別法が適用されます。つまり、借主のレオパレスが強く保護されることになります。
借地借家法は、借主の立場が弱い賃貸借において、借主が住居を失うこと防ぐためにできた法律ですが、借地借家法では貸主からの契約解除はほとんど認められていません。
貸主からの契約解除には、正当事由が認められることが必要ですが、貸主の正当事由が認められるためには、貸主が他に住む場所がないといったよほどの理由が必要です。
反対に借主からの契約解除は、それほど困難はありません。
家賃保証のサブリース契約でも、借主には家賃減額請求が認められており、借主の建築業者から貸主に対する減額請求によって家賃収入がどんどん減額されていくといったケースがたびたび起こっています。
新築アパートをレオパレスで建てると、数年のうちにたびたび家賃の減額をされたので、レオパレスの営業に怒ったところ、「家賃減額に応じなければサブリース契約を解除する」といった一方的な通知を受けた地主もいます。
空室がいくつかある状態だったので、サブリース契約を解除されることを恐れた地主は、家賃減額に応じざるを得ない……、そんなケースが従来から報告されてきました。
サブリース契約はトラブル続出?
サブリース契約でトラブルが続出しているのを受けて、国土交通省では消費者庁と連携して注意喚起を促しています。
建物所有者からアパートなどの賃貸住宅を一括して借り上げ、入居者に転貸する、いわゆるサブリースでは、賃料減額をめぐるトラブルなどが発生しています。
サブリース契約をするオーナーは、サブリースに関するリスクについて、自ら十分理解することが重要です。
また、サブリース住宅の入居者は、オーナーとサブリース業者の契約終了等による不利益を受ける場合があります。
このため、国土交通省では、消費者庁と連携し、サブリースに関するトラブルの防止に向けて、サブリース契約を検討されている方及びサブリース住宅に入居する方に対しての注意喚起のため、サブリース契約に関する主な注意点、消費者ホットラインに寄せられた相談事例及び賃貸住宅に関する相談窓口を公表しました。
大量に修繕工事が必要になったレオパレス物件が職人を募集したところ、初めて建築現場に出るような職人も多く、日本語が通じない外国人が修繕工事に当たることも少なくないみたいです。
外国人作業員たちも、普段は土木現場ばかりで、建設作業はレオパレスの修繕作業現場で初めてやると、まさに右も左もわからない状態で連れてこられていたという。
混迷のレオパレス修繕現場 「日給7500円」で職人は不足より
素人に修繕工事をやらせるのは心配事を増やすようなものですね。
2020年施行「サブリース新法」による保護

こうしたトラブルを受けて、2020年6月に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(通称:サブリース新法)が公布され、同年12月15日に施行されました。ポイントは大きく3つです。
① 誇大広告の禁止
サブリース事業のメリットのみを強調し、家賃減額のリスクなど不利な情報を伝えない広告(チラシ・テレビCM・ホームページ・SNSを含む)が禁止されました。
② 不当な勧誘の禁止
契約締結の判断に影響する重要事項を故意に告げない行為や、強引な勧誘によって契約を急がせる行為が禁止されました。
③ 契約前の重要事項説明の義務化
契約締結前に、賃貸住宅管理業に関する専門知識を持つ者が重要事項説明を行うことが求められるようになりました。国土交通省のガイドラインでは、説明から契約までに1週間程度の期間を置くことも推奨されています。
レオパレスの問題が広く報道された時期と、このサブリース新法の議論が進んだ時期は重なっており、一連の施工不備問題や家賃減額トラブルが、法整備を後押しした側面もあります。
サブリース契約と管理受託方式の違い
| 比較項目 | サブリース契約(一括借り上げ) | 管理受託方式 |
| 契約の当事者 | オーナー↔サブリース業者(賃貸借契約) | オーナー↔管理会社(業務委託契約) |
| 家賃の受け取り | 業者が転貸し、オーナーは保証賃料を受領 | 入居者からの家賃がそのままオーナーに入る(管理手数料を差引) |
| 空室リスク | 業者が負担(ただし減額請求のリスクあり) | オーナーが負担 |
| 借地借家法の適用 | 適用される(業者側が保護されやすい) | 適用されない |
| 家賃変更の主導権 | 業者側にあることが多い | オーナー側にある |
| サブリース新法の対象 | 対象(重要事項説明・誇大広告規制の対象) | 対象外 |
どちらが良いかは一概には言えず、空室リスクを取ってでも管理の手間を減らしたいか、家賃変更の主導権を自分で持ちたいかによって選択が分かれます。
まとめ
- サブリース契約は「家賃保証」が魅力に見えるが、借地借家法上は業者側が保護されやすい構造になっている
- レオパレス21の界壁施工不備問題は、サブリース事業の急拡大が品質管理に影響した一例といえる
- 2020年施行のサブリース新法により、誇大広告の禁止・重要事項説明の義務化などオーナー保護の仕組みが整備された
- 契約前には、家賃減額条項・免責期間・解約条件を必ず確認することが重要
2018年のスマートディズ、そして2019年のレオパレスとアパート建築会社の不正建築が続いていますが、どうも氷山の一角のようで、次はどこの会社がやり玉にあげられるかが噂されています。
これから土地活用やアパート経営を検討する場合は、建築業者と管理業者を分けて選ぶことも含め、複数の選択肢を比較したうえで判断することをおすすめします。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の契約内容や物件の状況によって適切な判断は異なります。実際の契約締結にあたっては、契約書の内容を十分にご確認のうえ、専門家にもご相談ください。本記事の内容は執筆時点の情報に基づいており、法令等の内容は変更される場合があります。

